Categories: 親子関係

子どもの感情に寄り添う:励ましの言葉が持つ意外な落とし穴

子どもが悲しんだり、
がっかりしているとき、
親は子どもを励ますため、
慰めや励ましの言葉をかけがちです。

この行為は、
子どもが早く立ち直ることを願う、
親の愛情深い気持ちから来ています。

しかし、
意外なことかもしれませんが、
これらの温かみのある言葉が、
ときには子どもの心を
傷つけてしまう可能性があるのです。

この記事では、
そのようなことが発生する理由と、
励ましや慰めに代わる、
子どもに向けるべき
望ましい言葉について
考えてみたいと思います。

====

子どもを傷つける情緒的な見捨てられ体験とは?

私たちは日々、
多様な出来事に遭遇し、
喜びや悲しみ、落胆や不安など、
さまざまな感情を経験します。

これは大人にも子どもにも
共通することでしょう。

喜びやワクワク、幸せなどの
ポジティブな感情は、
私たちにとって心地よいものであり、
自然と受け入れやすいです。

しかし、悲しみや悔しさ、
不安、落胆などのネガティブな感情は、
受け止めがたく、
避けたり、抑圧したり、
見て見ぬふりをすることも
少なくありません。

そのため、
子どもががっかりしたり、
悲しんでいたり、
怖がっていたりするときには、
親としては、子どもが
その感情に苦しまずに済むよう、
励ましの言葉をかけたり、慰めたり、
安心させようとすることもあるでしょう。

一見、子どもへの
思いやりのある行為に映りますが、
ときにはこれらの言葉が
子どもをさらに傷つける原因
となることもあるのです。

では、なぜ
そうなのでしょうか?

その理由は、
子どもが自らの感情を
親に認めてもらえないと感じたとき、
情緒的な「見捨てられ体験」
をしてしまうからです。

辛いとき、恥ずかしいとき、悲しいときに、
その感情を抱える
自分自身が無視されてしまい、
見捨てられたかのように
感じることもあります。

この体験は、子どもにとって
とても苦痛なものです。

親は子どもを傷つける意図は
まったくありません。

むしろ、子どもを励ますことで、
子どもをより良い方向へ導こうと
しているわけですが、
その励ましが逆に子どもの心を重くし、
気持ちを沈めてしまうこともあるのです。

====

情緒的な見捨てられ体験が及ぼす悪影響

たとえば、
子どもが恐怖を感じているときに
「大丈夫、大丈夫、怖くないよ」
と安心させようとする親の言葉や、

落胆しているときに
「落ち込まないで、元気を出して頑張って!」
と励ます言葉を聞いた子どもは、
自分のありのままの感情を
受け入れてもらえないと感じ、
悲しい気持ちになることもあります。

また、親から自分の恐怖や失望を
認めてもらえないと、
これらの感情自体が悪いものだ
と捉えてしまうようになるのです。

このような体験が繰り返されると、
成長して大人になったときにも、
自分がネガティブな感情を抱えることを
許せなくなる可能性が高いです。

言い換えると、
自己受容ができにくく、
自己肯定感を高めることも
困難になるのです。

感情を抑え込むことが習慣化すると、
ストレスやうつ病などの
精神的問題を引き起こす原因にも
なり得ます。

これらの問題により、
子どもは生きづらさを感じながら
人生を歩むようになることも
珍しくありません。

====

情緒的な見捨てられ体験を避けるために親ができること

それでは、子どもの
情緒的見捨てられ体験を防ぐには、
親はどうすればよいのでしょうか?

それは、子どもの心に自然と湧く感情を、
映し返してあげることです。

子どもが悲しんでいるときには、
「悲しいね」と共感の言葉をかけ、
何かを恐れているときには、
「怖いよね」とその感情を認め、
怒りを感じているときには、
「腹が立つよね」と
その感情を受け入れてあげるのです。

