苦手だけれど避けられない相手と、少し楽に向き合う方法

職場の上司、家族、パートナーなど、
避けられない関係が
うまく行かないこともあるでしょう。

そんな場合、どうすれば
関係を改善できるでしょうか? 

この記事では、
NLP(神経言語プログラミング)
の考え方を活用した、一人でできる
関係改善に役立つ方法を
ご紹介します。

心理学的な視点から、
相手との関係性を見直すための
ステップを解説します。

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距離感で変わる日常の体験

私たちの心は、
目の前の出来事に対して、
いつも同じ距離を
保っているわけではありません。

あるときは深く入り込み、
またあるときは
少し離れた場所から眺めています。

この「心理的な距離感」によって、
同じ出来事でも
かなり違った体験になるのです。

たとえば、
好きな料理を作っているとき、
食材の香りや手触り、
包丁の音、色の変化——
それらすべてが鮮やかに
感じられる瞬間があります。

このとき、私たちは
「今ここ」にすっかり没頭し、
体験と一体化しています。

NLPでは、このように
主観的に体験に入り込んでいる状態を
「アソシエーション」と呼びます。

別の例を挙げると、
夢中で本を読んでいて、
登場人物の感情が
まるで自分のもののように
感じられるときや、
スポーツ中に頭で考えるよりも
先に体が動き、
「ゾーン」に入っている状態も
アソシエーションの一種です。

このようなときには、
「自分」と「体験」の境界が
ほとんどなくなっています。

一方で、私たちはときに
自分自身を少し離れたところから
見ていることもあります。

この状態が
「ディソシエーション」です。

たとえば、通勤電車の中で
体は電車に乗っているのに
心は別の場所をさまよっているときや、
服を試着しているときに
鏡に映る自分を見ながら
「この服を着てパーティーに行ったら、
どんな気分だろう」と空想している瞬間も、
ディソシエーションの一種といえます。

体は試着室にあるのに、
心は少し先の未来に移動して、
まるで別の自分を眺めているのです。

私たちはこうした
「アソシエーション」と
「ディソシエーション」を、
無意識のうちに行き来しながら
生活しています。

同じ出来事を経験していても、
「アソシエーション」のときと
「ディソシエーション」のときでは、
感じ方が驚くほど違うことに
気づく人もいるでしょう。

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心の距離を使い分ける知恵

アソシエーションとディソシエーションは、
どちらが良い・悪い
というものではありません。

大切なのは、状況に合わせて
うまく使い分けることです。

そうすることで、
自分の心理状態を
穏やかに保ちやすくなり、
より望ましい結果を
得られるでしょう。

学習や仕事に取り組むとき、
完全に集中して
アソシエーションの状態に入ることで、
作業の効率はぐっと上がります。

楽しい体験をしているときに
没入すれば、
その喜びを
心から味わうことができます。

また、誰かの話を聴くときに
その人の世界に入り込むことで、
相手の気持ちをより深く理解し、
共感することができるでしょう。

ポジティブな状況では、
アソシエーションが私たちの体験を
より豊かにしてくれるのです。

一方で、
怒りで感情が高ぶっているときや、
ネガティブな思考に
飲み込まれそうなときには、
ディソシエーションが助けになります。

自分を少し離れた位置から
見つめることで、
気持ちを落ち着かせることが
できるからです。

満員電車のような不快な状況でも、
心を一時的に別の場所へ移すことで、
精神的な負担を
軽くすることができるでしょう。

感情に流されずに
判断したいときにも、
ディソシエーションは頼れる味方です。

このように、集中したいときには
アソシエーションを、
落ち着きたいときには
ディソシエーションを
意識的に選ぶことで、
心のバランスを保ちやすくなります。

日常の中でこの心の距離を
上手に使い分けることができれば、
心は安定して、より望ましい結果を
得やすくなるでしょう。

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関係改善にも使えるアソシエーションとディソシエーション

アソシエーションと
ディソシエーションの考え方は、
自分の心の状態を整えるだけでなく、
他者との関係を見直すときにも
役立ちます。

特に、苦手だけれど
避けられない相手との関係を
改善したいときには、
「3つの知覚の位置」という
NLPのテクニックが
大きな助けになるでしょう。

このテクニックの本質は、
一つの人間関係を
三つの異なる視点から
体験することにあります。

自分自身の視点だけでなく、
相手の立場に立った視点、
そして両者から完全に離れた第三者の視点——
この三つの知覚位置を行き来することで、
これまで見えなかった気づきを
得ることができるのです。

