夫婦関係が悪化しても、
子どもにSOSを出すのは
避けるべきです。
なぜなら、
それが子どもに与える影響は
小さくないからです。
この記事では、その理由を探り、
親が気をつけるべきポイント、
また、これまで親の面倒を見てきた子どもが
どうすればよいのかを考えます。
ここでは、母親が父親へ不満を抱き、
子どもに助けを求めるケースを
想定します。
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夫婦関係が悪化すると、
親は強い孤独感や苦しさを
抱え込みがちです。
結婚当初は
「この人とならうまくやっていける」と思い、
一生懸命家庭を築こうと
努力してきたかもしれません。
しかし、長い生活の中で、
価値観の違い、
コミュニケーション不足、
不満の蓄積など、
さまざまな要因が積み重なり、
夫婦関係が少しずつ
歪んでいくことがあります。
そうした状況の中で、
「この苦しさから抜け出したい」
と願うのは自然なことです。
意見の衝突や
心のすれ違いが深まるほど、
「誰かに支えてほしい」「わかってほしい」
と感じる気持ちは強くなるでしょう。
その結果、親は
自分のことで頭がいっぱいになり、
子どもの視点を考える余裕を
失ってしまうのです。
本来、夫婦間の問題は
当事者同士で解決すべきものですが、
苦しみが大きくなると、
「子どもなら真剣に
話を聞いてくれるのではないか」
と期待してしまうこともあるでしょう。
親にとって、
子どもは最も身近な存在だからこそ、
無意識のうちに心の叫びを
向けてしまうのかもしれません。
そして、
その苦しさが深刻になるほど、
「子どもに話を聞いてもらうしかない」
と思い、SOSを発してしまうのです。
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子どもにとって、
父親も母親も大切な存在です。
たとえ両親がけんかをしていても、
「自分にとってはどちらも大好きな人」
という気持ちは変わりません。
しかし、一方の親から
もう片方の親を否定する言葉を
繰り返し聞かされたり、
「あなたは私の味方だよね?」と
協力を求められたりすると、
子どもはどう感じるでしょうか?
「お父さんの悪いところばかり
聞かされるけれど、
本当は自分にとっても大切な人なのに……」。
そんな板挟みの状況は、
子どもの心に深い苦しみを与えます。
子どもは親を愛しているからこそ、
親を助けたい気持ちが強く、
さらに親から見捨てられたくないという
本能的な不安も抱えています。
そのため、
自分の本心を押し殺してでも
親のSOSに応えようとするでしょう。
そうするうちに、
「本当は自分は
お父さんをどう思っているのか」という、
自分の素直な感情が
わからなくなってしまうのです。
一方の親の悪口を聞かされ続けるうちに、
子どもは影響を受け、
「お父さんはひどい人なんだ」
と思い込んでしまうこともあるでしょう。
そうするうちに、
本来の気持ちとは異なる感情が生まれ、
気づけばお父さんに対して
嫌悪感を抱くようになり、
次第に関係が
疎遠になってしまうこともあるでしょう。
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親が子どもに「味方になってほしい」
「配偶者の悪口を聞いてほしい」
と求める行為は、
子どもの健全な成長を妨げ、
将来的にさまざまな心理的な問題を
抱えるリスクを高めます。
本来、
子どもは父親も母親も愛しています。
しかし、一方の親が
もう片方の親を執拗に否定すると、
「どちらも好きなのに、
どちらかを嫌わなければいけないのか」
という深い葛藤が生まれます。
この状態が続くと、
子どもは自分の本心を素直に表せなくなり、
自分の感情がどこにあるのか
わからなくなってしまうこともあります。
親同士の争いを
日常的に聞かされるうちに、
子どもは「自分の存在そのものが
拒否されているような感覚」に陥ることもあります。
一方の親がもう一方を悪く言うと、
子どもにとっては
「自分の一部を否定されている」
と感じることがあるからです。
また、否定的な言葉を
聞かされ続けることで、
子どもは影響を受け、
「お父さんはひどい人なんだ」
と思い込んでしまうこともあります。
本当は嫌いではないはずなのに、
知らず知らずのうちに
嫌悪感を抱くようになり、
やがて関係が悪化してしまうのです。
さらに、親に言われるまま
感情を同調しすぎると、
自分の本心がわからなくなるだけでなく、
「他人の顔色をうかがうことが当たり前」
になってしまうこともあります。
その結果、社会に出たときに
人間関係を築くのが難しくなったり、
過度なストレスを
感じやすくなったりするのです。
長期的には、うつ病や不安症などの
精神的な問題に苦しむリスクが高まる
とも指摘されています。
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夫婦間のトラブルは、本来
大人同士が向き合って
解決すべき問題です。
どんなにつらくても、その感情を
子どもにぶつけることで得られる安心感は
一時的なものであり、
問題の解決にはなりません。
それどころか、
子どもに計り知れない負担を
与えてしまいます。
では、親として
どのような行動を
取るべきなのでしょうか?
