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その愛情、子どもの幸せを妨げていませんか?

親として
子どもを愛するがゆえに、
常に守り、導き、
支えようとする気持ちを持つのは
自然なことでしょう。

しかし、
その愛情表現が行き過ぎると、
子どもの自己受容力や
自己肯定感の発達を妨げ、
将来の幸福に深刻な悪影響を及ぼす
可能性があります。

この記事では、
過保護・過干渉による弊害と、
親が気をつけるべきポイントについて
考えていきます。

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愛情のつもりが子どもの幸せを遠ざける

多くの親は、
子どもを心から愛し、
子どもの幸せを願っています。

子どもが傷つかないように、
失敗しないように、
苦労しないようにと、
先回りして手助けをしたり、
アドバイスをしたりすることも
あるでしょう。

また、子どもが困っていると、
助けたくなるのは当然のことです。

これらは自然な
愛情の表れと言えるでしょう。

しかし、親の愛情が行き過ぎて
過保護や過干渉になってしまえば、
皮肉にも、子どもの幸せを
妨げる要因になりかねません。

なぜなら、
過保護・過干渉な環境で育った子どもは、
あるがままの自分を受け入れにくくなり、
自己肯定感が低くなる傾向があるからです。

子どもが
自分らしく幸せに生きるためには、
等身大の自分を受け入れ、
認めてあげることが不可欠です。

つまり、自己受容ができ、
自己肯定感が高いことが、
子どもの幸せにつながるのです。

親が子どもに良かれと思ってした
過保護・過干渉の行為が、
結果として
子どもの自己受容力を妨げ、
自己肯定感の低い大人に
成長させてしまうことも
珍しくありません。

その結果、
幸福から遠ざかってしまうのは、
非常に残念なことでしょう。

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自己受容の重要性とその欠如がもたらす影響

自己受容とは、自分自身の
良い面・悪い面、
強み・弱みもすべてひっくるめて、
等身大の自分を認め、受け入れることです。

この自己受容が
人生の幸福度に大きく影響することは、
心理学の研究でも
明らかになっています。

まず、自己受容ができないと
どのような弊害があるのかを
考えてみましょう。

自己受容ができない人には、
いくつかの特徴があります。

まず、自分に自信を持てず、
常に自分の価値を疑い続けます。

周囲の言葉や態度に
必要以上に傷つきやすく、
些細な批判にも
大きく動揺してしまいます。

他者からの評価に過度に敏感で、
自分の行動や選択の基準が
「人からどう見られるか」
になってしまうのです。

また、自分を厳しく責める傾向が強く、
小さなミスも
自分を責める材料になりがちです。

自分の気持ちや意見を
素直に表現することが難しく、
周囲に合わせて
我慢することも多くなります。

将来に対しても不安を強く感じやすく、
悲観的な考えに
支配されやすいのも特徴です。

完璧主義の傾向があり、
できなかったことや
うまくいかなかった部分にばかり目が行き、
小さな成功や成長を
認めることができません。

このような状態では、
心の疲弊を招き、
人間関係や仕事、
そして人生全般での満足度を
著しく低下させてしまうでしょう。

一方、自己受容力がある人は、
どのような自分であっても、
自分には価値があると認識しています。

他者の言動に振り回されにくく、
自分の軸をしっかりと持っています。

人からの評価も参考程度に捉え、
最終的な判断基準は
自分の内側にあります。

自分の欠点や失敗に対しても、
過度に自分を責めることなく、
「人間だから当然」
と受け止めることができます。

自分の気持ちや意見を
率直に表現でき、
必要なときには「ノー」と言える勇気も
持っています。

不安を感じても
肯定的な考えが優位に立ちやすく、
前向きに対処しやすいのです。

完璧を求めすぎることもないため、
心の余裕も持っています。

自己受容ができている人は、
ありのままの自分にOKを出せるため、
人間関係も自然で
健全なものになりやすく、
人生の満足度も高くなる傾向にあります。

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理想的な親子関係と現実のギャップ

子どもを
幸せな人間に育てたいのなら、
自己受容力を育むことは
欠かせません。

では、子どもの自己受容力を養い、
自己肯定感の高い人間に
育てていくためには、
親はどのような姿勢で
子どもに関わればよいのでしょうか?

理想的な関わり方は、
子どもがどのような感情を抱いていても、
ありのままを無条件に
受け入れてあげることです。

「あなたは
あなたの感じていることを
大切にしていいんだよ」
「イヤなときには
イヤと言っていいんだよ」というメッセージを、
言葉と態度で示していくことが大切です。

このような姿勢で
親に接してもらった子どもは、
自分の感情や考えを
自由に表現しながら、
自分らしく成長していきます。

そして、やがては
親の受容的な態度を内在化し、
自分の心の中にも
受容的なインナーペアレント(内なる親)
を育んでいきます。

心の中の内なる親が
受容的であればあるほど、
どのような自分にも
OKを出しやすくなり、
ありのままの自分を認めることが
できるようになるのです。

つまり、自己受容力が育ち、
自己肯定感が高くなるということです。

とはいえ、現実には、常に受容的に
子どもに接することができる親は、
ほとんどいないでしょう。

親も生身の人間ですから、
疲れていたり、イライラしていたり、
自分自身の問題を
抱えていることもあります。

自分自身の不安や社会的なプレッシャー、
あるいは育った環境の影響から、
無意識のうちに子どもに対して
条件付きの愛情しか与えられないことも
少なくありません。

常に理想的な態度で
子どもに接することは、
やはり簡単ではないのです。

そのため、
子どもの心の中に育つ内なる親も、
自分自身に対して
条件付きの愛情しか
与えられないようになってしまうのも、
無理のないことだと言えるでしょう。

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受容されない体験としての過保護・過干渉

ここでは、子どもが
受容されない体験をする典型例として、
過保護・過干渉な親の姿勢について
考えてみます。

過保護・過干渉は、一見すると
深い愛情の形に
見えるかもしれませんが、
子どもには
「そのままの自分では受け入れられない」
というメッセージとして伝わってしまいます。

では、具体的にどのような行動が
過保護・過干渉にあたるのでしょうか?

「ヘリコプターペアレント」
という言葉があります。

これは、常に子どもの上空を
旋回するヘリコプターのように、
子どもの行動を監視し、
何か問題が起きそうになると
即座に介入する親を指します。

たとえば、子どもが
友達とのトラブルを経験したとき、
すぐに親が間に入って
解決しようとするケースなどが
これにあたります。

また、「カーリングペアレント」
という表現もあります。

カーリング競技で
選手たちが石の進路を掃除するように、
子どもの前に立ちはだかる障害や困難を、
親が先回りして
取り除いてしまう様子を表しています。

たとえば、
子どもが宿題を忘れたときに、
親が代わりに学校へ届けるような行為が
これにあたります。

過干渉の例としては、
子どもの選択や決断に常に口を出す、
子どもの行動を細かく指示する、
子どもの持ち物や服装を親が決めてしまう、
といった行動が挙げられます。

また、「あなたの人生だから
あなたが自由に決めていいよ」と言いながら、
親の希望と異なる選択をしたときに
不機嫌になったり、
悲しそうな表情を見せたりして、
間接的に子どもを
コントロールしようとするケースもあります。

これらの行動は、たとえ親が
「子どものため」と思っていたとしても、
子どもにとっては
「自分の感情や判断は信頼されていない」
「親を心配させない、
喜ばせる子どもでなければ
受け入れられない」というメッセージとして、
子どもの心に刻まれていくのでしょう。

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なぜ過保護・過干渉が子どもの自己受容を妨げるのか?

過保護・過干渉な親の態度が
なぜ子どもの自己受容を妨げるのか、
そのメカニズムを理解することは
とても重要です。

過保護な親は、
子どもが傷つかないように、
失敗しないように、
不快な感情を経験しないようにと、
常に先回りして手を打ちます。

しかしこれは逆説的に、
「傷つくあなたは受け入れられない」
「失敗するあなたの姿は見たくない」
「ネガティブな感情を
表現するあなたは困る」
といったメッセージとして
子どもに伝わってしまうのです。

子どもは
こうしたメッセージを無防備に受け取り、
「親を安心させる
子どもでなければならない」
「ネガティブな感情や失敗は
避けるべきものだ」という信念を
内在化していきます。

そして、この内在化された
親のメッセージが、やがて
子どもの心の中の内なる親となり、
自分自身を評価・判断する
内的な声へと変わっていくのです。

過干渉な親の場合は、
子どもが自分と他者との間に
「境界線」を引くことを妨げます。

健全な境界線があってこそ、
人は「これが私だ」という感覚を持ち、
自己を確立することができます。

しかし過干渉な親は、
子どもの境界線を尊重せず、
子どもの人生や選択に
踏み込んでしまいます。

その結果、
子どもは自分の意思や感情よりも、
親の期待や反応を
優先するようになります。

「自分の好みで選ぶ」
「自分の感じ方を大切にする」
「自分で考えて決める」
といった経験が不足するため、
自分自身への信頼や自信が育たず、
親以外の人たちからも、
自分の領域に侵入されやすくなるのです。

問題なのは、親も子どもも
このことを自覚していないことが
多いという点です。

親は純粋に「子どものため」
と思って行動しており、
子どもも「親は私のことを
心配してくれている」と受け止めます。

この無自覚さゆえに、
問題の根本的な解決が
難しくなってしまうのでしょう。

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親ができる、本当のサポートとは?

