日常の中で育てる「幸せ」 PERMA-Vモデルからのヒント

幸せになることは、
全人類の共通の願いでしょう。

しかし、実際に
幸せになるために
何をすればよいのか、
その方法がわからない
と感じる人も少なくありません。

この記事では、
ポジティブ心理学者
マーティン・セリグマンが提唱した
「幸せを構成する5つの要素」を紹介し、
私たちが日常生活の中で
どんな行動を取れるのかを
考えます。

====

幸せを構成するPERMA-Vモデルとは?

「幸せ」という言葉は
多くの人に使われていますが、
いざその本質について考えてみると、
どこかつかみどころがなく、
はっきりと定義するのは
意外とむずかしいものです。

そこで注目されているのが、
ポジティブ心理学の父とも呼ばれる
マーティン・セリグマンが提唱した
「PERMA」モデルです。

このモデルは、
真の幸せを構成する5つの要素を
明確に定義し、さらに近年では
「バイタリティ」を加えた
6つの要素で
幸福の本質を解き明かしています。

これらの要素を理解し、
できることを実践することで、
私たちは一時的な快楽ではなく、
持続的で深い幸福感を
築くことができるでしょう。

ここからは、
PERMA-Vモデルがどんなものか、
詳しくみていきましょう。

====

P:ポジティブ感情という名の宝石

PERMA-Vモデルの第1の要素Pは
「ポジティブ感情」です。

ポジティブ感情は、
私たちが日常的に体験している
身近な感情ですが、心理学者
バーバラ・フレドリクソンの研究によると、
実は10種類もの
豊かなバリエーションがある
とされています。

その中で最も包括的で
力強いとされるのが「愛」です。

愛は他のすべてのポジティブ感情を
内包する特別な感情で、たとえば、
家族との温かいひとときや、
パートナーとの深いつながり、
友人への思いやりなど、
さまざまな形で
私たちの心を満たしてくれます。

2番目のポジティブ感情「喜び」は、
心が満たされて
うれしいと感じるときの感情で、
誕生日のお祝いや
目標達成の瞬間に体験できます。

3番目の「感謝」は、
与えられたものの価値を
認識したときに湧き上がる感情です。

家族が作ってくれた食事、
同僚からの親切な行為、
自然の美しさなど、
日常の中に感謝の種は
無数に散らばっています。

4番目の「安らぎ」は、
今の心地よさを
ゆっくりと味わう感覚です。

静かなカフェでコーヒーを飲む時間や、
夕日を眺めるときに感じられます。

5番目の「興味」は、
新しい世界への扉を開く感情です。

未知のスキルを学ぶ機会や、
読んだことのない本、
行ったことのない場所への好奇心は、
私たちの心を若々しく保ちます。

6番目の「希望」は、
未来への可能性を信じる力で、
困難な状況でも
前を向く原動力となります。

7番目の「誇り」は、
自分の努力や能力によって
何かを成し遂げたときに得られる
満足感です。

8番目の「愉快」は、安全な環境で
心から面白いと感じる純粋な楽しさです。

9番目の「鼓舞」は、
他者の素晴らしさに触れて
心が奮い立つときの感情です。

そして10番目の「畏敬」は、
自分を超えた壮大な美や偉大さに
出会ったときの深い感動です。

これらの感情により、
私たちの心はより豊かになり、
困難に立ち向かう力も高まります。

ポジティブ感情を育むためには、
感謝日記を書いたり、
意識して美しいものに目を向けたり、
他者の良い面を探したりといった
小さな実践から始めるとよいでしょう

====

E:熱中が生み出すフロー体験

PERMA-Vモデルの第2の要素は
「熱中」です。

心理学の分野で
「フロー」と呼ばれる概念がありますが、
これは時間の感覚が薄れ、
自分と活動が完全に一体化し、
周囲の雑音や心配事が
気にならなくなる状態を指します。

