今回のテーマは、
「心理的な自立」についてです。
なぜ、心理的な自立が
重要なのでしょうか?
その理由を説明し、
心理的な自立を達成するために
必要なポイントを考えてみます。
さらに、
心理的に自立できていない人が、
どのようにして心の自立を
促進できるかについても触れます。
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一般的には、
「自立」と「依存」は
対立するものとされがちですが、
「心の自立」と「依存」は
実際には対立しないものです。
つまり、心理的な自立は
依存が存在しない状態を
意味するわけではありません。
心の自立を達成するためには、
必要な依存を
認め入れることが不可欠です。
ただし、
自分が依存していることに自覚があり、
そのことに感謝の気持ちを持つことが、
理想的なアプローチと言えるでしょう。
誰もが自分の力だけで
完全に生きていけるわけでは
ありません。
必要なときには、
他者へ依存することで、
私たちは生きていけるのです。
自身の力だけでは
限界がある場面では
他者の協力を受け入れ、
自分が支えることのできる場面では
他者を支えることで、
持ちつ持たれつの関係、
つまり相互依存の状態が、
健全で望ましい依存になります。
そして、このような健全な依存を
他者と互いにできる人こそが、
心理的に自立した人なのです。
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次に、心理的に健全な依存が
成り立つための4つの条件について
お話ししましょう。
1つ目の条件は、
一方的に相手に依存せず、
持ちつ持たれつの相互依存関係を
築くことです。
自分ばかりが相手に対して、
「ああしてほしい。こうしてほしい」
と自分の欲求を要求するのではなく、
相手の欲求も聞き入れることが大切です。
2つ目の条件は、
相互依存しながらも、お互いの境界を
侵犯しないように
自立を保つことが重要です。
具体的に言えば、
相手と自分を別個の人間として、
お互いの考え方や価値観を
尊重することです。
たとえ考え方が異なる場合でも、
相手の意見を否定せず、
お互いの考え方を尊重し合います。
相手の感じ方や考え方、価値観は
彼ら自身の領域であり、
それに干渉すべきではありません。
同時に、相手が自分の領域に
干渉しようとしてきたら、
しっかりと「ノー」と言い、
自分の境界を守ることが必要です。
ときには自分の欲求を
相手に応じてもらえないことも
あるでしょう。
そのような場合、心の自立がある人は、
それにがっかりすることはあっても、
あっさりと諦めることができます。
一方、心の自立が足りない人は、
相手が自分の欲求を満たしてくれないと、
相手を恨んだり、非難したり、
すねたり、ひねくれたりする傾向があります。
3つ目の条件は、
自分が依存していることを自覚し、
感謝の気持ちを持つことです。
どんなに独立心が旺盛な人でも、
人は誰もが
他者からの援助を受けて生きています。
このことを謙虚に受け入れることは、
心理的自立の一部であり、
傲慢さから解放される
重要なステップです。
4つ目の条件は、
自分自身に関することは、
自分で決断を下せることです。
人生で重要な選択をする際に、
自分で決断できず、
親の意見に従うことが
あるかもしれません。
親にとっては
子どもが言うことを聞くのは
都合が良いことかもしれませんが、
そのような行為は、子どもが
精神的な自立ができていない証拠です。
親だけでなく、
社会的に権威のある人の意見に従ったり、
カルト宗教の教祖のような
カリスマ的リーダーに盲目的に従うことも、
心の自立ができていないことを
示すものです。
心の自立ができている人は、
自分の考えに基づいて自分で決断し、
その結果に責任を持つ姿勢があります。
彼らは他人の意見に振り回されず、
自分の方向性をしっかりと持ち、
自分の人生を
主体的に生きていけるのです。
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健全な依存関係として、
相手の欲求を
聞き入れる必要があることを
お話ししましたが、
この表現は誤解を生みやすいので、
ここで詳しく説明します。
相手の欲求を
聞き入れるということは、
必ずしも相手の望むことを
実行することではありません。
たとえば、相手があなたに
「Aをしてほしい」と言ってきた場合、
