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恐怖症との付き合い方:特定なものへの異様な恐怖にどう向き合う?

高所恐怖症、広場恐怖症、閉所恐怖症、
鋭いモノや尖ったモノに対する恐怖症、
そして、特定の虫や蜘蛛に怯える恐怖症など、
恐怖の対象はさまざまですが、
それに異様なほどの恐れを感じ、
避けてしまう人は
意外と少なくありません。

そこで今回は、
恐怖症に悩んでいる方々が、
どのように恐怖症に
立ち向かえばよいのかについて
お話しします。

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まず最初に、
恐怖症を克服するための
一般的な方法を紹介しましょう。

不安や恐怖を引き起こすものに、
少しずつでも触れるようにすることで、
徐々に慣れていく
エクスポージャー法があります。

例えば、閉所恐怖症で
狭い閉ざされた空間が怖い場合、
窓のない小部屋に入ることは
恐怖に感じるでしょう。

しかし、
そんな場合でも勇気を出して
その小部屋に意図的に入り、
たとえ10秒間でも
そこに留まるように努めるのです。

ただし最初はドアを全開にして、
外がよく見える状態にすることが
大切です。

ドアの外がよく見えると
安心感が得られるからです。

ドアが開いた状態で、
狭いスペースに慣れてきたら、
空間内に居る時間を
少しずつ長くしていきます。

するといつの間にか、
抵抗感なく小さな空間に
暫く居ることも可能になるでしょう。

そうなったら、次は
ドアを閉める方向に少しだけ動かして、
隙間を減らしていきます。

この状態ではドア全開よりも
外が見にくくなりますが、
それでも未だよく見える状態です。

最初は短い時間から始め、
慣れてきたら
少しずつ時間を長くしていき、
繰り返し行うことです。

慣れるにつれて、
空間内にいる時間をより長くし、
また、ドアの隙間を
徐々に減らしていく方向に
進んでいきます。

このようにすれば、
最終的には、ドアを完全に閉めても
大丈夫になるのです!

初めは小さなところから始めて、
自分が少し頑張れば
できそうなところから
取り組むことが重要です。

そして、慣れた時点で、
少しずつ
ハードルを上げていきます。

焦ることなく、
自分のペースでゆっくり進み、
最終的には恐怖に感じたものにも
すっかり慣れ、
克服することができる方法です。

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しかし、この訓練は
口で言うのは容易ですが、
実践するのは簡単ではありません。

多大な精神エネルギーや時間が
必要な方法と言えるでしょう。

挑戦者にとっては
かなりのチャレンジが求められます。

日本人は真面目な人が多いため、
恐怖症は問題だと捉えて、
克服を考える人も少なくありません。

でも、本当に
それを克服しなければ
ならないのでしょうか?

恐怖症克服を考えるのなら、
この点をしっかりと考慮することが
重要です。

恐怖症はその人の弱みの一部
と言えるでしょう。

弱みは悪いことのように
捉えられがちですが、
よく考えれば、
弱みを持たない人など
どこにもいません。

人間である以上、
誰でも弱点があるものです。

そういう弱みがあっても、
大きな支障がなければ、
そのままで
問題ないのではないでしょうか?

