私たちは無意識に、
不快な感情や葛藤、ストレスから
心を守るために
さまざまな方法を取っています。
しかし、その中には
短期的には効果的でも、
長期的には不健康で
自分を傷つけるものもあります。
この記事では、
そうした不健全な心の守り方を
見直して、どうすれば
より健康的で健全な方法に
移行できるのかを考えます。
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怒りは不快な感情で
悪いものと捉えられがちですが、
実は私たちの心を守る
重要な役割を果たしています。
怒りは「第二感情」と言われており、
その背後には
本来の感情(第一感情)が
隠れています。
たとえば、ブティックで
洋服を見ているとき、店員に
「あなたにはこの服は
似合わないでしょう」と言われたら、
おそらく怒りを感じるでしょう。
このとき自覚はしませんが、
怒りの前には「こんなふうに
侮辱されて惨めだな」とか
「悲しいな」という
第一感情が生じています。
屈辱感や悲しみは耐え難い感情で、
心が強くなければ
耐えられないこともあります。
そのため、私たちは無意識に
「この店員はなんだ!」
という怒りにすり替えて、
本来の感情に
直面しないようにしているのです。
このように、怒りは無意識のうちに
耐え難い感情から目を背け、
自分の心を守る役割を
果たしています。
このような場面で、怒りの感情を
内に留めておくことができず、
行動や態度で外に出してしまうと、
その行為を「アクティングアウト」
と呼びます。
アクティングアウトの例として、
相手を批判したり責めたり、
怒りの言葉をぶつけたりすることが
挙げられます。
また、相手を無視することも
その一例です。
アクティングアウトは
自分の心を守るために
大切な役割を果たしていますが、
実際には、怒りを相手にぶつけることで
相手を不快にさせ、
人間関係が悪化してしまうでしょう。
そのため、
自分の心を守るために
相手を攻撃することは
望ましいことではありません。
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アクティングアウトは、
他人に怒りをぶつけるだけでなく、
自分自身に向ける場合もあります。
たとえば、やけ食いや過度な飲酒、
ギャンブルや浪費などが挙げられます。
これらの行動をしている最中は
気分が高揚し、ストレスや感情の葛藤、
現実から一時的に
逃れることができるためです。
嫌なことから目を背けるために
高揚感を得てテンションを上げる方法は、
短期的には効果があるかもしれませんが、
長期的には自己破壊的になることが多く、
十分注意が必要です。
たとえば、クレジットカードで
高級品を次々と購入したり、
ギャンブルにのめり込んだり、
過度な飲酒に溺れたりすることです。
これらの行動が一度きりなら
大きな問題には
ならないかもしれませんが、
頻繁に繰り返せば
自分の健康や経済に
大きなダメージを与える可能性が
あるでしょう。
そして、最終的には
自己破壊につながります。
常に高揚感を保とうとすると、
無理が生じて
極度の落ち込みや過度な自己嫌悪に
陥ることも少なくありません。
気分の浮き沈みが激しくなり、
精神的に不安定になってしまいます。
高揚感で厳しい現実やつらい感情から
逃れる方法は、
依存症を引き起こすリスクも高く、
とても危険です。
ギャンブル依存、買い物依存症、
アルコール依存症など、
メンタルヘルスに深刻な影響を与え、
不健康な精神状態に陥ってしまいます。
そうなれば、自分だけでなく
家族や周囲の人々にも悪影響を及ぼし、
日常生活が困難になることもあるのです。
そのため、こうした心の守り方に
依存しないよう注意することが
非常に大切です。
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怒りを相手にぶつけたり、
一時的な高揚感で
気を紛らせる方法は、
健康的かつ健全ではありません。
これらの方法は
自分自身や周囲の人々を
傷つける結果を招きます。
こうした守り方に頼り続ける限り、
良い結果は期待できないでしょう。
そこで、対策を講じることが重要です。
不健全な心の守り方を
すぐにやめるのは理想ですが、
現実的には難しいこともあります。
そのため、少しずつ
健康的な守り方を取り入れ、
不健康な方法に
依存しないようにするのが
望ましいです。
心の守り方のバリエーションを増やし、
意識的に健全な方法も
取り入れるようにしていきます。
これまで無意識に
相手に怒りをぶつけていた場合、
今後も同じ行為をするかもしれませんが、
そのときには「こうやって
自分の心を守っているんだ」と
自覚しながら行うとよいでしょう。
その怒りの裏にある本来の感情を探り、
向き合うことができれば、
怒りに支配されることも
少なくなるでしょう。
「自分は悲しみや虚しさ、
無力感から自分を守るために
怒りを感じているんだ」
と理解できるようになると、
怒りに振り回されることも減ります。
高揚感を得るための行為についても、
一時的には気分が良くても、
長期的には自分や家族に
悪影響を及ぼすリスクがあることを
理解することが重要です。
これも「心を守るための行動だ」
と自覚しながら、徐々に
他の健康的な方法を
取り入れていくことが大切です。
他の守り方を積極的に取り入れることで、
心の守りを多角的に強化し、
不健康な方法に頼らなくてもよい状態を
目指しましょう。
これが、不健全な心の守り方から
脱却するための有効な方法です。
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では、健康的な心の守り方には
どんな方法があるでしょうか?
