今回は、
良好な人間関係を築くために
役立つヒントをお話しします。
その妨げとなっている
思い込みに気づき、
それを手放すことが大切です。
多くの人が自覚せずに抱えている
思い込みを取り除くだけで、
自然と良好な人間関係を
構築しやすくなるでしょう。
この記事では、その思い込みが
何であるかに焦点を当て、
話を進めてゆきたいと思います。
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良好な人間関係を妨げる思い込みは、
「相手が変われば、問題は解決する」
という考え方です。
相手の考え方や言い方、
振る舞いが不愉快だったり
不都合だったりすると、
「相手が自分と同じように
考えてくれれば問題は解決する」
「相手が行動を改めてくれれば
問題は解決するだろう」と思うことは
多くの人が無意識にしていることです。
この思い込みの共通点は、
「相手が変われば問題は解決する」
と考えてしまうことです。
多くの人が気づかずに
この思い込みをしているのは、
人間は自分中心に
物事を考える傾向にあるからです。
この思い込みを持っていると、
相手との間に問題が生じたとき、
相手を変えようとするアプローチを
取りがちです。
しかし、残念ながら
そのようなアプローチは
ほとんどの場合、逆効果になります。
相手を変えようとすればするほど、
相手は頑なになり、
関係が悪化していくのです。
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「相手が変わってくれれば、
問題は解決する」という思い込みに基づく
コミュニケーション方法は、
「批判する」「責める」「文句を言う」
「説教して言って聞かせる」「脅す」
「罰する」「褒美で釣る」の7つに分類されます。
具体的な例を見てみましょう。
批判する
「あなたの意見はいつも一方的だ」
「君は全く配慮が足りない」
「その発言は無責任だ」
「あなたの行動は自己中心的すぎる」
「君は現実を理解していない」などがあります。
責める
「全部あなたのミスだ」
「君が注意していれば問題は起きなかった」
「あなたの判断が間違っていた」
「君がやらなかったから困っている」
「あなたのせいで状況が悪化した」という例です。
文句を言う
「君といるとイライラする」
「なんで私がいつも
フォローしなきゃいけないの?」
「また君のせいで時間が無駄になった」
「本当に面倒くさいことばかりするね」
「どうしていつも君だけが
問題を起こすの?」といったものです。
説教して言って聞かせる
「もっと責任感を持って行動しなさい」
「時間を守ることの重要性を
理解しなきゃダメだよ」
「自分の言動にもっと注意を払わないと」
「約束を守ることが信頼につながるんだよ」
「他人の気持ちを考えることを
覚えなきゃいけないよ」などがあります。
脅す
「次に同じミスをしたら、容赦しないぞ」
「言うことを聞かなければ、
どうなるか分かってるよね」
「私を怒らせると後が怖いよ」
「やらなかったら、君の立場が危うくなるよ」
「反抗すれば、大変なことになるから
覚悟しておいて」というものです。
罰する
相手の提案を無視する、責任を増やす、
予定をキャンセルする、
相手への支援を中止する、連絡を絶つ、
不機嫌になる、口をきかないことなどが
例として挙げられます。
褒美で釣る
「仕事を早く終わらせたら、
夕食は君の好きなレストランに行こう」
「目標を達成したら、ボーナスを出すよ」
「掃除をちゃんとやったら、
お小遣いを増やすよ」
「プロジェクトが成功したら、
休暇を取っていいよ」
「いい成績を取ったら、
新しいゲームを買ってあげるよ」といったもので、
一見良さそうに思えるこの方法ですが、
実は逆効果です。
これらのアプローチは、
一時的には効果があるように
見えるかもしれません。
しかし、長期的には
逆効果になることがほとんどです。
相手を変えようとするほど、
相手との関係は悪化し、
問題が複雑になるでしょう。
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相手を変えようとする努力が
逆効果になるのは、
人間は他者からコントロールされたくない
という強い欲求を持っているからです。
相手からコントロールされている
と感じると、誰でも抵抗心が生じます。
この抵抗心を
「心理的リアクタンス」と呼びます。
心理的リアクタンスは、
自分の自由や選択が
制限されると感じたときに生じる
抵抗感や反発心のことです。
この現象は、特に
自分の意志や行動が
他者によって脅かされたり、
制約されたりするときに強く表れます。
たとえば、親が子供に
「絶対にこの時間に宿題をやりなさい」
と強く言うと、子供はその指示に反発し、
宿題をやりたくなくなることがよくあります。
これは、子供が
自分の行動を自分で決めたい
という自由を奪われたと感じるからです。
この反発心は、親の意図とは逆に、
子供が宿題をやらない原因となるでしょう。
心理的リアクタンスは、家庭や職場、
友人関係など、
さまざまな人間関係の中で生じます。
たとえば、上司が部下に対して
厳しすぎる指示を出せば、
部下のモチベーションが低下し、
生産性が下がることがあります。
また、友人関係でも
「もっとこうしてほしい」
と強く要求しすぎると、
相手はその要求に反発し、
関係が悪化する可能性があります。
心理的リアクタンスは、
人が自分の意思で行動することの
重要性を強調しています。
他者に対して
過度にコントロールしようとする行為は、
相手の自由を侵害し、
反発心を引き起こすことにつながるのです。
その結果、期待される行動や成果が
得られなくなることが多いです。
