今回は、親密な関係にある人と、
人間関係が破綻しないように
心がけるべき点について
考えてみたいと思います。
親密な関係ほど、
注意しないと、
人間関係が崩れてしまうことも
珍しくないからです。
その理由を解説し、
どのような点に
注意すればよいのかを
検討してみます。
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あなたは
こんな経験がありませんか?
誰かと徐々に親しくなり、
「この人は素晴らしい!」
と感じた結果、
もっと親密になりたい
と思うようになりました。
そのため、より深い絆を
築こうと努力しました。
しかし、
その関係が親密になると、
何らかのきっかけで、
逆に人間関係が悪化し、
最終的には関係が
断絶してしまったという
悔しい経験です。
実は、このような事態は
しばしば起きることです。
その根本原因は、
相手に過度に
接近しすぎたためです。
親しくなると
心理的な距離が縮まり、
相手に対する期待が
過度に高まることも
珍しくありません。
親友だからこそ、
「自分は相手に
こうしてほしい、
ああしてほしい」
と期待します。
期待に応えられることも
ありますが、
そうでない場合も
多いのが現実です。
相手から見れば、
その期待がプレッシャーとなり、
負担を感じることも
あるかもしれません。
期待に応えることが
相手にも利益がある場合は、
相手も積極的になるでしょう。
しかし、
期待に応えるために
無理をしたり、自己犠牲を
払わなければならない場合、
それが相手にとって
迷惑になることもあるのです。
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親密な人に対して、
自分と同じ考え方や価値観を
持ってほしいと願うことは、
自然なことかもしれません。
自分が特定の考えを持つとき、
相手が異なる意見を言えば、
違和感を覚えることもあります。
これは、
親しさが深まるにつれて、
自分と相手の境界が曖昧になり、
相手と一体化したい
という気持ちが高まるためです。
相手が自分と異なる意見を持つと、
「なぜそう考えるのか?」
と疑問に思い、無意識のうちに
相手に自分と同じ考えを
受け入れさせようとすることも
あるでしょう。
しかし、
冷静に考えてみれば、
このような期待は不適切です。
すべての人は、個性豊かで
ユニークな存在だからです。
いくら親しい関係にあっても、
全てのことに対して
一致する意見を
持つわけではありません。
一つの点で
共感できるかもしれませんが、
別の点では全く異なる見方をすることは、
普通のことなのです。
それにもかかわらず、
相手に自分の考えを
押し付けることは、
相手を心理的に
コントロールしようとする行為であり、
このような行為が人間関係を壊す
引き金になることもあるでしょう。
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親しい人が
困難に直面しているとき、
親友として手を差し伸べたい
と思うのは自然な反応です。
しかし、
その援助が過度になると、
相手の領域に踏み込んでしまい、
結果的に相手に迷惑をかける
可能性があります。
相手が求めていない援助を
してしまい、相手から
反感を買うこともあり得ます。
協力を提供した側からすれば、
「あれだけ助けたのに、
喜ばれないし、感謝されない」
と怒りを感じるかもしれません。
一方、援助を受けた側は、
「正直、ありがた迷惑だった」
と思うことも少なくありません。
このような状況になると、
親密な関係が崩れるリスクも
高まるでしょう。
いくら親しい仲でも、
過度に援助をしすぎるのは
望ましくありません。
相手の真のニーズを理解し、
求められた範囲内で
適切に支援することが、
互いの信頼関係を維持する鍵
と言ってもよいでしょう。
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良好な人間関係を
維持するためには、
距離が遠すぎても
近すぎても
望ましくありません。
適切な距離感が
求められるのです。
このことは
「ヤマアラシのジレンマ」
という寓話で
見事に説明されています。
ヤマアラシは
全身が鋭い棘で
覆われた動物です。
寒い部屋で
2匹のヤマアラシが
共に生活していました。
お互いを暖めるため、
2匹は身を寄せようとしました。
でも、2匹が接近した途端、
鋭い棘で互いを
傷つけてしまったのです。
「痛たたた……」と叫び、
2匹は血まみれになりました。
身を寄せれば
互いに傷つける結果となったため、
今後はそのような事態を
避けるために、
距離を置くことにしました。
そして、2匹は
互いに身を引いたのです。
しかし、
今度は距離を取りすぎたため、
寒さが以前よりも増し、
余計つらくなってしまいました。
最終的にヤマアラシは、
距離が遠すぎても近すぎてもダメで、
適切な距離感が必要だ
と理解したわけです。
人間関係においても、
これとまったく同じことが
言えます。
親密な関係になることは
望ましいですが、
近寄りすぎてはいけません。
健全で良好な関係性を
保つためには、お互いに
相手の領域を侵害しない程度の
距離感が必要です。
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適切な距離感を
保つことの重要性は、
血縁関係においても
同様に当てはまります。
特に子どもが成人した後の
親子関係においては、
この原則がさらに重要になります。
親が子どもの問題に
過度に介入することは、
本来親密であるべき関係に
亀裂を入れる可能性があるからです。
親が子どもに
自分の未達成の夢を
託すこともありますが、
それが子ども自身の
望みや未来像と異なる場合、
親が自分の意向を押しつけることは、
子どもにとって負担となるでしょう。
親が「あなたのためを思って」
と言いながら、実際には
自分の望みを
押し付けているケースも
多いのが現状です。
これでは、親子関係も
悪化してしまうでしょう。
親も子も、過度な期待をせず、
お互いを束縛することなく
適度に支え合うことが、
健全な親子関係を
維持するためには不可欠です。
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今回の話のポイントは、
どんな相手であれ、
適切な距離感を保つことが、
人間関係を健全かつ良好に
保つために必要だという点です。
適切な距離感を保つためには、
以下の具体的なポイントに
注意するとよいでしょう。
1)相手に対して
過度な期待を持たないこと。
2)考え方や価値観は
人それぞれであると認識し、
自分の考えを
相手に押しつけないこと。
3)自分の課題と
相手の課題をはっきり区別し、
自分は自分の課題に集中すること。
また、相手の領域に
立ち入るのは避けること。
4)相手から何かを望むときには、
双方に利益がある結果を目指すこと。
5)自分と相手を
一体化させないこと。
これらの点を
理解するのは簡単ですが、
実際に適用するのは容易くありません。
しかし、人間関係が
おかしくなりそうなときには、
これらの要点を見直し、
適切な人間関係の距離感が
保たれているかどうか、
確認するとよいでしょう。
もし近寄りすぎたと感じたなら、
即座に修正し、適切な距離感を
取り戻すことが重要です。
そうすることで、
健全かつ良好な関係の構築が
可能になるでしょう。