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ニュージーランドでカウンセリングを受けてみた

カウンセリングの予約待ちリストに名前を載せて貰ってから、3カ月ほどして、私は最初のセッションを受けた。

私の通ったカウンセリングサービスにはカウンセラーが何人かいて、クライアントが事前にどんなカウンセラーに相談したいのか、希望を言うことができた。私の希望は、年齢的には私と同世代、または、少し年上の女性のカウンセラーだった。予約待ちの時間を気にしなければ、できるだけ、クライアントの希望に沿ってくれるようだった。

それでも、担当カウンセラーを決めるとき、一つだけルールがあった。一人のカウンセラーが同じ家庭内のメンバーを複数担当することはできなかった。私の場合、夫が同じカウンセリングサービスに通っていたので、夫の担当者Gさんが、私の担当者になることはなかった。

なぜ、そうなのかは理由があった。この国では家族内の問題でカウンセリングを受ける人が多いようだ。例えば夫婦間で揉め事がある場合。もし、夫と妻が同じカウンセラーに相談することになれば、カウンセラーは両者の仲介役になってしまうリスクがあるからだ。カウンセラーの役割は、クライアント個人を良い方向に導くことであり、家族内のいざこざをジャッジして「どちらが間違っている。どちらが正しい」と判断することではない。そのため、私達がお世話になったカウンセリングサービスでも、このルールは遵守されていた。

カウンセリングサービスの受付で挨拶してから、私は待合室に通された。そこにはセルフサービスで飲み物が作れるよう、ティーバックやインスタントコーヒー、カップなどがたくさん置かれていた。

待合室にいるのは私一人だけだった。幾つものセッションが同時進行しているのに、予約時間を少しづつずらせているためか、待合室で他のクライアントと鉢合わせになることは絶対になかった。これはプライバシー厳守のための工夫のようだった。

しばらくすると、私の担当カウンセラーが待合室まで私を迎えにきてくれた。彼女の名前はリンダ。私の希望通り、私と同世代の女性で、ニュージーランド人だった。リンダは優しい声で私に話しかけてくれ、緊張気味な私の気持ちをほぐしてくれた。

リンダの部屋はこじんまりとしていた。暗くもなく、明るすぎもなく、落ち着ける空間だった。最初に名前、住所、電話番号などの個人情報を確認したあと、リンダは私の家族構成について質問してきた。そして、彼女からも簡単な自己紹介みたいなものがあった。

リンダ:「緑がカウンセリングを受けようと思った理由は何ですか?」

私:「実は私、自分のことがしっくりこないんです。言葉で上手く説明できないけれど、自分が変な存在(weird)に感じて仕方ないん….」

リンダ:「ちょっと待って、緑。あなたは今、自分のことを変な存在(weird)って言ったわね。この言葉はあまり良くないですよ。それよりも、風変わりな (eccentric) と表現した方がいいです」

私が一センテンスを終わる前に、リンダは私の話を止めて、たった今、私が発した言葉を、他の言葉に置き換えるようアドバイスしてきた。私は自分の話を突然遮られて、少し驚いた。

リンダは私に色々な質問をしてきた。今日何をしたかとか、普段の生活のこととか、私の出身国や日本の家族のこととか、等々。

私はリンダの質問に一生懸命答えた。私が彼女の質問に答えているとき、リンダは私の話を途中で遮ることが多かった。「ちょっと待って、緑。あなたは今 ~って言ったでしょ」と始まり、この言葉ではなく、別の言葉を使いなさいとアドバイスしてきた。

1時間のセッションはあっと言う間に終わった。最初のうちは週2回のセッション。そして、慣れてきた頃、週1回になった。相談内容にもよるが、全部で7~8回セッションを受けて終了する人がほとんどらしい。しかし、私の場合は特例で、結局、私はその後1年半も定期的にセッションに通うことになった。

最初の2~3カ月間は、カウンセリングというよりも、マンツーマンの英語のレッスンを受けているような感じだった。私の発した言葉が好ましくないとき、リンダは私の話を途中で止めて、別の単語を使うように指導した。

そのうち、私はこの言葉を使えば、リンダに話を遮られると予想がつくようになった。そして、自分の話し方の癖に気づくことになる。私は自分では意識していなかったが、ネガティブ言葉をたくさん使う癖があったようだ。正直、私はそのことに全く気づいていなかった。リンダとのセッションを何度か繰り返すうち、それが分かったのだ。

カウンセリングを受ける前から、私は斎藤一人先生より、言葉の大切さを聞いていた。「地獄言葉を使わないで、天国言葉にしようね」というメッセージを受け取っていたのに、私はそれができていなかった。「ツイてる。ツイてる。ツイてる。ツイてる。ツイてる。ツイてる。ツイてる。ツイてる。ツイてる。ツイてる…..」と何度も「ツイてる」を連発していても、実際の会話となると、私はネガティブな言葉をたくさん使って話をしていた。

私がカウンセリングに行った理由は、なぜ自分が「シックリこない感」で悩んでいるか?であった。しかし、セッションが始まってからは、もともとの理由はすっかり忘れてしまっていた。セッションを始めて2カ月くらい経ったある日、リンダは「私のシックリこない感」の原因を私に教えてくれた。

つづく