ニュージーランドでは、近年、アジアからの移民が増加傾向だ。2018年の国勢調査によれば、「自分がアジア人だ」と回答した人は、全体の15パーセントにもなる。私が住む地域でも、アジア人を初め、多くの外国人が住んでいる。私のご近所さんの出身国は、ベトナム、ロシア、フィリピン、カンボジア、日本、等。彼らの中にはニュージーランド国籍を取得して、ニュージーランドに帰化した人もいれば、私のように国籍は出身国のままで、永住権でこの国に住む人もいる。
ご近所さんにホームパーティーに誘われることもよくある。パーティーでは、彼らの出身国のお料理でおもてなしをしてくれる時が多く、とても面白い。驚くことは、アジア人の料理のおもてなしが豪勢なこと。肉料理、魚料理、ベジタリアン向け料理等、何品も用意してくれるのだ。まるで、レストランでエスニック料理を楽しんでいるようだ。ディナーパーティーのために、前日から料理の仕込みをして、次の晩の夕食の準備をするそうだ。
それに対して、ニュージーランド人のパーティーは、けっこう質素に感じる。自宅の庭でバーベキューパーティーをする人が多いが、スーパーから大量のお肉やソーセージを買い込んで、あとは簡単なサラダや付け合わせのパンを用意する。デザートはアイスクリームやケーキが定番。一人一品持ち寄りパーティーが多く、料理を自分で作る人もいるが、スーパーでスナック類を買って持参する人も少なくない。
私の子供たちが小中学生のとき、自宅から徒歩7~8分の学校に通っていたが、この学校では生徒の約3分の一が外国人だった。公立の学校なのに、国際色豊かで、インターナショナル・スクールのような雰囲気だった。子供たちが自宅に連れてくる友達も、色々な国の子供がいて、とても興味深かった。
お母さんがマダガスカル人だというM君は、我が家に遊びに来て、家の庭で花や草を摘みだした。摘んだ草・花はおやつに食べるという。その辺に生えている草や花を食用にすることを考えたこともない私は、とてもビックリした。「ちょっと待って! この花や草、本当に食べれるの?」と聞いてみたら、M君は自信ありげに答えた。「もちろん、これは食べれる。でも、あの草は食べられないんだよ」と草花に対する知識が豊富だった。M君は私や私の子供たちにも、それを食べるように勧めてきた。私も子供たちも抵抗感があり、結局は食べなかったが、私はちょっと心配していた。「本当に大丈夫なの?」と。
息子が自宅に連れてきた中国人の友達は、とても礼儀正しかった。家の中に入る前には、お願いしなくても靴を脱いで、玄関にきちんと置いておく。私に会って初めて言った言葉は、「お招きいただき、有難うございます」。そして、帰り際には、おやつのお礼もきちんとした。こんなに礼儀正しい子供に、私はニュージーランドでお目にかかったことがなかった。この子のお母さんは中国系マレーシア人、お父さんは中国本土の方だ。教育熱心で、子供の教育にはかなり厳しいらしい。そのため、その子は自宅でも算数ドリルや読書をたくさんさせられていると聞いた。だから、成績優秀なんだ、と納得した。
日々の生活の中で、多くの外国人と会って、私は「国連村」に住んでいるような気がする。日本にいた頃から、国際交流に興味を持ち、インターナショナル・フレンドシップ・クラブに所属していた私にとっては、こういう環境で生活できるのは、かなり満足だ。
この国で生活する前は、ニュージーランドに来たら、私は外国人で、マイノリティーな存在なんだと思っていたが、実は、そんな感じは全くない。様々な出身国の人たちに囲まれて、自分は「日本人」というより、「地球人」という感覚で、心地よく生活している。
最後に驚いた話をひとつ。昔、ナミビアからの留学生と話をしたとき、彼にどこの国の出身か尋ねられた。私が答えると、彼はこう言った。「ジャパン? 僕、ジャパンって国を知らないんだけど、どこにあるの?」と真面目な顔で聞いてきた。日本のことを知らない人がいることに、私は非常に驚いた。世界地理に疎い私でさえ、ナミビアがアフリカの国であることを知っている(アフリカ大陸のどこにあるかは分からないが)。「ジャパン」という国名を聞いたことがない人がいることに、私はびっくりした。アフリカで自国から出ることがない人なら、それも普通かもしれないが、留学に来るような人が日本を知らないと分かって、私は「ウソでしょ!」と思ってしまった。