フロー体験には、
少し不思議な特徴があります。

活動している最中は
特別な幸福感をあまり意識しませんが、
終わったあとで
「あれほど集中できて幸せだった」と振り返り、
じわじわと喜びが湧いてくるのです。

これは、フロー状態では
自己意識がほとんど消え、
行為そのものと
一体化しているためでしょう。

フローが生まれる条件は
いくつかあります。

特に大切なのは
「挑戦と技能のバランス」です。

課題が簡単すぎれば退屈になり、
難しすぎれば
不安や焦りが出てしまいます。

自分の能力より
少し上のレベルに挑戦することで、
最も没頭しやすくなるでしょう。

さらに、明確な目標があり、
結果がすぐにわかる活動
であることも重要です。

仕事でフローを体験するためには、
タスクを適度な大きさに分け、
集中できる環境を整えることが
効果的です。

スマートフォンの通知を切り、
一度に一つの作業に
取り組む時間を確保しましょう。

創作活動では、
完璧を求めすぎず、
まずは手を動かすことが大切です。

フローを感じられる活動は
人によってさまざまです。

スポーツ、楽器演奏、料理、読書、
ガーデニングなど、
どんなものでもかまいません。

自分が夢中になれる活動を見つけ、
定期的に時間を割くことが
ポイントです。

こうした体験を重ねることで、
人生の質は大きく高まり、
深い満足感が得られるでしょう。

====

R:心の絆が織りなす温もり

PERMA-Vモデルの第3の要素
「人間関係」は、
私たちの幸福感に計り知れないほど
大きな影響を与えるものです。

人間は
もともと社会的な生き物であり、
他者との深いつながりなしに
真の幸福を味わうことは
難しいといえます。

良好な人間関係が
幸福にもたらす効果は、
科学的にも証明されています。

長年にわたる研究では、
強い社会的つながりを持つ人は、
孤独な人に比べて
健康で長生きしやすいことが
明らかになっています。

人との関わりは、
ストレスを和らげ、免疫力を高め、
心を安定させる働きを
してくれるからです。

職場の人間関係も、
仕事への満足度に大きく関わります。

尊敬できる上司や
信頼できる同僚がいれば、
困難なプロジェクトにも前向きに向き合え、
仕事にも集中しやすくなり、
充実した時間を過ごせるでしょう。

支え合えるチーム環境では、
個人の力を超えた成果を
生み出すことも可能です。

友情は
人生に彩りと深みを添える
特別な関係です。

共通の興味や価値観を
分かち合える友人との語らいは、
自然と心をほぐし、
日常に穏やかな楽しさを
運んでくれます。

つらいときには支えとなり、
喜びの瞬間には
共に喜んでくれる存在です。

年齢を重ねるにつれ
友人の数は減るかもしれませんが、
質の高い友情はより貴重でしょう。

パートナーシップや結婚は、
最も深い人間関係の一つです。

互いを理解し、支え合い、
共に成長していく過程で
得られる幸福感は格別です。

ただし、良い関係を保つには
努力が欠かせません。

丁寧なコミュニケーションや
相互尊重、共通の目標を持つことが
大切です。

家族との絆も、私たちの
アイデンティティの基盤をつくる
重要な要素です。

血のつながりがあるからといって、
自然に良い関係に
なるわけではありません。

理解し合う時間を持ち、
お互いの成長を応援することで、
深い安心感と所属感が育まれるでしょう。

人間関係を豊かにするためには、
まず自分から関心を示すことが
第一歩です。

相手の話をよく聞き、感情に共感し、
感謝の気持ちを言葉にする。

そして、自分自身も心を開き、
弱さを見せることで、
より深いつながりが生まれるでしょう。

====

M:人生に光を灯す灯台―意義という名の道しるべ

PERMA-Vモデルの第4の要素「意義」は、
私たちの行動や存在に
深い目的と方向性を与えるものです。

意義を感じられる生活とは、
自分の価値観や信念に沿った行動を取り、
より大きな何かに貢献している
と実感できる状態です。

意義は、単なる目標達成や
物質的な豊かさを
超えたところにあります。

表面的な成功だけでは、
長続きする満足感は得られないでしょう。

真の意義とは、
自分の行動が家族やコミュニティ、社会、
さらには人類全体に対して
価値ある貢献となっている
