問題解決のカギは視点の転換にあり!

何か問題が発生したとき、
私たちはしばしば、
「この問題を引き起こした原因はこれだ!」
と断定し、
その原因を解消するアプローチを
取りがちです。

しかし、この方法は
必ずしも効果的とは限りません。

問題を解決するどころか、
状況をさらに悪化させてしまうことも
あるからです。

なかなか解決できない問題には、
今までの方法を見直して、
より包括的な視点での
アプローチに切り替えるとよいでしょう。

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それほど単純な話ではありません!

ある出来事が
直接別の出来事を引き起こす
という考え方は、
直線的因果論と呼ばれます。

これは、Aという出来事の原因が
Bであるとする見方です。

たとえば、「雨が降ったので、
地面が濡れた」といった場合、
特定の原因が直接一つの結果を
もたらすと考えます。

一方で、
複数の事柄が互いに影響し合い、
循環的に発生する現象は
円環的因果論と呼ばれます。

たとえば、
植物が日光を浴びて成長し、
その植物が鳥に食べられる。
その鳥が種子を別の場所へ運び、
そこで新たな植物が育つ、
という循環です。

円環的因果論では、
複数の出来事や要因が
互いに影響し合い、
一つの循環を形成するという見方です。

私たちが日常遭遇する問題においては、
原因を特定できる場合もありますが、
すべてのケースで
このアプローチが有効とは限りません。

多くの場合、
さまざまな要因が相互に影響し合い、
問題が発生しているからです。

そのため、
原因を特定する方法ではなく、
包括的なアプローチを取るほうが
効果的な場合が多いのです。

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アプローチを間違えると、問題解決は困難になります!

円環的因果論で解決すべき問題を、
直線的因果論で解決しようとすると、
問題はさらに
複雑化する可能性があります。

たとえば、
国民の公衆衛生について考える際、
疾病の拡散が問題になると、
直線的因果論に基づく解決策では
特定の疾病に対するワクチン接種や
治療に焦点を当てるかもしれません。

しかし、
一つの疾病に注目することで
他の疾病を見過ごしたり、
社会経済的要因や
文化的背景を考慮しない場合、
社会全体の健康問題は
悪化するリスクもあります。

別の例として、
高い犯罪率が問題となる場合、
直線的因果論に基づく解決策は
警察の増員や厳罰化を目指すこと
かもしれません。

しかし、貧困や不適切な教育、
社会的不平等など、
犯罪の根本的な原因に対処しない場合、
警察の力だけに頼っても
問題解決には至らず、
社会の分断や他の社会問題を
引き起こす危険もあるのです。

直接的なアプローチで
迅速に問題を解決しようとしても、
うまくいかないことが多いのが
現実と言えるでしょう。

このような場合、
多角的かつ長期的な視点で、
複雑な相互作用を考慮に入れて
問題に取り組む必要があります。

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人間関係や家族の問題には、円環的因果論のアプローチが望ましい!

人間関係や家族内の問題においても、
直線的因果論による原因特定では、
問題が解決しないことが
しばしばあります。

誰が悪いかを探り、
その人の行動を改めさせようとしても、
実際にはうまくいかず
行き詰まることが多いのです。

たとえば、
子どもが不登校になった場合、
親の育て方に問題があったから
そうなったと直線的因果論で考えがちです。

親は自身の子育て方法を見直し、
改善しようと
努力するかもしれません。

しかし、
それでも子どもの状態が改善せず、
かえって悪化する場合もあります。

そんなときは、
家族全体の視点で
問題を捉えるアプローチが有効です。

円環的因果論に基づき、
家族全員の関係性を
包括的に見てゆくのです。

子どもと母親、子どもと父親
の関係だけでなく、
夫婦関係や祖父母との関係、
兄弟姉妹間の関係など、
家族を複雑に絡み合う
システムとして捉えます。

そして、家族システム内の
バランスの歪みが、
子どもの不登校という形で
問題を示していると考えるのです。

このアプローチでは、
特定の家族メンバーを悪者扱いせず、
不登校の子どもを育てた母親を
非難することはありません。

原因探しや悪者探しをせず、
現状の悪循環のパターンに気付き、
それをどう改善するか、
どこから変化を起こし、
循環のパターンを
どう変えていくかに取り組んでいきます。

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あなたが悪いわけではありません!