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相手との間に
不都合や問題が生じたとき、
多くの人は次の2つの選択肢を
思い浮かべます。
一つは、相手が
自分の都合の良いように変わること。
もう一つは、自分が
相手の気に入らない言動を
我慢することです。
しかし、どちらの選択肢でも
人間関係をうまくいかせることは
難しいでしょう。
相手を変えようとすると、
相手は不満を抱きます。
あなたが我慢すると
あなた自身が辛くなり、
不満を感じるからです。
つまり、どちらの選択肢も
適切ではありません。
理想的な選択肢は、
相手を変えることでも、
自分が我慢することでもなく、
相手と自分が共に満足できる方法を
一緒に考えることです。
多くの人はそんな方法があるとは
思わないでしょうが、
実際に相手と話し合って考えれば、
共に満足できる方法を見つけたり、
妥協できる場合が多いのです。
この理想的なアプローチを取る際に
重要なのは、自分の欲求を
相手に率直に伝えることです。
「自分はこうしたい」
と相手に話す必要があります。
それと同時に、相手の欲求にも
耳を傾けることが大切です。
感情的にならず、冷静な姿勢で
相手に対して尊重する気持ちを持ちながら、
自分の望むことを
はっきりと相手に伝えること。
そして、相手の望むことも
否定せずに受け入れることです。
その上で、どうすれば
お互いが満足できるのかを
話し合うことが不可欠です。
この話し合いは
簡単ではないかもしれませんが、
これによりお互いが妥協したり
満足できる方法を
見つけることが可能になります。
100%満足できなくても、
妥協案に落ち着くこともあります。
話し合いの結果、
自分が納得できれば、
妥協案に落ち着いても
以前のような怒りの感情を
持つことはなくなるでしょう。
そして、お互いの人間関係も
今までより良い方向へ
進んでいけるのです。
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他者との良好な人間関係を
築くためには、
他人を自分の思い通りには
変えられないと理解することが大切です。
他人とは、
自分以外のすべての人を指し、
家族や配偶者、
親しい友人なども含まれます。
現実には、関係が親密になるほど、
人は相手に対して
過度な期待を抱きがちです。
相手を独立した人間として尊重せず、
無意識に相手の領域に
侵入してしまうこともあります。
その結果、
相手が自分の望むように
変わってくれることを
願うことが多いのです。
しかし、それは
適切な願いではありません。
相手を自分の思い通りに変えられない
と理解することで、
相手との関係を諦める必要がある
と感じるかもしれませんが、それは誤解です。
相手そのものを
変えることはできなくても、
相手との関係は
変えることができるからです。
この区別を
しっかりすることが重要なのです。
相手を変えることは諦めても、
相手との関係を変えることは
諦める必要はありません。
相手との関係で
不満があるときや
改善したいと感じるときは、
相手と話し合いましょう。
これは簡単なことではありませんが、
挑戦する価値があります。
自分の望みを相手に伝え、
相手の望みも聞き入れて、
お互いが満足できる関係性を目指すことは、
不可能ではありません。
その状態に到達できれば、
良好な人間関係を築く基礎となり、
お互いが幸せになれるでしょう。
人間関係は常に
変化しているものです。
嫌なことや
我慢できないことがある場合、
放っておくと関係が冷め、
悪化する可能性が高いでしょう。
しかし、話し合うことで
少しずつでも改善の方向に
進むことが可能になります。
もし相手と
良好な関係を築きたいのなら、
この方向に努力することが、
自分にとっても、相手にとっても
より良い結果をもたらすでしょう。
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今回の記事では、
良好な人間関係を築くための
重要なポイントをお話ししました。
人間関係がうまくいかない原因の一つは、
「相手が変われば問題は解決する」
と思い込んでいることです。
この思い込みは
無意識にしていることが多いです。
人間関係に悩んでいる方は、
この思い込みをしていないか
自問自答してみるとよいでしょう。
気づくことさえできれば、
それだけでも違います。
相手を変えようとして、
「批判する」「責める」「文句を言う」
「説教して言い聞かせる」
「脅す」「罰する」「褒美で釣る」
といったアプローチを取ると、
ほとんどの場合、逆効果になるでしょう。
その理由は、人間は誰もが
「他者から支配されたくない」
という欲求を持っているからです。
一時的に
うまくいっているように見えても、
長期的にはこのようなアプローチでは
関係が破綻してしまうでしょう。
理想的なアプローチは、
相手を変えようとしないこと、
また、自分が我慢することも
避けることです。
代わりに、相手と自分が
共に満足できる解決策を
一緒に考えることが重要です。
そのためには、
アサーティブな話し合いが不可欠です。
これはチャレンジが大きく、
面倒に感じるかもしれませんが、
挑戦する価値のあることです。
自分の意向を率直に相手に伝え、
相手の意向も尊重します。
自分も相手も妥協できる状態を
一緒に考えることが大切です。
100%の満足は難しくても、
「まあ、これなら」という妥協案に
落ち着くことも多々あります。
この方向で
お互いに考え話し合うことで、
人間関係は今までよりも
ずっと改善されるでしょう。
相手との人間関係を
良好にしたいと願うなら、
自分のためにも相手のためにも、
より良い人間関係を築くために
この方向で動きましょう。