と感じられるときに生まれるものです。

仕事で意義を見出すことは、
職業生活の質を大きく高めます。

同じ業務でも、
それが誰かの役に立っている、
社会課題の解決に寄与している
と意識できれば、困難な状況にも
前向きに取り組めるでしょう。

教師なら生徒の成長、
医師なら患者の回復、
エンジニアなら社会インフラの改善
といった具合に、
職業ごとに異なる形の意義があります。

意義を見つけるには、
まず自分自身を
深く理解することが欠かせません。

何に情熱を抱くのか、
どんな価値観を大切にしているのか、
どんな世界を実現したいのかを
じっくり考える必要があります。

これは一度きりではなく、
人生のさまざまな段階で
繰り返し行う内省のプロセスです。

社会貢献やボランティア活動も、
意義を感じる有力な手段です。

困っている人を助ける、
環境保護に取り組む、
文化や教育を支援するなど、
自分のスキルや時間を
誰かのために使うことで、
深い満足感とつながりを得られるでしょう。

意義は、人生の困難を
乗り越えるための強力な支えにもなります。

心理学者ヴィクトール・フランクルが
強制収容所での体験を通じて示したように、
どれほど過酷な状況でも、
そこに意味を見いだせれば、
人は希望を失わずに
生き続けることができるのです。

日常の中で意義を感じるためには、
小さな行動から始めましょう。

家族のために心を込めて料理を作る、
同僚の仕事を手伝う、
地域の清掃活動に参加するなど、
無理のない範囲で
他者への貢献を実践することで、
少しずつ人生の意義が深まっていきます。

====

A:達成感が築く自信の城

PERMA-Vモデルの第5の要素「達成感」は、
私たちの自信と成長を
力強く後押ししてくれるものです。

目標を定め、努力を重ね、
それをやり遂げたときに得られる
深い満足感は、
人生に前進感と充実感を
与えてくれるでしょう。

達成感の本質は、
結果だけにあるのではなく、
挑戦の過程にもあります。

自分の限界を少しずつ広げ、
新たな能力を発見し、
困難を乗り越える体験こそが、
真の価値を生むのです。

たとえ結果が
期待通りでなかったとしても、
真剣に取り組んだ過程から得た
学びと成長は、
次の挑戦の土台になるでしょう。

達成感を味わうには、
適切な目標設定が欠かせません。

目標は具体的で測定可能、
かつ現実的でありながらも
挑戦的であることが理想です。

簡単すぎれば物足りず、
難しすぎれば
挫折感につながりやすいです。

少し背伸びすれば届くレベルを
目指すことで、
達成感を最大限に味わえるでしょう。

大きな目標は、
小さなマイルストーンに分割することで
継続的な達成感が得やすいです。

たとえばマラソン完走を目指すなら、
まず5キロ、次に10キロ、
さらにハーフマラソンと
段階的に進めることで、
達成の喜びが次への意欲に
つながるでしょう。

仕事においても、達成感は
キャリア発展の原動力となります。

新しいスキルの習得、
難しいプロジェクトの完遂、
チームでの成果など、
一つひとつの経験が自信を育て、
次の挑戦への準備になるでしょう。

また、趣味や個人的な興味の分野での
達成感も人生を豊かにするものです。

楽器の演奏が上達したと感じたとき、
語学が少し話せるようになったとき、
スポーツで自己記録を更新したとき、
ひとつの作品を完成させたとき。
そうした場面で味わう達成感もまた、
人生をより豊かなものにしてくれます。

達成感は
一度きりで終わるものではありません。

一つの目標を達成すると、
自信と能力が高まり、
さらに高い目標へ挑戦したくなるものです。

この繰り返しが、私たちを成長の
螺旋階段へと導いてくれるのです。

何より大切なのは、他人ではなく
過去の自分と比べて
成長を測ることです。

人の成功を
励みにするのは良いことですが、
自分のペースで一歩ずつ
前進していくことが、
持続的な達成感の源泉となります。

====

V:バイタリティという健康の土台

PERMAモデルは、当初は
これまでご紹介してきた
5つの要素から成るものでしたが、
近年のポジティブ心理学の研究によって
「V:バイタリティ(活力)」の要素が加わり、
現在は6つの要素から成る
PERMA-Vモデルとして知られています。

バイタリティとは、
生命力やエネルギーに満ちた状態のことで、
心の幸福感を支える
身体的な基盤として欠かせないものです。

心と体は深く結びついており、
身体が健康でなければ
心から幸せを感じることは
難しいでしょう。

逆に、体調が良く
エネルギーが満ちていると、
人生のさまざまな側面を
より積極的に楽しむことができます。

バイタリティを維持するための基本は、
まず良質な睡眠です。

十分な睡眠時間を確保し、
規則正しいリズムで眠ることで、
体と心がしっかり回復します。

栄養バランスの取れた食事も
欠かせません。

新鮮な野菜や果物、
良質なタンパク質、
健康的な脂質をバランスよく摂ることで、
体の機能が最適化され、
エネルギーが持続します。

十分な水分補給も
忘れずに行いましょう。

適度な運動は、
身体の健康を守るだけでなく、
精神的な幸福感も高めるものです。

運動によって分泌されるエンドルフィンは
「幸福ホルモン」とも呼ばれ、
ストレスを軽減し
気分を高める効果があります。

激しい運動をしなくても大丈夫です。

毎日の散歩や軽いストレッチ、
階段の利用など身近な習慣でも
効果は認められています。

さらに、ストレス管理も大切です。

慢性的なストレスは
免疫システムを弱め、
心身に悪影響を及ぼすからです。

瞑想、深呼吸、ヨガ、
自然の中で過ごす時間など、
自分に合った方法で
心を整えましょう。

バイタリティの向上は
一朝一夕に
実現するものではありませんが、
小さな習慣を積み重ねることで
着実に活力ある生活が築けるでしょう。

身体的な健康がしっかりと整えば、
他の5つの幸福要素も
より深く味わえるようになるのです。

====

おわりに

この記事では、ポジティブ心理学者
マーティン・セリグマンが提唱した
PERMAモデルを紹介し、
さらに近年追加された「V:バイタリティ」
についても触れました。

PERMA-Vモデルの6つの要素は、
単独で働くものではありません。

互いに関わり合い、支え合いながら、
私たちの幸福という
複雑で美しい交響曲を奏でています。

たとえば、ポジティブ感情は、
他の要素を活性化させる
触媒の役割を果たします。

感謝や愛を感じると
人間関係が深まり、
意義を見いだしやすくなるものです。

熱中しているときは
時間を忘れて取り組めるため、
自然と達成感が得やすいです。

また、良好な人間関係は
挑戦に立ち向かう勇気を与え、
意義ある目標への取り組みを
後押ししてくれるでしょう。

意義を感じる活動に取り組めば
努力を続ける力が湧き、
達成感も増していきます。

達成感は自信を育て、
次の挑戦への意欲をかき立てます。

そして、
これらすべての基盤となるのが、
バイタリティに満ちた
健康な体と心なのです。

現代社会では、この6つの要素を
常に完璧なバランスで維持するのは
容易ではありません。

仕事や家庭の責任、
社会的なプレッシャーなど、
さまざまな制約がある中で
理想を追い求めることは大切ですが、
完璧を目指しすぎて
ストレスを抱えるのでは本末転倒です。

大切なのは、6つの要素を意識し、
日常の中で
少しずつ育てていくことです。

感謝の言葉を口にする、
集中できる時間と場所を確保する、
友人と会う機会を大切にする、
新しい挑戦を始める──
そうした小さな積み重ねが、
やがて大きな幸福感へと
つながっていくでしょう。

さらに、
人生のステージや状況によって、
重視すべき要素は
変わることも理解しておきましょう。

若いときは達成感や熱中が
中心になるかもしれませんが、
年齢を重ねると
人間関係や意義が
より大きな意味を持つように
なるかもしれません。

その時々の自分にとって
必要な要素に焦点を当て、
柔軟に調整していくことが大切です。

PERMA-Vモデルは、
私たちに幸福への道筋を示してくれる
貴重な羅針盤ともいえます。

6つの要素を意識的に育むことで、
一時的な喜びを超えた、
深く持続する幸福を
築くことができるでしょう。

今から一つだけでも、
自分にできる小さな行動を選び、
試してみてください。

その一歩が、あなたの人生を
より幸せにしてくれるでしょう。