たとえ感情的になってしまったとしても、
まずは当事者同士で
解決する姿勢を持つことが大切です。
「子どもは関係ない」という
明確な境界線を引き、
決して子供を
巻き込まないようにしましょう。
もし夫婦での話し合いが難しい場合は、
友人やカウンセラー、心理士などの
専門家に相談するのも一つの手段です。
大人の問題は大人の間で解決し、
子どもには安心できる環境を
提供する意識を持つことが重要です。
子どもは決して「親のカウンセラー」でも
「味方として利用する存在」でもありません。
子どもには
子どもなりの世界観や感情があり、
それを守ることが
子どもの健全な成長につながります。
もし愚痴をこぼしたくなったら、
子どもではなく、別の方法で
気持ちを整理したほうがよいでしょう。
たとえば、紙に書き出したり、
大人の友人に話を聞いてもらったり、
趣味を楽しむ時間をとり、
リフレッシュするのも有効です。
大切なのは、自分の感情を整理し、
吐き出す場所を
子ども以外に見つけることです。
そうすることで、子どもを精神的な負担から
守ることができるでしょう。
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もしあなたが
子どものころから
親の愚痴の聞き役をしてきた、
片方の親の悪口に巻き込まれ、
自分の本心がわからなくなってしまった
という立場なら、これからは
次のステップを意識してみてください。
親が「あの人はひどい」
「あの人のせいで私はつらい」
と言い続けてきた場合、その感情を
あなたが無意識のうちに
背負ってしまっているかもしれません。
一度立ち止まり、
「本当は自分はどう感じているのか?」
と自分自身に問いかけるとよいでしょう。
夫婦の対立は、
本来親同士の問題です。
子どもであるあなたが
背負う必要はありません。
「これは親の課題であり、
自分の課題ではない」と気づくことが、
心理的な負担を軽くする
第一歩になるでしょう。
長年にわたり
親の感情に巻き込まれてきた人は、
自己肯定感が低下しやすく、
過度な緊張や不安を抱えやすい
傾向があります。
そんなときは、
カウンセラーや臨床心理士などの
専門家に相談することで、
自分の心を整理して、
回復がスムーズに進むケースも
少なくありません。
親を助けたい、
親を楽にしてあげたいと思う気持ちは、
とても優しいものです。
しかし、あなたの人生の主役は
あなた自身です。
自分が本当に望んでいることや、
どんな生き方をしていきたいのかを
考えてみましょう。
そこに罪悪感を抱く必要は
まったくありません。
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この記事では、
「夫婦仲が悪くなっても、
子どもにSOSを出すのは避けよう」
という内容をお伝えしました。
親が苦しさのあまり
子どもに訴えかけると、
子どもは自分の気持ちを押し殺してでも
親を助けようとします。
しかし、それは子どもにとって
大きな心理的負担となり、
将来的に心の問題を
抱えてしまうことも少なくありません。
親として大切なのは、
夫婦間の問題を子どもに押しつけず、
大人同士で解決を模索することです。
どうしても難しい場合は、
信頼できる友人や
専門家に相談することを
検討するとよいでしょう。
子どもとは別の方法で、
自分の感情を整理する手段を
見つけることが重要です。
子どもはあくまでも子どもであり、
親のカウンセラーや味方になることを
求められるべきではありません。
もし今、夫婦関係の問題に苦しみ、
「子どもに負担をかけているかもしれない」
と感じたなら、一旦立ち止まり
「子どもは子どもであり、
親の感情を受け止める役割を担う
存在ではない」
という事実を思い出してください。
子どもを巻き込まず、
外部の助けを求めることは、
決して弱さや恥ずかしさではありません。
子どもの健やかな成長、
そしてあなた自身の
心の健全さを守るためにも、
勇気を持って
一歩踏み出してみてください。
また、もしあなたが
子どもの立場で長年苦しんできたのなら、
これまで無意識のうちに背負ってきたものを、
少しずつ手放していくことを
意識してみてください。
そして、これからは
「自分の人生を、自分らしく生きていく」
ことを大切にしてほしいのです。
親の問題に振り回されるのではなく、
自分の気持ちや願いに耳を傾けることが、
新たな一歩につながります。
無理をせず、自分のペースで
専門家の力を借りたり、
信頼できる人に相談したりしながら、
よりよい未来へ向かって
歩んでいきましょう!