このように親が子どもの感情を
言葉で映し返してあげることで、
子どもは自分の感情に気づき、
「ありのままの自分が認められている」
という体験ができます。

この体験を子ども時代に
繰り返し経験することで、
大人になってからも
自分の感情を受け入れることができ、
自己受容がしやすくなるのです。

結果的に、自己肯定感も
高まるということです。

子どもが自己を確立する上で、
ありのままの自分を
認めてもらう体験は
とても大切です。

「ありのままの自分を認めてもらう」
とは、「自分が感じていることを
そのまま受け止めてもらう」
ということです。

この体験を通じて、
子どもの「自己」は成長し、
自分らしく生きられるように
なるのです。

親が子どもの感じていることを
そのまま受け止め、認めてあげることが、
子どもの成長にとって
重要な役割を果たす
と言ってもよいでしょう。

====

年齢に合わせた言葉の選び方

親が子どもに対して用いる
共感の表現は、
子どもの自立の度合いや
心の成熟度に応じて
変えるとよいでしょう。

ざっくりとした目安として、
子どもが幼児期にある場合は、
「悲しいね」「腹が立つね」というように、
一緒にその感情を感じて
同感するニュアンスを含んだ表現が
望ましいです。

小学生や中学生の年齢になると、
「悲しいんだね。そりゃ悲しいよね」
「腹が立つんだね。そりゃ腹も立つよね」
というように感情を認め、
その感情をサポートするニュアンスを
つけ加えるとよいでしょう。

10代半ば以降の青少年に対しては、
「悲しいんだね」「腹が立つんだね」といった、
やや距離感を持たせた共感の表現が
適している場合が多いです。

しかし、これには
厳密なルールは存在せず、
子ども一人ひとりの個性に
合わせたアプローチが必要です。

親としては、
さまざまな表現を試みながら、
子どもにとって最も心地よい
と感じる共感の仕方を
見つけ出すことが重要です。

====

心を癒す歩み

子どものころ
情緒的見捨てられ体験を
たくさんしてきた大人の場合、
自己受容に苦労することも
あるかもしれません。

自分の心の成熟度が低くて、
心の器が小さい
と感じることもあるでしょう。

しかし、心配する必要はありません。
今からでも改善できる方法が
あるからです。

情緒的な見捨てられ体験によって
傷ついた心は、
受け入れられる体験を積み重ねることで
癒されていくものです。

自己に対する共感の言葉を
繰り返すことで、
心の傷は徐々に癒され、
自己の確立につながるでしょう。

自分が悲しみを感じたとき、
「大丈夫だよ、
悲しむ必要はないよ」
などど感情否定をするのではなく、

悲しみをしっかりと認めて、
「悲しいんだね。それは悲しいよね
悲しみを感じてもいいんだよ」と
優しく自分自身に
ささやきかけてあげることです。

これは、自分自身への
映し返しを行う作業です。

この作業を意識して
今後は繰り返してゆきましょう。

ただし、悲しみが深くて
悲しみを感じるのが辛すぎる場合には、
無理に悲しみを
受け入れようとする必要はありません。

それよりも自分自身に
「大丈夫だよ、大丈夫」と言ってあげ、
悲しみに直面しないようにしたり、
気分転換を行うことがおすすめです。

====

まとめ:情緒的見捨てられを防ぐために

今回は、子どもが落ち込んでいるときや
悲しんでいるときなど、
ネガティブな感情を抱えている際に、
それを否定せずに
そのまま受け止めることの
重要性についてお話ししました。

そうすることで、子どもの
情緒的見捨てられ体験を
防げるからです。

親は子どもが心の中で
感じていることを、
鏡のように映し返してあげます。

子どもが悲しんでいるときには
「悲しいね」と共感し、
何かを恐れているときには
「怖いよね」と声をかけ、
怒りを感じているときには
「腹が立つよね」と
ありのままの感情を
認めてあげることが大切です。

このように親が子どもの感情を
映し返すことで、子どもは
「ありのままの自分を認めてもらえた」
と感じることができ、
自己受容の力を育んでいきます。

自分自身を
ありのままに認めてもらう体験は、
子どもが自己を確立していく上で
非常に重要です。

これは、自分が感じていることを
そのまま認めてもらうこと
を意味しています。

この体験を通じて、
子どもの「自己」が成長するのです。

幼少期に情緒的に
見捨てられた体験をした大人は、
自己受容を育むことが
難しい場合がありますが、

自分自身に向けて
映し返しを行うことで
改善することが期待できます。

悲しいときには
「悲しいよね、悲しんでいいんだよ」と、
自分自身に優しく
語りかけてあげましょう。

自分や子どものありのままの感情を
そのまま受け入れてあげ、
自分自身や子どもの
自己受容力を育み、
自己肯定感を高めてゆきましょう!