克服のための
大変な苦労をコストとして、
克服できた時に得られる利益を
天秤に載せてみるとよいです。

もし得られる利益が
コストよりも大きいのであれば、
克服する価値はありますが、
そうではない場合には、
無理して乗り越えることを
考えなくてもよいでしょう。

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実は私も恐怖に感じるものが
いくつかあります。

でも、そのうちの1つは
克服できたんです!
それは「高速道路運転」でした。

以前、ハイスピードで
車がビュンビュン走る
高速道路に入ることができませんでした。

入ること自体も怖く、
一度入っても
100キロの速度で
自分が車を運転することにも
恐怖を感じていました。

そのため、長年にわたり
高速道路には
乗ることがありませんでした。

しかし、
車社会に住む私たち家族は、
子供の学校関係の行事などで
高速道路を利用する必要が
時々ありました。

そんな時でも私は怖くて
子供たちの送り迎えを
夫に頼んでいたのです。

でも、ある日突然、
夫が鬱病になり、
普通の生活がままならなく
なってしまいました。

この時、
高速道路に乗れない私は
かなり困りました。

このままでは
子供たちも今まで通りの活動が
できなくなってしまいます。

恐怖ではありますが、
私が高速道路を運転できるようになり、
子供たちの送迎をしなければ
と思うようになりました。

そこから、
私の練習が始まりました。

幸いなことに、
私の住む地域には
高速道路に入っても
すぐに出ることができる場所が
ありました。

その間は約2~3キロ。
入ってもすぐに
抜けることができます。

しかし、
そんな短い距離でも
私は極度に緊張し、
高速道路に入る直前には
ハンドルを握る手が汗ばみ、
心臓の鼓動のドキドキを
常に感じている状態でした。

「入ってもすぐに出れるから!
大丈夫だよ」と自分に言い聞かせ、
怖いけれど
思い切って入ってみました。

その後、高速道路に入って
2~3キロの距離を運転することを
何度もトライしました。

最初は恐怖が強かったですが、
やっているうちに
徐々に慣れてきて、
抵抗感なく入れるようになりました。

そしてそのうち、
「もしかしたら、
このままもう少し長く運転できるかも」
と思えるようになったのです。

その時点で、
少しだけ距離を延ばして、
次の高速道路出口まで
頑張って運転してみました。

これを何度も繰り返すうちに、
高速道路に入ることも、
そこで運転することも、
少しずつ慣れてきて、
40キロ先の場所にも
行けるようになりました。

その過程には
かなりの時間がかかりましたが、
ある時期を超えると、
あれよあれよといううちに、
140キロ離れたパーマストンノースまで
普通に運転できるようになったのです!

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高速道路運転の恐怖症を
克服して以来、
私は今まで以上に
独立した行動をとれるようになり、
夫に頼らずに子供たちの送迎も
できるようになりました。

この点でも
克服により得られた利益は
大きいのですが、
それ以上に私が得たものもありました。

それは、自分自身への
「自信」が生まれたことです。

以前は絶対に一生
こんな怖いことにチャレンジしない
とさえ思っていましたが、
自分自身でも乗り越えられることが分かり、
大きな自信を持つことができました。

これをきっかけに、
「やれば自分にもできる」という姿勢で、
他のことにも
向き合えるようになりました。

そのおかげで、
私の行動範囲も広がり、
生活そのものが
今までよりも豊かになっていくのを
感じています。

確かに、恐怖を感じながら
慣れるための訓練は
簡単ではありませんでした。

しかし、今では
挑戦して良かったと思っています。

このような場合には、
得られた利益が
克服のためのコストを上回るため、
克服する価値があったと
言えるでしょう。

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それに対して、
私のもう一つの恐怖症に関しては、
ほとんど克服する価値が
ないと考えています。

それは、「蛾」に対する
異様なほどの恐怖です。

蛾が家の中に入ってくると、
私はギャーっと大声を上げ、
騒ぎ立ててしまいます。

蛾を見ると、
異様なほど気持ち悪さを感じて、
生理的な拒否反応が起きるのです。

この点でも、
少しずつでも蛾に触れることで
慣れたほうが良いのでしょうか?

そう問えば、
その答えは明らかにノーです。

あんなに気持ち悪い生き物を
自分の近くに置いて、
慣れる努力をしたところで、
大きな利益を得ることは
まずないと思うからです。

それよりも、
自分が蛾を上手く避けるように
工夫する方が良いのではないか
と考えます。

例えば、
蛾が嫌いなアロマオイルを焚いて、
部屋に入ってこないようにしたり、
窓に網をかけてから
窓を開けるようにしたりするなどです。

自分の方から
蛾と接触する機会を減らす努力をして、
蛾を避ける方が良いと思います。

そちらの方がコストも少なく、
自分も楽になれるからです。

人それぞれ、
恐怖を感じるものは異なりますが、
どんな恐怖症に対しても、
克服するためのコストと、
克服後に得られる利益を天秤にかけて、
克服すべきかどうかを
決めるとよいでしょう。

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今までの話の内容を
まとめてみましょう。

恐怖症があるからと言って、
必ずしもそれを取り除くよう
頑張る必要はありません。

恐怖症を克服するための訓練は
多大な心的エネルギーや時間を要し、
困難なものだからです。

克服の苦労と得られる利益を考慮し、
克服する価値があるかどうかを
判断する方が賢明でしょう。

もし利益がコストを
上回るのであれば、
困難でも克服する価値はあります。

そうではない場合には、
無理をして克服しなくても
よいでしょう。

その代わりに、恐怖の対象を
上手く避ける方法に
集中することがおすすめです。

克服する場合には、
無理のない範囲で
少しずつ恐怖の対象に触れ、
徐々に慣れていく
エクスポージャー法が効果的です。

恐怖症で悩んでいる場合は、
まず克服する価値があるかを考え、
価値のあるものだけに挑戦しましょう。

価値のないものなら、
自身の弱みの一部として
受け入れることも大切です。

人間誰でも
何かしらの弱みはあるので、
気にすることは
やめましょう!