私たちの人生は、
人との関わりの中で
形づくられていきます。
人間関係が満たされていると、
日々の暮らしはより心地よく、
充実したものになります。
反対に、
関係がうまくいかないと
悩みが増え、
心が疲れてしまうでしょう。
これから2回にわたって、
人間関係を通して
幸せや豊かさを得るために、
心に留めておきたい10の心得を
ご紹介します。
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「どうしてあの人は
いつもこうなんだろう!」
と嘆いたことはありませんか?
とくに家族や親しい友人のように
距離が近いほど、
相手に期待を抱きやすく、
「こうしてくれたらいいのに」
と思うこともあるでしょう。
思い通りに変わってほしいと願い、
無理に相手を変えようとすることさえ
あるかもしれません。
けれども、そこに
関係がぎくしゃくする原因が
潜んでいるのです。
なぜなら、
相手を変えようとする気持ちは、
無意識のうちに
「今のあなたでは足りない」
と伝えてしまうからです。
たとえば、
夫婦の間でよく見られる
すれ違いがあります。
妻は
「もっと私の話を聞いてほしい」と願い、
夫は
「そんなに言わなくてもいい」
と感じる。
お互いが相手を
自分の望む形に変えようとすることで、
心が離れてしまうのです。
長く穏やかな関係を築ける人は、
「この人はこういう人なんだ」と
相手の個性を
そのまま受け入れられる人です。
短所に見える部分も、
視点を変えれば
魅力や強みに変わることもあります。
たとえば、
細かいことを気にするのは、
実は丁寧で誠実な性格の
表れかもしれません。
口数が少ないのは、
慎重で思慮深いからかもしれません。
相手の欠点ばかりを探すのではなく、
その奥にある
良さを見つけようとする姿勢が、
相手の心を開き、
関係をあたたかくするのです。
そして不思議なことに、
相手を「変えよう」
とする気持ちを手放したとき、
こちらの接し方がやわらかくなり、
その変化を受けて
相手も自然とよい方向へ
動きはじめることもあるのです。
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人の心を癒す
いちばん効果的な方法は、
相手の話に
心を込めて耳を傾けることです。
誰かに「わかってもらえた」
と感じるだけで、
人は抱えていた重荷の半分を
下ろせるものだからです。
しかし私たちは、気づかないうちに
相手の話を自分の話へと
すり替えてしまうことがあります。
たとえば、友人が
体調の不安を話しているときに、
「わかる、私もこの前すごくつらくてね」
と自分の経験を語り始めてしまうのです。
悪気はなくても、これでは
相手の気持ちは満たされません。
本当に「聴ける人」は、
相手の言葉を途中でさえぎらず、
最後まで静かに受け止めます。
意見やアドバイスを
急いで伝えようとせず、
その言葉の奥にある思いを
感じ取ろうとするのです。
「それは大変だったね」
「うん、そうだったんだね」
そんな短いやりとりが、
相手の気持ちをゆるめ、
心を安心させます。
もし今、誰かとの関係が
ぎくしゃくしていると感じているなら、
次のことを意識してみてください。
「話す側ではなく、
徹底的に聴く側にまわってみる」
という姿勢です。
自分の考えを伝えるよりも、
まず相手の思いを
ていねいに聴くことを大切にする。
その心構えだけで、関係は
驚くほど穏やかで温かいものへと
変わっていくでしょう。
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人との関係は、
近すぎても遠すぎても、
うまくいかないものです。
親しくなったうれしさから、
つい何でも話してしまうことが
あります。
最初は楽しくても、やがて
相手が負担に感じてしまうことも
あるでしょう。
反対に、「嫌われたくない」
という思いから遠慮ばかりしていると、
今度は距離が開きすぎて
「冷たい人」と
誤解されてしまうことがあります。
長く穏やかな関係を育てられる人は、
この「ほどよい距離感」を
自然に保てる人です。
相手の表情や声の調子から、
寄り添うべきときと
静かに見守るべきときを
感じ取ることができるのです。
友人が落ち込んでいるとき、
無理に励ましたり
理由を聞き出したりせず、
ただそばに座り、
温かいお茶を淹れてあげるだけで、
「この人はわかってくれている」
と感じてもらえることがあります。
人間関係は、庭の花を育てるのに
少し似ています。
水を与えすぎれば根が弱り、
何もしなければ枯れてしまう。
その花にとって
心地よい加減を見極めること――
人との関係を育てるときにも、
この知恵が役に立つでしょう。
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「この人と関わって、
自分に何か得があるだろうか?」
と考えはじめると、
人間関係は続きにくくなります。
損得という
不安定な土台の上に築かれた関係は、
状況が少し変わるだけで、
簡単に崩れてしまうからです。
利益があるうちは
笑顔で接していても、
それがなくなった途端に
距離を置いてしまうような関係では、
本当の信頼は育たないでしょう。
長く穏やかな関係を築ける人は、
「心の通い合い」を
何より大切にしています。
「この人と一緒にいると安心する」
「この人の笑顔を見ると自分も嬉しい」――
そんな温かい気持ちを基準に、
人と付き合っているのです。
昔から「情けは人のためならず」
と言われますが、それは、
人に向けた優しさが
巡り巡って自分の心を豊かにする
という意味です。
見返りを求めずに
差し出した思いやりは、
やがて形を変えて
自分に戻ってくるものです。
人付き合いの基準を
「得か損か」ではなく、
「心が温かくなるかどうか」
に置いてみてください。
そうして育まれた関係は、
時間とともに深まり、
あなたの人生を
より楽しく、豊かなものに
してくれるでしょう。
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良好な人間関係は、
信頼という
土台の上に築かれています。
そしてその信頼は、
一度に形づくられるものではなく、
日々の小さな約束を守ることで
少しずつ育っていくものです。
「また連絡するね」
「お土産を持っていくね」
「今週中に確認しておきます」――
そんな何気ないひとことを
きちんと実行できる人こそ、
本当の意味で信頼される人です。
反対に、「まあいいか、
相手も忘れているだろう」と
小さな約束を軽く扱ってしまうと、
その積み重ねが静かに、しかし
確実に心の距離を
広げてしまうでしょう。
信頼を築くには
時間が必要ですが、
失うのは一瞬です。
子どもとの約束を
思い出してみてください。
「今度の休みに遊園地へ行こうね」
と伝えておきながら、
疲れているからと
キャンセルすることがあります。
子どもは「いいよ」
と笑ってくれるかもしれませんが、
その胸の奥には小さな痛みが残るのです。
その記憶は、大人になっても
ふとした瞬間に
思い出されることがあるでしょう。
どんなに小さな約束でも、
それを丁寧に守ることが、
関係を長く温かく育てていく
いちばん確かな方法です。
約束を守るという行為には、
「あなたを大切に思っています」
という気持ちが宿っているからです。
そして、その気持ちが
あたたかな関係を維持するためには
必要なのです。