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愛と規律:子どもの健やかな成長に必要な母性と父性

今回は、
子どもが健やかに成長するためには、
「母性」と「父性」の両方が
必要であるという話をします。

「母性」と「父性」が
具体的にどのようなものか、
そして、なぜ
「母性」と「父性」の両方が
子どもの健全な成長に必要なのか、
その理由を心理学の視点から
考えてみたいと思います。

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母性と父性の役割とは?

まずは母性と父性が
どのようなものかを
明確にしましょう。

母性とは、子どもを慈しみ、
育てる心のことを指します。

母性の機能は子どもを包み込み、
一体感をもたらし、
融合する意味合いがあります。

具体的には、子どもに共感し、
受容的な姿勢で接し、
子どもを優しく、
温かく包み込むことです。

子どもが
どのような状態であっても、
子どもの存在自体を
無条件に受け入れることが
理想的な母性とされます。

一方、父性とは、
「区別する」「切り分ける」「境界を設ける」
機能のことを言います。

父性は「受け入れ可能なこと」と
「そうでないこと」を見極め、
それを子どもに明確に伝えます。

「できること」と「できないこと」、
「やってよいこと」と
「やってはいけないこと」をはっきりさせ、
子どもに規律を教えます。

また、自家のルールを子どもに示し、
それに従うよう導くことも
父性の大切な役割です。

父性という言葉から「厳格さ」
を連想するかもしれませんが、
必ずしもそうではありません。

確かに、状況に応じて
厳しい態度で接する必要が
ある場合もありますが、
一般的には子どもに優しく
理解を促すことが理想とされます。

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母性と父性を深堀してみよう!

母性とは、子どもを無条件で
受容することに他なりません。

しかし、これは
子どもの欲求に無条件で応え、
子どもの言う通りに
行動することを
意味するわけではありません。

子どもがどのような状態であっても、
子どもの存在自体を
温かく受け入れる姿勢が
求められるのです。

具体的には、
子どもが抱くあらゆる感情に対して
共感し、受容してあげます。

たとえば、
「悲しんだね」
「悔しい思いをしているんだね」
「怒っているんだね」
「許せないんだね」
などという形で、子どもの感情を
そのまま受け止めることです。

一方で、子どもが実際に望むこと、
欲するものに対する対応は
状況に応じて変わるべきです。

父性は、
子どもが何かを欲しいと言ったとき、
それに応じるのが適切かどうかを判断し、
適切な場合は応じますが、
そうでない場合は
「残念だけどそれはできないよ」と
しっかりと伝える役割を担います。

母性により、子どもの感じること、
感じたことを受け入れつつも、
子どもの行動に対しては、
その都度、それが適切かどうかを判断し、
子どもに伝えることが
父性を発揮することだ
と言えるでしょう。

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子どもが欲しがる玩具を買ってあげられないケース

子どもがある特定の玩具を
強く欲しがる状況を
想像してみてください。

「ママ、この玩具買って!
クラスで流行っていて、
持ってないと
みんなの話についていけないの」
と子どもが訴えてきたとします。

しかし、その玩具は高価であり、
家計を考えると
購入することが難しい状況です。

このようなとき、
「ママとパパでよく話し合った結果、
今はその玩具を
買うことはできないんだ。
でも、どうしても欲しいのなら、
自分でおこづかいを貯めてみるのもいいね」
と伝えることで、親はきちんと
父性を発揮していると言えます。

その上で、「でも、その玩具が
クラスで流行っているから、
持っていないと話に入りにくいよね。
そういう気持ち、辛いよね」と
しっかりと子どもの感情を受け止め、
共感することができれば、
母性の側面も
見せていることになります。

このシナリオでは、子どもは
「欲しいものを手に入れられない」
という悔しい経験をしますが、
親からの理解と共感を得ることで、
「自分の気持ちが大切にされている」
という感覚も同時に経験できるのです。

子どもの意識レベルでは、
「買ってほしいものを買ってもらえない」
という悔しい思いをしていますが、
子どもの無意識レベルでは、しっかりと
「どこまでも自分の気持ちを受容してもらう」
という体験をしているため、
これが子どもの自尊心を育むのに役立ちます。

同時に、
子どもは思い通りにならないことへの耐性を
強化することが可能となるわけです。

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父性と母性を両方発揮できれば、なぜ子どもにとって良いのか?

ではなぜ子どもにとって、
適切に母性と父性を
受けることが重要なのでしょうか?

それは、子どもが自分の感情を
受容される体験を積むほど、
心が満たされ、それによって
安定した心の基盤が
築かれるからです。

この堅固な基盤があれば、
自己肯定感も高まり、
精神的な安定も得やすくなります。

逆に、幼少期に親から
自分の感情を
受け入れてもらえない経験が続くと、
心の基盤が脆弱になりがちで、
大人になっても
自己コントロールが難しかったり、
他人への過度な依存を
生じやすくなります。

自己受容が困難になり、
自己肯定感も低くなりがちで、
人間関係で苦労することも
珍しくありません。

結果として、生きづらさを感じながら
生きることになるのです。

理想としては、子どもが自分を
存在レベルで
受け入れてもらえる体験と同時に、
行動レベルについては、
思い通りにならない経験も
適度に積むことが望ましいです。

このような経験を通じて、
子どもは自尊心を養うと同時に
思い通りにならない状況への耐性が、
育っていくからです。

子どもは
「私の気持ちを理解してほしい」
という願いを適切に表現し、
それを満たされる経験をすることが
大切です。

それと並行して、
行動に関する欲求は
常に満たされるわけではない
という経験も必要で、
このような経験を通じて、
感情のコントロールを学び、
思い通りにならない状況への適応力を
高めていくのです。

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母性と父性のまとめと注意点

今回は、子どもの健やかな成長には
母性と父性の両方が
不可欠であることをお話ししました。

心理学の観点では、
母性とは子どもを慈しみ、
共感・受容する心であり、
子どもを優しく
包み込むことを意味します。

一方、父性は、子どもに
「やってよいこと」と
「やってはいけないこと」をはっきりと教えて、
適切な行動を促す役割を持ちます。

母性によって
子どもの感情は無条件で受け入れられ、
父性によって子どもの行動は
適切な方向へ導かれます。

母性や父性という言葉から、
母性は母親が、父性は父親が
担うものだと考えがちですが、
実際にはそうではありません。

母親が父性を、
父親が母性を発揮しても
よいのです。

理想は、両親が状況に応じて
母性と父性のどちらも
適切に発揮することです。

一人親家庭の場合、
子育ての全責任を
一人で担うのは大変ながら、
母性と父性の両方を
子どもに提供できれば理想的です。

親は「良いこと」と「悪いこと」
を明確に区別し、
それを子どもに教える必要があります。

同時に、子どもが失望したり、
悲しんだり、ネガティブな感情を
抱えていたとしても、
その感情を受け入れ、
温かく包み込んであげることが大切です。

これは、口で言うほど
実践するのは
簡単なことではないでしょう。

親も一人の不完全な人間
にすぎませんので、いつでも適切に
母性と父性を完璧に
発揮できるとも限らないでしょう。

しかし、それでも、
このことを念頭に置いて、
子どもの健全な発育のため、
母性と父性を発揮できるように
目指すとよいでしょう。