なんらかの問題に苦しんでいる時、
その問題の根本原因が、
自分自身を守るためだったと聞けば、
あなたはどう感じるでしょうか?
この矛盾した状況を、
不思議に思うかもしれませんが、
これは、私たちの多くが
経験することです。
いったい
どういうことなのでしょうか?
また、どうすれば
この状況を防げるのでしょうか?
一緒に考えてみませんか?
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私たち人間には生まれながらにして
「防衛機制」と呼ばれる
心の防衛システムが備わっています。
「防衛機制」とは
ストレスや不安を感じたり、
心の葛藤に直面したりしたときに、
無意識のうちに心を守るために
発動する心理的な働きのことです。
この仕組みによって、
私たちは心のバランスを
保とうとしています。
防衛機制にはさまざまな種類があり、
その中には、心を守ろうとするあまり、
不健康な形で現れるものもあります。
不健康な防衛機制の例として、
自分では抱えきれない感情や葛藤を
行動として外に爆発させる
「アクティングアウト」や、
辛い心を紛らわせるための
高揚感依存などが挙げられます。
これらの防衛の方法は、
一時的な心の守りと
なるかもしれませんが、
結果的には自分自身や周囲に
悪影響を及ぼします。
たとえば、
人間関係のトラブルを引き起こしたり、
自分自身を傷つけたりする
原因になるのです。
そして、それにより余計
自分自身を苦しめてしまう
という悪循環に陥ります。
そのため、
十分な注意が必要なのです。
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これは私たち人間が
本能的にやっている心の守り方です。
厳しい状況に直面したとき、
自分では抱えきれない感情や葛藤を、
行動や態度にして外に出すことにより
心を紛らわすことを
「アクティングアウト」と呼びます。
たとえば、
友人同士で意見の対立があったとき、
最初は理性的に
意見交換ができるかもしれません。
しかし、そのうち
一方がイライラしてきて、
「あなたはどうして、
そのようにしか考えられないの!」
と相手を非難したり、場合によっては
罵ったりすることで
相手に怒りをぶつけるかもしれません。
相手を非難すること、罵ることは、
アクティングアウトの良い例です。
このように振舞えば、親友間でも
人間関係に亀裂が入ってしまうでしょう。
別の例ですが、職場で上司から
理不尽な扱いを受けたとしましょう。
心の中では上司に対して
不満を抱いていますが、
それを直接言葉にできません。
その代わりに、些細なことで
部下をひどく怒鳴りつけ、
自分の内にあるフラストレーションを
部下にぶつけるかもしれません。
こうした行為も
アクティングアウトです。
もう一つの例として、
恋人が最近冷たく感じられるものの、
そのことを素直に相手に
伝えられない状況を考えてみましょう。
そんなとき、突然わざと
距離を取るような態度を示し、
「どうせあなたは私のことを
どうでもよいと思っているのでしょう」
と嫌味を言ったとしたら、これも
アクティングアウトになります。
自分の心の状態を
自分自身で受け止めきれず、
嫌味という形で
相手に不満を向けてしまうのです。
このようにアクティングアウトは、
望ましくない行動や態度として
感情を外に表すことですが、実は
それは自分の心を
守ろうとする行為でもあるのです。
しかし、
その心を守るための振る舞いによって
周囲との人間関係がこじれてしまい、
結果として長い目で見たときに
人間関係の悩みを
抱え続けることになれば、
かえって自分自身を
苦しめることになるでしょう。
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高揚感依存も
心の防衛機制の一つとして
代表的なものです。
これは、
不安や空虚感を紛らわせるために、
刺激的な体験をして、それを
忘れようとする行為のことです。
一時的には爽快感を得られ
気持ちよく感じますが、
長期的には深刻な問題を
引き起こすリスクも高いです。
その典型的な例として、
買い物依存が挙げられます。
不安や孤独感に
押しつぶされそうなとき、
衝動的に高価な服やアクセサリーを
購入することで、
一時的な高揚感や満足感を味わいます。
しかし、後になって
「本当に必要だったのか」と後悔し、
罪悪感に苛まれることも
少なくありません。
もし、このような行為が
繰り返し行われれば、
金銭的な負担が増大し、
借金や経済苦で
自分や家族が苦しむかもしれません。
アルコールやパーティーに
依存するケースも高揚感依存の例です。
日々のストレスや
人間関係の悩みから逃れるため、
飲み会やパーティーに
頻繁に参加することで、
気分を高めようとします。
アルコールや盛り上がる場で
一時的な快楽や高揚感を味わえますが、
翌日には睡眠不足や体調不良に
悩まされることにもなりかねません。
また、盛り上がる場を離れると
虚無感に襲われることもあり、
それを忘れるために
再び気分が高揚する場に出かけます。
このようにパーティーや
盛り上がりの場に行くことが
頻繁に繰り返されるようになると、
過剰なアルコール摂取により
アルコール依存症を
引き起こす危険性も高まります。
さらには、それが原因で
仕事や生活に支障をきたし、
社会的な信用を失うことになれば、
結果的に自分自身を
破壊することにもなり得るのです。
また、無謀な高速運転や
ギャンブルなど、
過激な体験を通じて
刺激を求めることで
高揚感を得るケースもあります。
これらの行為は一時的には
快感をもたらしますが、
同時に怪我や事故
といったリスクが伴います。
ギャンブルの場合は、
金銭的な損失が生活基盤を揺るがし、
さらに深刻な事態へと
発展することも多いです。
これらの高揚感依存に共通しているのは、
一時的な快感は得られても、
根本的な問題が解消されないところです。
さらに、健康や経済、
社会的な側面にまで影響が広がり、
より大きな問題を引き寄せてしまう
負の連鎖に陥りやすい点も見逃せません。
その結果、自己破壊的な方向へ
向かいかねないという
現実があるのです。
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勤勉で一生懸命働くことは、
一見すると立派で
素晴らしい行為に映りますが、
それが自己防衛のための行為
であることも珍しくありません。
この場合、
自分の心が不安やストレス、
焦燥感に直接向き合うことを
避けるために、
忙しさを意図的に作り出し、
それに没頭することで
心を守ろうとしているのです。
短期的には
心を保護する役割を果たしますが、
長期的には心身の健康に
悪影響を及ぼすリスクも高まります。
「忙しくしていれば
余計なことを考えなくて済む」
という発想は、自分の内面にある
不安や葛藤を意識することなく
やり過ごそうとする方法です。
一見、合理的で実用的な対処法
に見えますが、実際には
その感情は解消されたわけではなく、
一時的に心の奥に
押し込められている状態です。
ふとしたときに再び
その感情が噴き出し、
より強く落ち込んでしまうことも
あるでしょう。
「忙しさによる防衛」が行き過ぎると、
仕事や勉強に過剰に依存する
「ワーカホリック」
になってしまうおそれがあります。
交感神経が
過剰に働きすぎる状態が長時間続き、
休息モードに入れなくなります。
結果的に、不眠や慢性的な疲労、
さらには頭痛や胃痛など
自律神経の乱れからくる身体的不調に
悩まされることもあるでしょう。
この問題の根本には、
心の中にある解決されていない
不安や問題に対して
直面することを避けたい
という心理が隠れています。
仕事や勉強という
建設的な活動に専念するため、
短期的には成功を収めたりするなど、
うまく行くこともあるかもしれません。
しかし、長期間この傾向が続けば、
その回避の手段が
自分自身を追い詰める結果となり、
最終的には自分自身をひどく苦しめる
という悲しい事態にもなりかねません。
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まず、自分を苦しめている問題は、
実は心が自分自身を守るために
取ってきた行動である
と気づくことが大切です。
そのうえで、どのような対策が
考えられるのかを見つめ、
実際に講じていくとよいでしょう。
そのためには、
自分の心の内を観察する習慣を
持つことが役立ちます。
ネガティブな感情が
湧いてきたとしても、
それを避けたり押しやったりせず、
ありのままを認めてあげることが
大切です。
ネガティブな感情も、人として
自然に生まれるものだからです。
嫌な感情が湧いてきたと気づいたら、
「自分は今、何を感じているのだろうか」
と意識を向けて考えてみます。
そして、自分が感じていることを、
そのまま受け止めてあげる練習を
していくとよいでしょう。
悲しいときには「悲しいよね」と、
悔しいときには「悔しいよね」と、