心が脅かされる場面や状況は
人それぞれ異なるため、
自分に合った方法を
見つけることが大切です。
たとえば、内気で自信のない人は、
気心の知れない相手と接する際に、
意識して物理的な距離を
保つとよいでしょう。
自分と相手の間にテーブルを置いたり、
真正面から向き合わずに
角度を変えることで
心の安全が確保しやすくなります。
対人恐怖症の傾向がある人は、
メガネやマスクをかけて
外出すると
気持ちが楽になることがあります。
もしそうであれば、
これらを活用するとよいでしょう。
化粧をすることが
心の守りになる人もいます。
しっかりと化粧をすることで
安心して他人と接することが
できるのであれば、
そうするのがよいでしょう。
ブランド品を身に付けることで
自信が持てる人もいます。
お気に入りのブランド品を
身に付けて外出することで、
安心感が得られるのであれば、
それも一つの方法です。
携帯電話やメールなどの
プライベート情報を隠すことも、
心の安全を保つために有効です。
さらに、他人から
心の領域を侵害されないように、
自分と他人との間に
しっかりとした境界線を引き、
嫌なことにははっきりと
「ノー」と言うことも重要です。
自分のスキルや知識が
心の守りになる人もいます。
たとえば、
資格を取得することで自信がつき、
起業などの勇気が要るチャレンジが
しやすくなる場合、その資格や肩書が
守りになると言えるでしょう。
音楽や歌も心の支えになります。
つらいときに聞く音楽が
心を癒してくれることもあります。
また、心の支えとなる言葉や考え方、
座右の書を持つことも有効です。
お守りやパワーストーンなどの
スピリチュアルなものを信じることで
心を守れる人もいます。
エビデンスがなくても、
自分が安心できるのであれば、
躊躇せずに活用しましょう。
尊敬する人や師匠の存在が
心の支えになる場合、
その存在を思い出すようなものを
持ち歩いてもよいでしょう。
たとえば、
尊敬する著者の本を持ち歩いたり、
その人の写真を
携帯することが考えられます。
心が落ち着かないときは、
自分だけのプライベートな空間で
一人の時間を確保することも有効です。
自宅にプライベートルームを
持つのが理想ですが、難しい場合は
お気に入りのカフェなどで
一人の時間を過ごすことも効果的です。
生活の中に安定した秩序を
取り入れることも
心の安定には役立ちます。
たとえば、起床時間、就寝時間、
食事の時間など、決まった時間に
同じことをルーティンとして
行うことで心が安定します。
どのような守り方でも、
一つの方法に依存しすぎると
行き過ぎてしまう危険があります。
そのため、いくつかの守り方を
バランスよく取り入れていくことが
大切です。
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私たちは無意識のうちに、
不快な感情や葛藤、
ストレスから心を守るため、
さまざまな方法を取っています。
この記事では、
不健康な心の守り方の代表例として
「怒りを相手にぶつけること」と
「高揚感で心を守ること」に焦点を当てて
お話ししました。
これらの方法は、一時的には
効果があるかもしれませんが、
長期的には自分や周囲に
悪影響を及ぼすため、
避けたほうが賢明です。
とはいえ、
これまで頼ってきた守り方を
急にやめるのは
現実的ではありません。
そのため、少しずつ
他の健康的な守り方を
意識的に取り入れ、
不健康な方法に
依存しないようにすることが
重要です。
今回はさまざまな守り方を
紹介しましたが、その中には
自分に合うものもあれば、
そうでないものもあるでしょう。
自分に合った方法を見つけて
積極的に取り入れ、
守り方のバリエーションを
増やしましょう。
そうすることで、
不健全な守り方に
依存する状態から脱却し、
心の健康を維持することができます。
自分に合った
健康的な守り方を見つけて、
日常生活に取り入れることで、
より安定した心の状態を
手に入れましょう。