私たちはふだん、自分の視点に
固定されやすい傾向があります。

特に苦手な相手との関係では、
自分の感情や思い込みが強く働き、
相手の立場や状況全体を
広く見ることが難しいです。

そこで、このテクニックでは、
相手や状況全体の視点に
入りやすくするために、
実際に3つの異なる位置を
物理的に作り出します。

その位置を順に移動しながら
視点を切り替えることで、
異なる立場から状況を
体験できるようになるのです。

自分の視点だけでなく、
相手の視点、そして
全体を見渡す第三者の視点から
関係を見つめ直すと、
これまで気づかなかった感情や
理解が生まれます。

これこそが、
このテクニックを活用する
大きな目的なのです。

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まずは自分自身の視点をじっくり体験しよう

では、実際にどのように
「3つの知覚の位置」を実践するのか、
具体的な方法を見ていきましょう。

このエクササイズは、
NLPカウンセラーの指導のもとで
行うこともできますが、
一人でも取り組むことができます。

用意するものは
椅子を三つだけです。

まず、三つの椅子を
三角形になるように配置します。

二つの椅子を向かい合わせに置き、
一つは少し離れた場所に
置いてください。

向かい合った椅子のうち、
一方があなたの位置(第1の位置)、
もう一方が相手の位置(第2の位置)、
そして離れた椅子が
観察者の位置(第3の位置)です。

第3の位置からは、
向かい合った二つの椅子の両方が
見えるようにしておきましょう。

エクササイズを始める前に、
誰との関係をテーマにするかを
決めます。

苦手な上司、
関係がぎくしゃくしているパートナー、
うまく意思疎通ができない家族など、
どんな相手でもかまいません。

準備が整ったら、第1の位置——
あなた自身の椅子に座ります。

ここでは、相手との間で
実際に起こった場面を
一つ思い出してください。

最近の会話でも、
印象に残っている出来事でも
構いません。

目を閉じて、その場面に戻るように
意識を向けましょう。

そのとき、あなたには
何が見えているでしょうか?

相手の表情、姿勢、周囲の様子——
視覚的な記憶を思い出します。

何が聞こえているでしょうか?

相手の声のトーン、言葉、周囲の音——
聴覚的な記憶にも注意を向けます。

そして、何を感じているでしょうか?

胸の緊張、怒り、不安、悲しみ——
身体感覚や感情にも
意識を向けてください。

いま、あなたは
体験の中にすっかり入り込み、
自分自身に
アソシエーションしている状態です。

向かいの空いた椅子に
相手が座っているとイメージし、
その相手に向かって、
思っていることや伝えたいことを
実際に声に出して言ってみましょう。

誰も聞いていませんから、
遠慮はいりません。

本音のままに
言葉を口にしてください。

十分に自分の立場を体験できたら、
立ち上がって
少し離れた位置に置かれた椅子——
第3の位置に移動します。

ここからが
少し難しいかもしれませんが、
とても大切なステップです。

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自分自身と相手から離れた位置で、客観的に観察しよう

第1の位置で十分に体験したら、
今度は第3の位置——
観察者の椅子に移動します。

ここは、
自分からも相手からも離れた、
中立的な立場です。

第3の位置に座ると、
目の前に二つの椅子が見えます。

一つはあなたが座っていた椅子、
もう一つは相手の椅子です。

ここでは、まるで
舞台の観客になったような気持ちで、
二人のやり取りを
見つめてみてください。

自分の感情からも、
相手の感情からも距離を置き、
完全にディソシエーションした状態で
観察するのがポイントです。

この位置からは、
どんなことが見えてくるでしょうか?

二人の間には、
どんなパターンがあるでしょうか?

どちらかが話すと、
もう一方はどう反応していますか?

会話の流れはどんなリズムで
進んでいるでしょうか?

お互いに誤解している部分は
ありませんか?