では、この望ましくない状態から
抜け出すために、
親は何を心がければよいのでしょうか?

まず大切なのは、過保護・過干渉が
子どもの自己受容力を妨げ、
自己肯定感を低下させてしまう仕組みを、
親自身がしっかりと理解することです。

子どもが傷つかないように、
失敗しないように、
不快な感情を抱かないようにと
先回りするのではなく、
失敗やつまずきも成長の大切な一部だ
と捉える視点を持つことが大切です。

失敗は「してはいけないこと」ではなく、
「乗り越える力を育てるための
貴重なチャンス」なのです。

子どもは、ミスや失敗、
思い通りにいかない経験を通して、
ネガティブな感情を
抱くこともあるでしょう。

それはごく自然なことです。

そんなときこそ、
子どもが感じるままの感情を否定せず、
しっかりと受け止め、
寄り添うことが大切です。

「そんなふうに感じるのは当然だよ」
という一言や、受け入れる態度が、
子どもが安心して感情を
感じ取るための土台を築いていきます。

また、子どもが
ある程度の年齢に達したら、
親は意識的に
子どもの考えや意向を尊重し、
過剰に干渉しないよう
心がけることが求められます。

たとえ子どもの選択が
親の期待と異なっていたとしても、
それを否定せず、
一人の独立した人間として
認めてあげることが、
子どもの自己信頼と自立を育んでいくのです。

宿題の出来ばえや友人関係、進路など、
本来は子ども自身が責任を持つべき領域に、
親が過度に踏み込まないことが大切です。

子どもは自分の課題に向き合い、
親もまた自分自身の課題に向き合う――
そんなふうに境界線を意識して守る姿勢が、
子どもの自立心を育てる
大きな支えとなるでしょう。

もちろん、
親だって完璧ではありません。

ときには不安から干渉しすぎたり、
過保護な行動を取ってしまうことも
あるかもしれません。

そんな自分に気づいたときは、
責めるのではなく、まずは自分自身の
素直な気持ちを認めてあげましょう。

そして、子どもを
一人の独立した存在として尊重し、
子どもが自分の課題に専念できるよう、
あたたかく見守っていきましょう。

親自身が自分を受容し、
自分の課題に取り組む姿を見せることも、
子どもにとって
かけがえのない学びとなるでしょう。

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まとめ:幸せな人間を育てるために

この記事では、
過保護・過干渉な親の態度が、
子どもの自己受容力や自己肯定感に
どのような影響を与えるのか
についてお伝えしてきました。

子どもを心から愛し、
子どもの幸せを願うからこそ、
つい過保護になったり、
過干渉してしまったりする――
そんな親の気持ちは
とてもよく理解できます。

けれども、その愛情が意図せず
子どもの心の成長を妨げ、
将来の幸福に影を落とす
可能性があることを、
まずはしっかりと認識することが大切です。

子どもが失敗したり、傷ついたり、
ネガティブな感情を味わったりすることも、
成長のためには
欠かせない貴重な経験です。

それらを無理に排除しようとせず、
見守る勇気を持ちましょう!

また、子どもの境界線を尊重し、
子ども自身が選び、責任を持つ機会を
積み重ねられる環境を整えることも、
とても大切です。

完璧な親など、どこにもいません。

時には不安から
過保護になってしまったり、
つい干渉しすぎてしまうことも
あるでしょう。

そんなときも、
自分を責めるのではなく、
自分自身が感じていることを受容し、
また新たな気持ちで
子どもと向き合っていけばいいのです。

子どもを信頼し、
ありのままの姿を受け入れることは、
ときに不安を伴うかもしれません。

それでも、それこそが
子どもの健全な自己受容を育み、
幸せな人生へとつながる
確かな道だということを、
どうか忘れないでください。

あなたの子どもが、自分を愛し、
自分の人生を自分らしく
歩んでいけるように、
今日から、できることから一歩ずつ、
始めてみませんか?