自分自身に
優しくささやきかけてあげます。
また、自分の感情を言葉にして
信頼できる人に話したり、
日記に書き出したりすることも、
心の内を理解する助けとなります。
自分の心をより深く知ることは、
この問題に向き合うための
大切な一歩となるでしょう。
さらに、感情がそのまま
行動に結びつかないように、
呼吸法や瞑想といった
リラクゼーションの方法を
生活の中に取り入れ、
ストレスをコントロールする力を
身につけることも大切です。
感情を無理に抑え込むのではなく、
受け止めたうえで
適切に表現する方法を学ぶことが、
アクティングアウトを和らげ、
人間関係を穏やかに保つ鍵となります。
高揚感依存を乗り越えるためには、
長期的な視点で
物事を見る姿勢が欠かせません。
心の守り方には
健康的なものもあれば、
不健康なものもある
ということを理解し、
今抱えている苦しさは、
不健康な守り方に偏ってしまった結果として
起きているのだと
受け止めることが大切です。
その事実を謙虚に受け入れたうえで、
これまでの方法だけに頼るのではなく、
より健康的な守り方へと
意識的に移行していく姿勢が
望ましいでしょう。
心の守り方を一つに限定せず、
ほかの方法も取り入れながら、
多角的な守りへと
広げていくことが助けになります。
たとえば、趣味や運動、読書など、
心が落ち着いたりする習慣を、
日々の生活に
取り入れていくとよいでしょう。
ただし、アルコール依存症や
買い物依存症のように、
病的なレベルまで
依存が進んでいる場合には、
自分一人で乗り越えるのは
難しくなります。
そのようなときには、
専門家の力を借りることが
必要です。
一方で、そこまでひどくはなく、
依存傾向に気づける段階であれば、
ほかの守り方を取り入れ、
視野を広げた心の守りを実践することで、
状況の改善は十分に期待できるでしょう。
「忙しさによる防衛」
を手放していくうえでも、
長期的な視点は大きな助けになります。
忙しさによって心身の健康を損なえば、
結果的に大きな負担を背負うことになる
と理解しておくことが大切です。
そのうえで、一日のスケジュールの中に、
意識的に「リラックスするための時間」
を組み込む習慣を持ちます。
また、心の動きを観察しながら、
自分が何に追われ、何に不安を感じ、
どのようなことを考えているのかを
紙に書き出してみると、
自分を客観的に見つめる助けになります。
リラックスの時間には、
瞑想やマインドフルネスを
取り入れるのもよい方法です。
そもそも、
不安や焦りに悩まされる背景には、
自分自身が何らかの問題を
抱えている場合が多いものです。
そのため、根本にある問題に向き合い、
解決が可能であれば、
そこに力を注ぐことが望ましいでしょう。
自分一人で向き合うのが難しい
と感じるときには、
カウンセラーなどの
専門家の助けを得ることも、
有効な選択肢の一つです。
いずれの場合も、
目先の楽さだけで判断するのではなく、
長い目で見て、自分がより健康で
幸せな方向へ進んでいける選択を
重ねていくことが大切です。
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この記事は、「心の自己防衛が
自分自身に大きな問題を
引き起こし得ること」
をテーマにしました。
心を守るための防衛機制が、
時として不健康な形で現れ、
自分自身や周囲に
悪影響を及ぼす可能性があることを
お伝えしました。
アクティングアウトや高揚感依存、
ワーカホリックといった具体例を通じて、
そのメカニズムやリスクについて考え、
さらに、これらの問題に
対処するための方法もご紹介しました。
大切なのは、
まず自分の心の内側に目を向け、
自分がどのように
心を守ろうとしているのかを
認識することです。
そして、その守り方が
自分や周囲を苦しめている場合には、
健康的な方法へと
シフトするのが望ましいです。
自分の心の中を見つめて、
ありのままの感情を受け入れ、
受容していくことが、
心の健やかさを保ち、
幸せな未来への第一歩となります。
また、物事は短期的視点ではなく、
長期的視点で見ることも重要です。
何らかの問題を抱えている場合には、
自分一人で解決することは
難しいかもしれません。
そのような場合には
専門家の力を借りるとよいでしょう。
どんなに困難な状況でも、
私たちには自分自身を癒し、
改善していく力があります。
この記事がそのヒントとなり、
あなたがより健やかな心と生活を
築くきっかけとなれば幸いです。