今回は、
生きづらさの原因となっている
思い込みを緩めることを
テーマにします。
その思い込みによって
生きづらさを感じ、
自分らしく幸せに生きることが
難しくなっている方に
役立つ内容です。
思い込みを緩めたいと思っても、
なかなか簡単には
できないことがあります。
なぜそうなのでしょうか?
その理由を解説し、
解決方法も考えてみます。
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人は誰でも心の中に
さまざまな思い込みや信じ込みを
持っています。
その中で、
自分を生きづらくさせたり、
自分らしく幸せに
生きることを妨げるものを
「非適応的スキーマ」と呼びます。
自分の思い込みや信じ込みが
非適応的スキーマである場合には、
生きづらさを軽減するために、
それを緩めることが望ましいです。
しかし、実際には
思い込みを緩めるのは
簡単ではありません。
なぜそうなのでしょうか?
その理由は、
自分の思い込みや信じ込みが
正しいという証拠を
心の中にたくさん持っているからです。
たとえば、「自分はダメな人間だ」
という思い込みを
持っている人がいます。
そのような人は、
日常生活の中で
自分がダメだと感じる出来事や失敗を
証拠として集めています。
そして、
その証拠がたくさんあれば、
当然「自分はダメな人間だ」
と結論づけてしまっても
無理はないでしょう。
そのため、
自分の思い込みや信じ込みが
正しいことだと感じられて、
緩めることができないのです。
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しかし、ここで問題となるのは、
本人が自分の思い込みに対して持っている
証拠自体が本当に正しいのかどうかです。
つまり、その証拠の
信憑性や信頼性が問われます。
なぜなら、私たちの脳が集める証拠は
非常に偏っていることが多いからです。
私たちの脳には「確証バイアス」
という働きがあります。
「確証バイアス」とは、
自分の思い込みや信じ込みに
合致する情報ばかりを無意識に集め、
それに反する情報を
無視してしまう傾向のことです。
たとえば、「自分はダメな人間だ」
と思っている人は、
自分がダメだということを
証明するようなことばかりを見つけて、
それを記憶します。
実際には自分がダメだ
ということに反する事実があっても、
それを見逃してしまうため、
「自分がダメだ」という証拠ばかりを
認識するのです。
実際のところ、「自分はダメだ」
という証拠はあるかもしれませんが、
「自分はダメではない」
という証拠もあるはずです。
しかし、脳内にはフィルターがあり、
「自分はダメだ」という証拠だけを
しっかり認識し、記憶します。
反対に「自分はダメではない」という証拠は、
脳のフィルターを素通りしてしまうため、
認識されません。
その結果、「自分はダメな人間だ」
という証拠ばかりを
たくさん集めることになるのです。
別の例を見てみましょう。
ある親が「私の娘は親切で優しい」という
思い込みを持っているとします。
この親は、
娘の親切さや優しさを
他人から褒められると「やっぱり、
私の娘は親切で優しい子だ」
とその確信を強めます。
しかし、それとは反対に、
娘が意地悪なことをしたときには、
「娘が悪いのではなく、
状況がそうさせただけだ」
と歪んで認知します。
当然、「私の娘は親切で優しい」
という思い込みは揺らぎません。
このように、
自分の思い込みや信じ込みと
合致する情報ばかりを集め、
それに反する情報を見逃す傾向が
「確証バイアス」です。
私たちの脳には、
この確証バイアスが働いているため、
自分の思い込みに合うように事実を解釈し、
自らその思い込みへの確信度を
高めているのです。
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私たちの脳では
確証バイアスが働いているため、
「自分の思い込みにチャレンジしてみよう」
と思っても、
うまくいかないことが多いです。
結果はいつも、
「やはりその思い込みは正しかった」
という結論に至るでしょう。
なぜなら、行動した結果に対しても
確証バイアスが働き、
思い込みの正しさを証明するような
解釈をしてしまうからです。
たとえば、Aさんは
「他人に頼るのは悪いこと。
自分でやらなければダメ。」
という思い込みを持っていました。
そのため、Aさんは
常にすべてのことを
自分一人で解決しようとし、
他人に頼ることを避けてきました。
しかし、その結果、
多忙で大変な毎日を送ることを
余儀なくされていました。
ある日、Aさんは心理学の本を読み、
自分の思い込みが
生きづらさの原因ではないかと疑い、
その思い込みに
チャレンジしようと決心しました。
そこでAさんは、
「今週一度だけでも
誰かに助けを求めてみよう」と決意し、
試しに職場でのプロジェクトで
同僚に助けを求めました。
最初は不安でしたが、
同僚は快く引き受けてくれ、
Aさんは少し安堵しました。
しかし、翌日になって
プロジェクトの進行が遅れていることが判明し、
Aさんは「他人に頼んだから遅れが出たのだ。
やっぱり頼むべきではなかった」
と後悔しました。
実際には、プロジェクトの遅れは
他の外部要因が原因であり、
同僚の助けを借りた部分は
順調に進んでいました。
にもかかわらず、
Aさんはそれに気づかず、
「やはり人に頼ると物事はうまくいかない。
自分で全てをやるしかない」
と確信を強めてしまったのです。
その結果、Aさんの思い込みは
一層強まってしまいました。
このストーリーからもわかるように、
確証バイアスが働いているため、
間違った思い込みでも
正しいと確信してしまうのです。
自分の思い込みに
チャレンジしようとしても、
その結果として思い込みが
強まってしまうことが多いため、
思い込みを緩めることは難しい
ということです。
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では、どのようにすれば
生きづらさの原因となる思い込みを
緩めることができるのでしょうか?