第三者の視点から眺めると、
両者の行動のパターンが
見えてくるかもしれません。

たとえば、
一方が距離を置こうとすると、
もう一方が追いかけてしまう関係性。

一方が批判すると、
もう一方が防衛的になり、
さらに批判が強まる——
そんな悪循環もあるかもしれません。

こうしたパターンは、
当事者の立場にいると
気づきにくいものですが、
外側から見ることで
見えやすくなるでしょう。

観察者として
「この二人には、
こういうことが起こっている」
といったように、客観的な観察を
言葉にしていきましょう。

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相手の目を通して状況を見てみよう

第3の位置で客観視した後には、
第2の椅子(相手)に移動します。

そして、今度はあなたが
相手になりきるように努めましょう
(相手にアソシエーションします)。

相手の感覚をできるだけ
具体的に想像してみてください。

そして、向かい側の椅子
(第1の位置)を見ます。

そこに座っているのは、
あなた自身です。

相手の目を通して、
自分を眺めるような感覚です。

この視点から見たとき、
あなた(=相手から見たあなた)は
どんなふうに映っているでしょうか?

表情は?姿勢は?
どんな印象を与えているでしょうか?

次に、相手の立場になって、
先ほどあなたが口にした言葉を
思い出してみてください。

そして今度は、それを
受け取る側として聞いてみましょう。

相手として
その言葉を聞いたとき、
どんな気持ちが湧いてくるでしょうか?
何を感じますか?

ここで大切なのは、
相手を理解しようとする姿勢です。

相手は何を
大切にしているのでしょうか?
何を恐れているのでしょうか?
何を求めているのでしょうか?

相手の立場から、
第1の位置にいる自分(あなた)に向かって、
思っていることを言葉にしてみましょう。

「私(相手)は、
あなた(自分)のことをこう見ている」——
そんなふうに、相手の気持ちとして
語ってみるのです。

第2の位置での体験は、
多くの人にとって
新しい発見をもたらします。

相手の視点に立つことで、
これまで見えなかった側面が
見えてくることもあるからです。

相手もまた、不安や恐れ、
そして願いを抱える
一人の人間であることが、
理解できるかもしれません。

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新しい視点を自分のものにする

第2の位置で感じたことを
すべて言葉にした後には、
再び第1の位置に戻ります。

自分の椅子に座り直し、
今回のエクササイズ全体を
振り返ってみましょう。

自分の位置で感じたこと、
観察者の位置で見えたこと、
相手の位置で感じたこと、——
それらすべてを一つにまとめると、
どんな気づきが得られたでしょうか?

相手に対する見方は変わりましたか?

自分自身の行動について、
新しい理解が生まれたでしょうか?

関係を改善するために、
具体的にできそうなことはありますか?

ここで大切なのは、
エクササイズで得た気づきを
日常生活に持ち帰ることです。

相手との次の会話では、
第2の位置で感じたことを
思い出してみましょう。

相手の視点を
少しでも意識するだけで、
コミュニケーションの質は
確実に変化します。

感情的になりそうなときは、
第3の位置を思い出せば、
客観的な視点を
取り戻すことができるでしょう。

エクササイズ中に感じたことや
気づいたことを
ノートに書き留めておくのも
お勧めです。

言葉にすることで
気づきがより明確になり、
後から読み返すことで
新たな発見につながることもあります。

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おわりに

この記事では、
NLP(神経言語プログラミング)
の考え方を応用した、
一人でも取り組める
関係改善の方法をご紹介しました。

「3つの知覚の位置」は、
一度試しただけで
劇的に関係が変わる
魔法のような方法ではありません。

しかし、
繰り返し実践するうちに、
視点を切り替える力が少しずつ育ち、
日常の中でも自然に
複数の視点を
持てるようになるでしょう。

エクササイズを行う際のポイントは、
それぞれの位置で
五感を意識することです。

何が見えるか、何が聞こえるか、
何を感じているか——
視覚・聴覚・身体感覚に
注意を向けることで、
より深くその視点に
入り込みやすくなるでしょう。

また、実際に椅子を移動することの
重要性も忘れないでください。

体を動かして違う場所に座ることで、
脳は「いま、別の視点にいる」
と認識しやすくなります。

苦手な相手との関係は、
避けられないからこそ
難しく感じるものです。

けれども、少しでも
視点を変える意識を持つことで、
視野も広くなり、
今まで見えなかったことに
気づけるでしょう。

そして、その気づきを
関係改善のために
活用してみてください。

3つの椅子が教えてくれる新しい視点——
それは、人間関係をより良い方向へ導く、
小さくても確かな一歩になるでしょう。