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メンタル疾患は、周囲に理解されにくい病気

今回、このテーマを取り上げたのは、
精神科医・樺沢紫苑先生のユーチューブトーク
「うつに見えません」を聞いて、
色々思うことや、考えることがあったからだ。

プロテニス選手の大坂なおみさんが
ご自身の鬱を告白したことについて、
「鬱っぽくない」と指摘する人がいたそうだ。
試合でも活躍されていて、
全然、鬱に見えなかったからだろう。

しかし、樺沢先生によれば、
ほとんどの鬱の人は
見ただけでは分からないとのこと。
鬱にも軽度、中度、重度のレベルがあり、
重症の人であれば、
一般的に人が想像するような「鬱病」
という感じに見える。
でも、軽度、中度の場合には、傍から見ても
分からない場合が多いそうだ。

鬱病を患っていても、
会社の同僚や家族に知られたくなく、
人前ではわざと明るく振舞い、
取り繕うことにより、自分の病気を隠している。

そのため、周囲の人は気づかないが、
ある日、突然、
「昨日まで元気だった人が、
自殺してしまった」なんてことが起きる。
皆、びっくりするけれど、
本当は突然、起きたわけではない。
ずっとずっと見えないところで
病気が進行していたのだ。

鬱病なのに、周囲の人に隠して取り繕い、
ムリにムリを重ねるうちに、
命を落とすような悲しいことが起きる。
自殺するまでは行かなくても、重症化してしまい、
病院へ行った時には、
なかなか治らない状態にまで悪くなっている。

樺沢先生曰く
「鬱に見えないから、鬱ではない」
と言うのは間違いで、ナンセンスだ」。

私の場合は鬱病ではなく、PTSDだが、
確かに、自分の病気は外には見えにくい。
365日24時間、
ずっと症状があるわけではないので、
他人には理解されにくい。
フラッシュバックが起きた時、
たまたま傍に居合わせた人に、
「あれ、この人、ちょっと変じゃない?」
と思われることはあっても、
メンタルを病んでいるとは思われず、
単なる「変な人だ」で片づけられてしまう。

「メンタル疾患はタブーである」
という社会風潮があるから、
メンタルを病んでいても、
人に知られたくなく、言わないことが多い。
「喘息です」とか、「リュウマチです」と
身体の病気については
気軽に他人に話すことはできても、
メンタルを病んでいることは、
他人にはなかなか話しづらいものだ。

メンタル疾患が周囲に理解されにくいのは、
樺沢先生が仰るように、
本人が隠していて、取り繕っているから。
また、365日24時間、
ずっと症状に悩まされているわけではないから、
表面的に接しただけでは
病気かどうかなんて全く分からない。

でも、周囲には見えなくても、
実際にはメンタル疾患で苦しむ人の内には
病気による苦しみが確実にある。
メンタル疾患で苦しむ人は
2重の苦しみを抱えている。
一つは病気そのものの苦しみ。
もう一つは、自分の病気を隠すための苦労だ。
他人にバレないようにと取り繕うことは、
心的エネルギーを枯渇するもので、
かなりツライものだ。

人に知られたくなく、
隠している人が多いので、
メンタル疾患の患者数は実際よりも少なく見える。
でも、本当は、私たちが想像するよりも、
もっと多くの人々が
メンタル疾患で苦しむ事実があるのだろう。

私自身、「メンタル疾患はタブー」
という社会風潮が変わって、
もっと気軽に自分の病気を
外に話しても大丈夫な社会になれば、と願う人間だ。
外に言っても、
馬鹿にされたり、軽蔑されたり、職を失ったり等の
不利益を被ることがなければ、
気軽に他人に話すことができる。

病気を隠して、
自分の中だけで苦しんでいれば、
一人ぼっちで病気と闘うことになる。
自分の病気を外に話すことができれば、
意外にも「実は私も病気があるんだよね」
と身近な人が告白してくれることもあるだろう。
そうなれば、「苦しいのは私だけでない」と分かって、
皆で一緒に病気と闘うことができる。
自分と似たような人たちと
交流することが可能ならば、
心強くて、病気に対する感じ方も
全く違うものになるだろう。

職場でも、「私は病気のために、
こういうことは難しい」と雇い主に気軽に言えれば、
仕事の仕方を配慮して貰えるだろう。
「その配慮は大変なものに違いない」
と勝手に想像する管理職はいるが、
実は、そうでない場合も多い。
ほんのちょっとの配慮だけで、
メンタルを病む人が働きやすくなる環境を作れる
と私は信じている。

例えば、私の場合では、
血糖値が低くなる時に、
パニック発作になる前段階のような
身体の症状を感じることが多い。
この不快な感覚を避けて、
パニック発作を起こさないために、
私は自分のカバンの中に
スナック類を入れておき、
必要に応じて食べるようにしている。
このお陰もあり、私はもう10年以上も
パニック発作を起こしていない。

こういうことを上司が知っていて、
私がいつでもスナック類を食べられるよう
配慮してくれるだけでも、
私は身体の不快な症状を防ぐことが可能だ。
どんな配慮が必要かは
人それぞれ皆、違う。
でも、ほんの小さな配慮だけで、
随分、働きやすくなる場合もある。

メンタル疾患がある人でも、
雇い主に小さな配慮をして貰うことで、
働きやすい環境下で仕事ができ、
組織や社会に大きく貢献することは可能だ。
「メンタル疾患」と聞くだけで、
偏見を持ち、「この人を雇わないほうが無難だ」
と考えるのは、大間違いだ。

メンタル疾患に偏見を持つ人は、
自分はメンタルを病むことは絶対にない
と確信しているようだが、
実は、人間である以上、
誰でもメンタルを病む可能性はある。
自分が病気になって初めて、
そのことを知るだろう。

メンタル疾患はタブーなんかではない。
もっと皆が気軽に自分の病気を
外に出すことができれば、
メンタル疾患により命を落とす人も減るだろう。
病気で苦しむ人も、より生きやすくなり、
社会に貢献できるようになるだろう。

参考動画:「うつに見えません
(ユーチューブ 精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル)