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褒めることが招く悪影響:子どもの健全な成長を考える

子どもを褒めることは、一見すると
ポジティブな行為のように思えますが、
慎重に行わなければ
思わぬマイナスの影響を
及ぼすこともあります。

この記事では、
子どもを褒めることで
生じ得る弊害に焦点を当て、
そのリスクを回避するための
具体的なポイントについて
考えてみたいと思います。

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褒めることによる弊害とは?

子どもを褒めることには、
いくつかの弊害があります。

まず、頻繁に褒められることで、
子どもは他人の評価や承認に
過度に依存するようになる恐れが
あります。

その結果、自分の価値を
他人の意見に委ね、
他人の基準でしか
生きられない人間に
成長する可能性があるのです。

褒められることに
大きな喜びを見出すようになると、
子どもの行動が
外部からの報酬に依存し、
「自分はどうしたい」という
内発的動機が低下する危険性も
高まります。

周囲の評価を得るための行動に偏り、
自分の興味や楽しさで
行動しなくなるでしょう。

つまり、自分軸ではなく、
他人軸で生きる人間を
作ってしまうことになります。

褒められる快感に酔いしれると、
褒められること自体が
目的となるリスクもあります。

そうなると、
確実で成功が見込めることには
積極的になりますが、
新しいことや挑戦に対して
消極的な姿勢を見せるように
なるでしょう。

失敗を恐れるあまり、
新しいチャレンジを避け、
子どもの潜在能力を発揮する機会も
奪われてしまうのです。

また、他の子どもと比較して
良い結果を出したときだけ褒め、
できなかったときには叱る
という対応をすると、
不健全な嫉妬心や競争心を
生む危険もあります。

失敗を
学びのチャンスとして捉えられず、
必要以上に落ち込んだり、
他人に対して嫉妬心を抱いたりして、
精神的にも不安定になりがちです。

常に自分と他人を
比較することによって、
自分が優位なときには優越感に浸り、
そうでないときには
劣等感に苛まれることになるのです。

自分自身の価値が不安定に感じられ、
安心感を得られなくなるでしょう。

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大人になっても続く褒めることの悪影響

褒めることによる弊害の怖さは、
その影響が
長期間にわたり続く点にあります。

子どもが成人してからも、
その影響を引きずることは
珍しくありません。

人は子どものころに
「このように生きていこう」
と無意識のうちに
基本的な生き方を形成します。

その生き方は、
親との関係性に強く影響されます。

そして、子どものころに
親との関係の中で身につけたことは、
大人になっても
持ち続けることが多いのです。

親との関係で身についた
対人関係のスタイルを、
大人になっても
他人との関係性に
適用することがよくあります。

もし子どもが
褒められることに依存してしまえば、
大人になっても
他人からの褒め言葉を
強く望むようになるでしょう。

そして、
他人を喜ばせるために
無理をして自己犠牲を
払ってしまうことも
少なくありません。

他人に喜んでもらうことで
自分の存在価値を感じ、
褒められることで
自己を肯定するようになるからです。

このような人は、
会社で同僚の頼みごとを
無理をしてでも
引き受けてしまいがちです。

同僚に喜んでもらうことを動機として
無理を重ねるのですが、
他人のために自己犠牲を払って
頑張り続けることで
心身の疲弊を招くことも
多々あります。

このような生き方を続けると、
自分がどうしたいのかという
内なる声に従うことが難しくなり、
他人からどう思われるかに
自分の行動が
左右されるようになるでしょう。

自分らしく生きることが困難になり、
他人軸で生きていくことになります。

他人のために尽くしても、
自分の心は満たされず、
結果として満足のいかない人生を
送ることになるでしょう。

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褒めることで子どもの自己肯定感は下がる!

褒めることによる弊害の一つとして、
子どもの自己肯定感を
下げてしまう点は見逃せません。

この影響は
子どもが大人になっても続き、
生きづらさを感じながら
生活することになるでしょう。

多くの親は、子どもが
学業やスポーツで優れた成果を上げたり、
望ましい行動をしたときに
褒めることが多いでしょう。

たとえば、
「100点を取ってすごいね」
「学年で一番なんて立派だね」
「お手伝いをしてくれて本当に偉いね」
といった褒め方です。

このように褒めることで、
子どものやる気を引き出し、
意欲的にさせたい
という意図があるのでしょう。

しかし、このような褒め方は、実は
子どもの自己肯定感を育む上で
非常に危険です。

なぜなら、褒められることが
条件付きであるため、
子どもは条件を満たさないと
自分は認められないと
感じてしまうからです。

望ましい行動をするたびに
褒められることで、
子どもは自分の価値を
条件を満たすことに依存するようになり、
常にその条件を
満たさなければならないという
プレッシャーを
感じるようになるでしょう。

しかし、子どもも人間ですから、
常に条件を
満たせるわけではありません。

うまくいかないときも
あるのが普通です。

そんなとき、
条件を満たせない自分はダメだ、
失格だと思い込んでしまい、
自分自身を
苦しめることになります。

褒められることに価値を見出し、
褒められない場合には
自分には価値がないと
感じてしまうのです。

そうなれば、
子どもの自己肯定感は
徐々に低下していくでしょう。

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どのようなことに気をつければよいか?

