日本とニュージーランドの両国に暮らして、生活習慣や考え方の違いを経験する中、いろいろ考えさせられることが多い。その中の一つに「親子関係」がある。両国の親子関係の違いを一言で表せば、日本の親子関係は「ネバネバ」していて、ニュージーランドのものは「サラサラ」と表現できる。

これは、私個人の肌感覚であり、正しいかどうかは分からない。私自身や、私の友人、知人を通して経験したことを、自分の知る範囲内で語っているだけだ。また、「日本人だから、~である」というように、すべての日本人を一括りにして、ステレオタイプ的に扱うのは適切ではない。あくまでも、私個人の意見として聞いて欲しい。

先日、私はニュージーランド人の友人と、彼女のお母様と3人でお茶をした。私がニュージーランドに来た当時のことを話したら、面白い会話が始まった。

私は20代半ばに留学生として、この国で生活し始めた。本当は、もっと早くに海外に出たいと思っていたが、両親からの反対が強くて、なかなか実行できなかった。長年、両親に海外行きを認めて貰いたく、何度も説得を試みたが、いつも応えは「ダメ、ダメ、絶対にダメ」。それでも、私は諦めず、何年も言い続けて、やっと自分の夢を叶えることができた。

その話を友人のお母様・キャロラインが聞いた時、彼女は不思議そうに言った。「なぜ、両親からの許可がいるの? 20代半ばでしょ。もう、子供ではないのだから、親の許可というのは変な話ね」と。キャロラインにとっては、成人年齢に達した私が、両親の許可なしに海外に出れなかったことは不可解だった。

20年以上もニュージーランドに住んでいる私は、この国の人々の考え方に大分慣れてきたと思う。確かに、キャロラインがそう考えるのも理解できる。しかし、留学した当時の私は、親の許可なしには、絶対に自分の海外行きは不可能だと信じていた。

日々、生活していて、私が感じることは、ニュージーランドでは、小学生、中学生の場合は親の方針に従わせるが、子供が18歳を過ぎたあたりから、親は子供の意向を尊重する傾向にあるということ。

私の夫の例を挙げれば、彼は29歳になるまで、就職しなかった。農場でアルバイトをしながら、大学のコースを次から次へと取り、就職することを考えなかった。彼の母は、そんな息子の生き方に、賛成できなかったようだ。大学で勉強することは悪いことではないが、いつまでも就職しない息子を見て、心配した。「そろそろ就職した方がいいんじゃない?」とアドバイスしたことがあるそうだ。

しかし、だからと言って、それに従わない息子に文句を言ったり、何度も同じことを言い続けることはなかったとのこと。息子の生き方を母自身は賛成できなくても、息子はもう子供ではない。成人した人間なのだから、親が息子に指示する立場ではないと考えたようだ。

夫の母と、私自身の両親の、子供に対する姿勢を見ると、その違いは非常に大きい。いくら自分の子供でも、成人した子供のやることに、あれこれ干渉して、口うるさく自分の価値観を押し付けることがなかった、夫の母。こういう親子関係を見ると、「ステキだな」と私は思う。

それに対して、私の両親が私に対してしたことは、私の人生の設計にイチイチ口出しをして、文句を言ったこと。「海外旅行はいいけれど、長期の海外生活はダメ」「結婚相手は、絶対に日本人でなければダメ」「独立した時、住むところは日本でなければダメ」等々、私は親から「~するべきではない」「~でなければいけない」と色んなことを言われた。当時の私は、成人年齢をとっくに過ぎているのに、「海外行を両親から許可されない」とずっと嘆いていたのだ。

私が感じる、日本とニュージーランドの親子関係の違いは、「課題の分離」ができるか否かである。日本の親子関係は、「課題の分離」が上手くできていない場合が多く、ニュージーランドでは、逆であると感じている。

再び、私の夫の例に戻るが、夫の母が「息子にはこうして欲しい」という希望があっても、息子に無理強いして、自分の思い通りにさせることはなかった。なぜなら、息子の課題と、自分の課題を明確に分けていたからだ。自分は息子のやり方を、好ましいとは思わないが、これは息子の人生で、彼が決めること。だから、親の課題ではない、とはっきり理解していた。

その一方で、私の両親の場合、私が外国に長期間生活することは、私の人生なので、私が自分で決めればよいとは思えなかった。成人してから、私がどのように生きようと、それは私の課題であり、両親の課題ではない。でも、彼らはそのことを理解できず、私の人生の計画に反対して、自分たちの思い通りになるように、私のことを動かそうとした。つまり、課題の分離ができていなかったのだ。

もし、この計画を実行するのに、私が両親に経済的な負担をかけるのなら、そのように言われてしまっても仕方ない。しかし、私の場合、海外に行くために、両親に経済的負担を一切かけていない。

日本の親子関係は「課題の分離ができておらず」、ニュージーランドの親子関係は「課題の分離ができている」と言い切るつもりはない。そして、どちらの親子関係が良いとか、悪いとか、優劣をつける気もない。ただ、私自身が、自分と身近にいる人々の経験を見て、「こういう傾向があるのでは」と思っただけだ。

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