今までの人生の中で、
「消えてなくなりたい!」
と思ったことが、
何度あったことか!
追い詰められて、
どうしょうもなくなった。
もがいても、もがいても、
どうにもならず、
泥沼にはまっていくばかりだった。
暗闇の中で、
明かりも光も全く見えず、
どちらの方向へ進んでよいのかも
分からない。
こんな状況に陥り、
将来に絶望感を覚えて、
「自分が消えてなくなれば、
どんなに救われることか!」
と考えることもしばしばあった。
私は子供の頃、希死念慮を
抱くことが多かった。
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しかし、同時に
それとは相反することも
感じていた。
パニック発作に
襲われた時だ。
突然、息苦しさに見舞われて、
心拍数が極度に上がった。
「このままでは
心臓が破裂するのでは!」
と不安が私の頭をよぎった。
恐怖で身体はぶるぶる震え、
同時に頭がくらくらして、
気の遠くなるような感覚だ。
それと一緒に、
両腕に痺れや胃のムカつきも
感じていた。
「誰か助けて!
私はもう死んでしまう!」
「でも、それは嫌! 絶対に嫌!
私はどうしても死にたくない!」
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発作がおさまり、
落ち着きを取り戻した時、
私は自分の内にあった
酷い矛盾に気づいた。
昼間は「消えてなくなりたい!」
とあれほど思っていたのに、
夜になり、パニック発作に襲われた時には、
私は「どうしても死にたくない!
助かりたい!」という気持ちが強かった。
いったい、私は
死にたいのか?
それとも、生きたいのか?
自分の中で混乱した。
この矛盾が何なのか?
よく分からないまま
月日は流れていった。
でも、今では、
これがどんなことだか
理解できる。
「消えてなくなりたい!」
ということは、
「死にたい」ということではなく、
「助けてほしい!」という
SOSのメッセージだったのだ。
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このことを
分かりやすく説明すれば、
次のようになる。
高いビルの高層階に
自分がいるというスタンスだ。
自分のいる階よりも
下の階で大きな火災が起きた。
気づいた時には、
火はあちらこちらに燃え移り、
コントロールがきかなくなるほど
酷い状態になっていた。
自分はどうしても助かりたい!
でも、階段を下りて行くことは
ほぼ不可能だ。
熱風に吹かれて、
熱くて熱くて耐えられない!
窓にしがみついて、
どうにか助かりたい
と切に願うばかりだ。
しかし、どうにもならない。
そのうちに
高温の炎が
自分を襲ってきたのだ。
「嫌だ! 嫌だ!
絶対に死にたくない!
どうしても生き続けたい!」
「でも、もう苦しくて、
耐えられない!」
助かりたいと
切望しているのに、
結局は、窓の外に飛び降りて、
死んでしまうことになる。
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本当は
死にたくなかった。
生き続けたかった。
しかし、
今の自分の状況が
とんでもなく厳しくて、
逃げ場がどこにもなければ、
人はこのような気持ちになる。
死にたいのではなく、
生きていても、
どうにもならないから、
やはり、死を選ぶしかないのだ。
本当は生きたいのに、
自分の状況が
どうしょうもないほどツライから、
消えてなくなりたい!
と思ってしまう。
こういう状況で
希死念慮を抱く人は、
心底では死を希望していない。
でも、逃げ場のない窮地に
追い詰められて、
死を選ぶことしか
考えられないのが実情だ。
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どうにもならないほど
追い詰められたことのない人には
このことは理解されにくい。
でも、誰でも、
このような状況に陥ることは
あり得るのだ。
自分の今の状態からして、
そんなことは全く予想できなくても、
いつ何が起きるか分からない。
他人事ではないのだ。
よって、
「消えてなくなりたい!」
と思う人を侮蔑することは
あってはならない。
また、「自分とは無関係のことだ」
とも考えないほうがよい。
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極度に追い詰められた状態は、
高層階で火災に遭い、
熱風に晒されて、
耐えられなくて、もがく姿と
似たようなものだ。
そのまま炎と煙に包まれて、
意識を失い
死んでしまうのか?
それとも、
窓の外へ飛び降りて、
転落死してしまうのか?
実際に窮地に追い込まれた人には、
これしか選択肢がないように
思われる。
そういう状態では、
視野狭窄が起きるので、
「もう死ぬしかない」
が答えになってしまうのだ。
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しかし、本当は
無事に逃げる方法も
あるのだろう。
その時の自分には
分からないし、見えなくても、
冷静になり、
広い視野で観れるようになれば、
自分が助かる方法もあるのだろう。
おそらく、最初は
自分一人ではどうにもできない。
誰かの助けを
得ることが必要だ。
とりあえずは
炎と煙が少ない場所に待機して、
救助隊に助けて貰えば、
自分が生き延びることも可能になる。
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「消えてなくなりたい!」
という人が身近にいたら、
それは「助けてください!」という
SOSのメッセージとして
受け取るとよい。
本当は生きたいのに、
どうにもならない状況だから、
死を選ぶ選択しか
見えなくなっているのだ。
そういう人の視野は
かなり狭まっている。
周りにあることが
全く見えない状態に
なっていることもしばしばだ。
これはごく自然なことで、
誰でも追い詰められれば、
そのような状態に
なってしまうのだ。
死にたいという人に、
「命の尊さ」を説教するのではなく、
今のツライ状況を
少しでも和らげるために、
何か自分にできることがあるか?
を考えて、協力してあげるとよい。
ツライ状況下で
孤独に戦っている人に対して、
優しく寄り添ってあげるだけでも、
本人にとっては心強い。
「消えてなくなりたい!」は
「助けてください!」という
SOSのメッセージ。
そのメッセージを正しく受け取り、
適切な方法で、
溺れている人たちに
救いの手を差し伸べてあげよう!