なんらかの理由により、
あなたはAをしたくないことも
あるでしょう。
そんな場合でも、あなたは
自分の気持ちを相手に率直に伝えて、
Aをしないことを決断することです。
おそらく相手は
がっかりするでしょうが、
相手のがっかりした気持ちを
あなたは受け入れてあげます。
つまり、Aという
相手の要求に応じることはなくても、
Aをしてもらえないことから生まれた
がっかりという相手の感情を
受け入れてあげるのです。
それが心の自立ができている人が
することです。
その一方で、
自分はAはやりたくないけれど、
断ったら相手をがっかりさせるからと思い、
相手の機嫌を取るために、
自分を犠牲にして
Aをやってあげる人がいます。
残念ながら、これは
心の自立ができていない人が
することだと言えるのです。
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心理的自立を目指すべき理由は、
心理的に自立した人が
多くのメリットを享受できるからです。
心の自立がある人は、
他者の影響を受けずに、
自分の望む選択を
することができる個人です。
その結果、より満足度の高い
充実した人生を
送ることが可能になります。
自分の人生を
自分の望むように
主体的に自由に生きることが
容易になるということです。
心理的な自立がある人は、
他者と健全な相互依存の関係を
築くことができ、
質の高い人間関係を維持しやすいです。
自分にできないことは他者に頼り、
自分が協力できることは
他者をサポートすることで、
持ちつ持たれつの健全な関係を
保てるのです。
また、自分のコントロールできることと
できないことを明確に区別し、
自分のコントロールが可能なことに
集中しやすくなります。
自分の管轄外にあることに
時間や労力を費やす必要もないため、
精神的なフラストレーションを減少させ、
心の平穏を得やすくなります。
このように、心理的自立は、
自分にとっても、他者にとっても、
望ましい状態を生み出すわけです。
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ここまでこの記事を読んで、
自分自身は心の自立が
まだまだできていないけれど、
ぜひ自立したいと思った方もいるでしょう。
そこで最後に、
心の自立に向けて進むために
具体的にできることをご紹介します。
心の自立を目指す人にとって、
有益なアクションは、
「自分自身の欲求に
応える習慣をつけること」です。
もし自身の欲求を抑え込み、
欲求不満に苦しんでいる場合、
心は充足感を得られず、ストレスが増大し、
心のバランスが崩れがちです。
その結果、他人や物事に
過度に依存しやすく、
不健康な依存関係に陥ることが
少なくありません。
このような状態を回避するために、
自分の内面で
自分は何を欲しているのかを探求し、
できる限り自己の欲求を
満たす習慣を身につけます。
それにより、心が満たされ、
内面に安心感と余裕が
生まれるでしょう。
この安心感と余裕が
大きくなるにつれて、
他人や物事に対する過度の依存が減少し、
健全な依存関係への移行が
可能になります。
自己の心に余裕ができることで、
他人の感情を受け入れる柔軟性も向上し、
相手を尊重しやすくなり、
良好な人間関係を築く手助けとなるのです。
心の自立度が向上し、
健全な相互依存関係を
築きやすくなるわけです。
子ども時代に親との関係において
十分な充足感を得た人は、
心理的に自立している傾向にあります。
しかし、これは理想的なケースであり、
現実には親から十分な充足感を
受け取れなかった人も多く存在します。
そんな場合でも、今から自分で
自分の心を満たすように努めて、
心の自立を促すことも可能です。
自己の内なる欲求を見つけ出し、
自分でそれを満たすことを
意識的に行います。
これを継続的に実践することで、
心が徐々に充足され、
安心感と余裕が生まれ、
心の自立への一歩を
踏み出すことができるでしょう。
もちろん、すべての欲求を
完全に満たすことは
難しいかもしれません。
しかし、これも
自己の成長と心の成熟にとって
重要な要素の一つであります。
それにより、
思い通りにならないことへの耐性が
育まれるからです。
自己の内なる声に耳を傾け、
可能な限り自分で自分を
満たしてあげてください。
自分を充たすことに専念する過程で、
心も少しずつ満たされ、
心理的自立に向けて
一歩近づくことでしょう。