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心の病気 ― 治そうと頑張れば頑張るほど、具体が悪くなる!

メンタルヘルスが原因で
引き起こされる身体の不調は、

頑張って治そうとすればするほど、
逆に体調は悪化して、
ツラくなることもしばしばだ。

自分としては
一生懸命努力しているのに、
結果はかえって逆効果!

なぜ、そうなのか?

今回は
私の体験談を交えて、
その理由をお話したい。

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心の病気は、
強い意志を持って
頑張って治す努力をすれば、
早く回復しそうなものだ。

しかし、一見正しく思える
「病気を治す努力」は
全然効き目はなく、

それどころか、かえって
自分の状態を
悪化させることになる。

病気が早く治るよう、
一生懸命になっている時、

その裏には、自分の中から
病気を追い出したい! 
病気とは無縁になりたい! 
という気持ちが強い。

病気とオサラバしたいと
切望する時には、
自分の意識は病気のことに
集中してしまう。

そして、常に
病気のことばかりを
考えている。

人は誰でも、
自分の意識が向くところが
拡大されて見えるようになる。

フォーカスの当たる部分が
自分にとっては
とても大きく感じるのだ。

実際のサイズは
さほど大きくなくても、

それだけに意識を
一点集中させれば、

注目した対象物は
どんどん膨れ上がり、
そのうちモンスターのように
巨大になる。

するとそのモンスターは、
身近にある様々なことを
隠してしまい、

目の前にある他の物事を、
消してしまうことも
珍しくない。

意識を向けた物の
実際のサイズは「1」なのに、
自分の感じ方としては
「10」くらいに膨れ上がることも
よくある話だ。

こういう状態になれば、
自分が意識を向けた対象物に
自らが支配されるようになる。

そのことばかりに
気を取られて、
それにのめり込み、

他のことを見る余裕も、
考える余裕も全くない。

別の言葉で言えば、
この状態は「執着のある状態」
「囚われのある状態」
とも言える。

残念ながら、
執着や囚われがあれば、
ろくなことは起きない。

身体の不快な症状に
増々自分の注意が向き、
更に強く感じるように
なるからだ。

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病気を治そうと
一生懸命の時には、
頭の中では常に
病気のことばかりを
考えている。

そして、常に
自分の今の状態を
チェックしている。

嫌な症状は
時には少し良くなることもあるが、
その逆も然りだ。

その時々の
自分の体調を常にチェックして、
ちょっと良くなれば、喜び、
ちょっと悪くなれば、がっかりする。

自分の状態を
しばしば確認して
一喜一憂してしまう。

しかし、心の病気は、
一歩進んで二歩下がる
という感じで、

良い・悪いを繰り返しながら
徐々に快方へ向かうもの。

短期的に変化する
自分の調子を頻繁に確認して、
喜んだり、悲しんだりしても、
あまり意味がない。

常に病気を意識して、
自分の体調をチェックする行為で
不必要に心的エネルギーを
すり減らして、

結果的には、自分自身を
疲弊させることになる。

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病気を治そうと頑張ることは、
自分を精神的に戦闘態勢に
追い込むようなものだ。

戦う状態では、
脳の扁桃体が興奮して、
不安感や恐怖心が強くなる。

扁桃体の役割は、
大昔、原始人が猛獣に
襲われそうになった時、

恐怖や不安を煽り、
外敵に対して「戦うか? 逃げるか?」
の選択をさせ、
自分の身を守るためだった。

この扁桃体の役割は
原始時代には
役立つものだったが、

今の時代では、役立つどころか
人に不安や恐怖心を抱かせ、
メンタルを病ませる原因になっている。

現実的には、心の病気を治すには、
リラックスして、精神をゆっくりと
休めることが必須だ。

しかし、治すことを意識して
頑張ろう!という気持ちが強くなれば、
精神的に
自分自身を戦闘モードに入れて、

リラックスした状態からは
ほど遠くなる。

これでは、治るものも
治らなくなってしまうのだ。

全く不思議ではないだろう。

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私の個人的な体験談として、
不眠の問題がある。

私はメンタルヘルスが原因で
様々な身体の不調に、
悩まされた時期が長かった。

私の悩みの一つには
不眠の問題があった。

精神的な不調を起こして以来、
私は上手く眠れなくなって
しまったのだ。

よく眠れなければ、
それだけでもツライ!

翌日は怠いし、
日中は頭痛がして、
立ち上がる気にもなれない。

不安に襲われて、
鬱っぽくなることも
しばしばあった。

私はどうにかして
不眠を解消したいと
切実に願った。

快眠のために
効果があると言われるものを
幾つも試してみたのだ。

それにより、時には
多少良く眠れることも
あったが、

質の高い、健康的な睡眠を
習慣的に続けることは
なかった。

眠れたり、
眠れなかったりする時期を
長年繰り返すうちに、
私はあることに気づいた。

それは、「今夜はしっかり
眠ろう!」と頑張る時には、
絶対に眠れなくなるということだ。

特に、翌日に重要なミーティングや
大事な予定が入っている場合、
その前夜はしっかり睡眠を取り、
身体も心もベストな状態で臨みたい!
という気持ちが強い。

そのため、前の晩は普段よりも、
早めに床につき、
「よ~し、今夜は頑張って
しっかり寝るぞ!」と思ってしまう。

しかし、こうなれば、
結果的には自分の期待とは
真逆のことが起きる。

疲れていても、
どうしても眠ることが
できないのだ!

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私は、寝付けないと
時計を見て時間を確認する
悪い癖がある。

「今は午前12時か。6時には起床するから、
今寝付いても6時間しか睡眠時間がない!
早く寝なくちゃ!」と
焦りの気持ちが出てくる。

すると、交感神経が活発化して、
身体は戦闘モードに入る。

寝付くには、
身体も心もリラックスして、
ゆったりしている状態が望ましい。

しかし、自分の状態は
これとは真逆の戦闘モードだ。

当然、眠りにつくことはできず、
眠れないまま
どんどん時間だけが過ぎてゆく。

私は再び時計を見て、嘆く。
「ああ、もう午前1時に
なってしまった!
早く寝ないと、睡眠時間が
どんどん減ってゆく!」

焦りの気持ちは増々強くなり、
こうなれば、眠ろうとしても、
眠ることはできなくなる。

結局は
よく眠れない夜を過ごし、
翌日は身体も怠いし、
脳の疲労感も大きく、

大事な用事に専念したり、
重要なミーティングに
集中できなくなってしまう。

これはかなりツライ状態で、
散々な結果だ。

私は以前、不眠の悪循環に
陥ったこともある。

不眠の悪循環サイクルは
次の通りだ。

眠れない夜を過ごせば、

1)翌日は身体も心もスッキリせず、
大変ツライ状態。

2)このシンドイ状態を、
どうにか避けたい!と強く思い、
「今夜こそよく眠りたい!」と
切望するようになる。

3)そして、よく眠れるよう、
頑張って眠る努力をしてしまう。

4)しかし、頑張れば頑張るほど
眠ることに囚われて、
身体も心も緊張モード。
その結果、当然、眠れない。

そのせいで、
1)翌日は身体も心もスッキリせず、
大変ツライ状態だ。

このように 1)から4)までを
幾度も繰り返していた。

この悪循環に陥った結果、
徐々に自分も疲弊して、
精神的にもかなり参っていた。

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しかし、ある日、
「もう眠れなくてもいいや」
と投げやりの気持ちになった。

眠る努力にも疲れ果て、
「もう、どうでもいいや!」
と思えた日があったのだ。

すると不思議なことが起きた。

「もういいや」と諦めた夜は、
けっこうよく眠れたのだ!

しっかり熟眠しよう
と踏ん張った時には、
全然眠れなかったのに、

「もう、どうでもいい」と
諦めたら、かなり質の高い睡眠が
取れたのだ!

しかし、これも
冷静に考えれば、
理にかなったことだ。

頑張るのをやめれば、
身体も心も戦闘態勢には入らない。

緊張する必要もないから、
身体も心も緩んでくる。

これこそが
リラックスした状態だ。

リラックスできれば、
身体もお休みモードに
入れるから、

その結果、
きちんと
入眠できるようになる。

よく考えれば、
不思議でもなんでもない。
当然のことだろう。

ただ、自分の感じ方としては
頑張っているときには
思うようには行かず、

「もういいや」と
頑張りをやめた時に、
上手く行ったので、

感覚的には
不思議な気持ちになった。

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このことは、不眠に限らず
心の病気全般において
言えることだと思う。

治ろう!と意識すれば、
病気のことで一生懸命だ。

そうなれば、
身体も心も戦闘態勢。
休息できる状態ではない。

休息できなければ、当然、
治るものも治らない。

それと同時に、
病気を治す努力をする際、

そのことばかりに
意識が向くから、

実際の病気の状態よりも、
ずっと深刻なものに
感じられてしまう。

実際の辛さや大きさよりも、
膨れ上がって感じられるので、
ツラさも倍増してくる。

膨れ上がったモンスターに
自分自身が支配されれば、

病気のことだけしか
考えられず、

身の回りで起きている
他のことが
全く見えなくなってしまう。

結果的には
病気に囚われ、執着して、
ツラさだけが増してゆき、

病気にすっかり
支配される自分になる。

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一般的には強い意志を持ち、
頑張った方が
上手く行くことが多い。

しかし、
心の病気を治す際には、
このルールは当てはまらない。

かえって
病状を悪化させるだけで
何も良いことは起きない。

病気を治したければ、
良い意味で諦めてしまおう!

「もういいや!」と
投げ出してもいいのだ。

そちらの方が、
けっきょくは上手く行く。

執着も、囚われも起きないので、
焦りの気持ちもない。

「もういいや」と思えれば、
そのことも
頭から離れやすくなる。

病気を意識することも
少なくなるので、

病気が必要以上に
膨れ上がって、自分の中で
病気のモンスターが
どんどん育ってゆくこともない。

病気があっても、
病気は自分の傍に
置いておこう。

そして、他のことを
始めてみることだ。

面白そうだと
思えるものがあれば、
それをやってみるとよい。

そんなものがなければ、
目の前にある
できることを何でもいいから
やってみることだ。

自分の意識が
他のことに集中すれば、
今までとは感じ方も随分違ってくる。

楽しいことにフォーカスできれば、
楽しいことが膨れ上がって
見えるようになる。

そして、
結果的には、病気があっても、
それは自分のほんの一部だ
と思えるようになる。

そうなれば、しめたもの!

この状態が、
病気を治すのには、とても有効だ。

気をつけることは、
治す努力をしないこと。

病気に意識を
必要以上に向けないことだ。

力んで踏ん張らなければ、
気持ちもラクになり、

結果的には
心も身体も休息できる。

その休息こそが
快方に向かってゆくのに必要だ。

心の病気を
治す努力はやめよう!

諦めてしまった方が、
結果的には上手く行く。

実践してみれば、
「これは本当のことだ!」
とよく分かる。