ここまでお話ししたように、
子どもを褒めることには
マイナスの影響もあります。

それでは、
これらの悪影響を防ぐためには、
どのような点に
気をつければよいでしょうか?

まず、
子どもが褒められることに依存し
他人軸で行動することを防ぐためには、
親が一方的に褒めるだけでなく、
「あなた自身はどう感じるか」
と子ども自身に考えさせる機会を
作ることが大切です。

子どもが自分の行動や成果について
振り返るような問いかけをして、
自分で評価する力や
考えて工夫する力を育てましょう。

たとえば、
「今日は何がうまくいったと思う?」とか、
「どこをもっと工夫できるかな?」
といった問いかけをするのです。

また、子どもが自分の意見や考えを
表現できる機会を
積極的に作りましょう。

家族の話し合いや
学校のプロジェクトなど、
子どもが自分の意見を言える場面を
増やすことが大切です。

褒めることと同じくらい、
建設的なフィードバックも重要です。

失敗やミスを悪いことと捉えず、
学んで成長するチャンスだ
と教えてあげましょう。

子どもが失敗したときには
叱ったり、がっかりした表情を
見せることはなく、
次回はどうすれば失敗しないか、
どうすればうまくいくかを
一緒に考えてあげるとよいでしょう。

結果だけに
焦点を当てるのではなく、
行動のプロセス自体を大切にし、
そのプロセスで学びながら
楽しむことを促してあげましょう。

さらに、他の子どもとの比較は避け、
その子自身の成長や進歩に
焦点を当てます。

「○○ちゃんは
もっと上手にできるのに」
といった発言は禁物です。

その代わりに、
「前よりも上手になったね」
と進歩を認める言葉を
かけてあげるのです。

子どもの
自己肯定感を高めるためには、
親が子どものあるがままを
受容することが求められます。

具体的には、
子どもがどのような感情を抱いていても、
その感情をそのまま受け入れることです。

悲しみや失望、孤独、恐怖、
不安などのネガティブな感情も、
悪いこととみなさずに
受け入れてあげる姿勢が大切です。

たとえば、
がっかりしているときには
「そりゃ、がっかりするよね」と、
悲しいときには
「そんなことがあれば悲しいよね」と、
怖いときには「怖いよね」といった具合に、
子どもの感情を否定することなく
受容してあげましょう。

親から自分の感情を
受け入れられる体験を重ねることで、
子どもは自分がどのような状態でも
受け入れられる価値がある
存在だと感じるようになります。

そして、「自分は今のままでよい」
と思えるようになるのです。

これこそが「自己肯定感」を育む上で
不可欠な要素です。

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まとめ

この記事では、
子どもを褒めることによって生じ得る
弊害について解説しました。

褒めることが引き起こす問題には、
以下のようなものがあります。

まず、子どもが他人の評価や承認に
過度に依存するようになり、
自分の価値を他人の意見に
委ねてしまう危険があります。

褒められることに
大きな喜びを見出せば、
子どもの内発的動機が低下し、
自己判断で行動することが
困難になるでしょう。

結果的に、他人軸で
生きるようになってしまいます。

また、
褒められること自体が目的になり、
失敗を恐れて
新しい挑戦を避けるようになる
リスクもあります。

他の子どもと
比較されて褒められれば、
不健全な嫉妬心や競争心が生まれ、
精神的な安定を失うことも
考えられます。

さらに、褒めることが
子どもの自己肯定感を
下げてしまう危険も見逃せません。

これらの影響は、
子どもが小さいころだけでなく、
大人になってからも続く
可能性があるのです。

このような弊害を防ぐためには、
いくつかのポイントを念頭に置き、
子どもに接するとよいでしょう。

まず、親は
子どもが自己評価を育むために、
「あなた自身はどう感じたか」と問いかけ、
子どもが自分の行動や成果を
振り返る機会を作ってあげます。

さらに、子どもが自分の意見や
気持ちを表現できる場を増やし、
内発的動機を高めることも大切です。

建設的なフィードバックを行い、
失敗を学びの機会と捉える姿勢を
教えることも欠かせません。

成功や失敗の結果だけでなく、
行動のプロセスを重視し、
その過程での学びや楽しさを
教えてあげるとよいでしょう。

他の子どもと比較するのではなく、
子ども自身の進歩や成長に
焦点を当てることも重要です。

親は、
子どもの感情をそのまま受け入れ、
自由に表現できる環境を
整えてあげることが求められます。

これにより、子どもは
どのような感情を抱いても
受け入れられる存在だと感じ、
自己肯定感が育ちます。

これらのことを実践するのは
容易なことではありませんが、
親として心に留めておくと、
子育ての助けになるでしょう。