不登校の子どもが
引きこもりになったケースがあります。

その母親は、子どもの不登校が
自分の育て方に問題があったと考え、
それを原因と特定しました。

母親自身だけでなく、
夫や義理の両親、親戚、
さらには息子の学校の教師からも、
母親の育て方に問題があると指摘され、
周囲から否定的な言葉を受け、
精神的にも大きく落ち込んでいたのです。

それでも母親は、
より良い育児を目指し、
良い母親になるために
必死に努力を重ねました。

しかし、残念ながら、
母親の努力にもかかわらず、
息子の状態は不登校から
自室に引きこもる状態へと進んでしまい、
ほとんど部屋から出ることも
なくなりました。

以前の不登校だけの状態よりも、
事態はさらに悪化してしまったのです。

この家族は、運良く
家族療法の専門家の助けを
借りることができました。

専門家は、
直線的因果論に基づく解決方法ではなく、
円環的因果論のアプローチを提案しました。

面会時には母親だけでなく、
父親も参加するよう奨励しました。

そして専門家は、このような状況が
母親の非にあるわけではない
と説明しました。

それよりも、
家族全体のバランスの崩れが
息子の不登校や引きこもりという現象として
現れているのだと言ったのです。

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父親の小さな変化が家族全体に大きく波及した!

この家族は、父と母、
息子の3人家族です。

父親は仕事が多忙で、
普段は家族と顔を合わせることも
難しい状況でした。

週末には家にいても、
長時間労働による疲れから
ほとんど寝て過ごし、妻や息子との時間を
持つことができませんでした。

そのため、子育ては
専業主婦である母親の役割となり、
母親は一生懸命に
子育てに取り組んでいました。

このケースでは、専門家の提案により、
母親が子育て方法を見直すのではなく、
まずは父親が小さな変化を
起こすことになりました。

具体的には、週末の夕食を
夫婦で一緒に食べることでした。

これまでそれすらなかったのですが、
これを意識的に続けた結果、
息子の様子にも変化が現れました。

以前は自室にこもりがちだった息子が、
居間やキッチンに
出てくるようになったのです。

週末だけでも
夫婦で夕食を共にすることで、
夫婦間のコミュニケーションが増え、
母親の寂しさも軽減され、
安心感が高まったのでしょう。

そうなれば、
母親もリラックスできるようになり、
子どもに対する過干渉が減少し、
よりゆったりとした気持ちで生活して、
家庭の雰囲気もより良いものに
なったのだと思われます。

息子も過剰なプレッシャーを感じずに、
自然とストレスが
解消されたのでしょう。

父親の小さな変化は、
母親の変化を促し、
家族全体の雰囲気を
リラックスしたものに変えました。

そして、この小さな変化が
家族全体に良い影響を及ぼし、
最終的には子どもを回復の道へと
導いたわけです。

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誰から始めても、どこから始めてもよいのです!

大切なことは、
現在続いている悪循環のどこかに
小さな変化を起こすことです。

この小さな変化が
全体に影響を及ぼしていきます。

小さな変化を起こす際には、
どこから始めても良く、
誰から始めても問題ありません。

始めやすい場所や、
無理なく行える範囲で
意図的に小さな変化を起こすことが
コツです。

家族の誰かが小さな変化を起こすと、
それが別の家族メンバーに影響を与え、
影響を受けたメンバーが
より望ましい行動へと移行することが
可能になります。

それによって、家族の中で
問題視されていたメンバーの問題も
軽減されたり、
解決されたりするのです。

家族全員が関わっているため、
すぐに問題が
解決するわけではありませんが、
家族内の一人の小さな変化が
じわじわと他のメンバーにも広がり、
やがては家族全体のバランスを改善し、
家族の歪みも正されて、
家族全体が望ましい方向へと
導かれることになるのです。

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まとめ

今回は、解決しようとしても
なかなか解決しない問題について、
その原因を特定するのではなく、
円環的因果論のアプローチを取り、
長期的かつ多角的な視点で
包括的に対応することの効果について
お話ししました。

犯人探しや悪者探しに
時間や労力を費やすのではなく、
多くの異なる要因が
相互に影響し合う状況を理解し、
全体的なアプローチを取ることが
効果的です。

問題で行き詰まると視野が狭まり、
包括的な対応も難しくなることも
多いのが現状です。

問題が家族関連のものであれば、
円環的因果論のアプローチに精通した
家族療法のカウンセラーの協力を
得るのも一つの方法です。

家族間の問題に限らず、
解決が難しい場合には、
自分のアプローチが
直線的因果論になっていないかを見直し、
円環的因果論のアプローチを
試すことも有益です。

直線的因果論の考え方ではなく、
視点を変えることで
大きな進展が見られることも
ありますので、解決が難しいときは、
この点を考慮してみては
いかがでしょうか?

皆さんの問題が早く解決し、
幸せな生活が送れることを
心から願っています。