その答えは、
生きづらさの原因となっている思い込みを
緩めるという「明確な目的」を持ち、
その思い込みが
必ずしも正しいわけではないことを
証明することです。
ここで「明確な目的」
を持つことがポイントです。
たとえば、
先ほどのAさんのケースで言えば、
「他人に頼るのは悪いこと。
自分ですべてやらねばならない」
という思い込みが
必ずしも正しいわけではないことを
証明するために行動を起こす必要があります。
その際、Aさんの思い込みだけを
考えるのではなく、
別の適応的な考え方を
取り入れることが必須です。
なぜなら、
これまでの思い込みだけに
焦点を当て続けると、
確証バイアスが働き、
それが正しいと感じてしまうからです。
まず最初に、生きづらさの原因
となっている思い込みに代わる
「適応的な考え方」を見つけることが
求められます。
「適応的な考え方」の見つけ方に関しては
以前のブログ記事を参照してください。
Aさんは次のような
適応的な考え方を見つけました。
それは、「他人に助けを求めることは、
人間関係を強化し、長期的には
物事がよりスムーズに進むようになる」
というものです。
適応的な考え方を見つけた上で、
その有効性を証明することができれば、
生きづらさの原因となっている思い込みを
緩めやすくなります。
つまり、古い思い込みに対抗する
適応的な考え方の有効性を
証明することが大切なのです。
適応的な考え方とは、
生きづらさを軽減してくれるような
考え方を指します。
もし、Aさんが同僚に
プロジェクトの一部を頼む
という行動を取った場合、
翌日にプロジェクトの進行が
遅れていることが判明し、
「他人に頼んだから遅れが出たのだ」
という自動思考が浮かぶかもしれません。
しかし、「よくよく考えてみれば、
遅れの原因は他の外部要因もあるし、
同僚の助けを借りることで
人間関係の強化ができた。
そのおかげで、今後はもっと協力的な関係になり、
仕事がよりスムーズに進むかもしれない」と思い直し、
適応的な考え方の有効性を
少しでも感じられれば、大きな進歩です。
いきなり今までの思い込みを
完全に捨てることは難しいですが、
適応的な考え方の有効性を証明するために
日々小さな行動を積み重ねていけば、
徐々に昔の思い込みを緩めて、
自分自身を楽にすることも可能です。
「他人に依頼する」という行動を通じて、
長期的に人間関係を強化し、
これまでよりも効率よく
物事が進む経験を積むことで、
適応的な考え方を強化し、
生きづらさの原因となっていた思い込みを
緩めることができるのです。
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今回は、生きづらさの原因となる
思い込みを緩められない理由と、
それを緩めるためのヒントについて
お話ししました。
私たち人間は「確証バイアス」
という認知の歪みを持っています。
脳は自分の思い込みに
合致する情報だけを集め、
記憶する傾向があります。
逆に、思い込みに反する情報は
目の前にあっても見逃してしまいます。
そのため、
自分の思い込みに合った証拠が多く集まり、
思い込みが正しい
と信じ込んでしまうのです。
これが、
生きづらさの原因となる思い込みを
緩められない理由です。
不当な思い込みを緩めるためには、
まずその思い込みが
生きづらさの原因となっていることに気づき、
その思い込みを緩めるという
「明確な目的」を持って
行動することが大切です。
その思い込みが
必ずしも正しいわけではないことを
証明するために行動を起こすのです。
その際には、自分の思い込みとは別の
新しい「適応的な考え方」を
見つけることが必要です。
そして、その適応的な考え方の有効性を
証明するために行動してみます。
行動によって新しい考え方が
うまくいっていることを体験できれば、
今までの不当な思い込みも
徐々に緩んでくるでしょう。
いきなり手放すことは
難しいかもしれませんが、
少しずつ行動を通じて
新たな考え方へ移行することも可能です。
もし、生きづらさの原因となる
思い込みに気づいたなら、
別の適応的な考え方を見つけ、
その有効性を証明する方向で
行動してみましょう。
それによって、これまでよりも
心穏やかに
生きられるようになるでしょう。