精神科医・樺沢紫苑先生は
ユーチューブ動画で
病気を治そうとしない方がよい
とアドバイスしている。
私自身、自分のメンタル疾患を
治そうと頑張った時期があったが、
頑張れば頑張るほど
症状が重くなった経験をしている。
今日は樺沢先生が
なぜ、そのようなアドバイスをするのか
先生のトーク内容の一部を
まとめてみると同時に、
私自身の体験談も
お話したいと思う。
樺沢先生によれば、
「病気が治る」の定義が
メンタル疾患の患者さんと
精神科医との間では
大分違うということ。
多くの患者さんにとって、
「病気が治る」は
病気が発症する前の
元の状態に戻ることを
意味する。
その一方、精神科医の立場では
「病気が治る」ということは、
症状がおおむね改善した状態
で、この状態を「寛解」と呼ぶそうだ。
「寛解」は100パーセント
元の状態に戻ることを
意味していない。
100パーセント元の状態に
なり得ない理由を、
樺沢先生は2つ挙げている。
まず最初に、
メンタル疾患に限らず
どんな病気にしても
手術や薬で治しても
身体の臓器や骨などが
病気や怪我をする前と
全く同じ状態には
ならないということだ。
臓器や骨は大きなダメージを
受けるわけなので、
回復はしても、
元の状態にはなり得ないそうだ。
2つ目の理由は、
年齢を重ねるにつれて
身体は衰えてゆくからだ。
メンタル疾患の場合、
病気を3年、4年、5年と
患う人は多い。
3年で良くなった場合でも、
病気が始まった3年前より、
患者自身は年を取っているのだ。
そう考えれば、
回復後に3年若返るということは
現実的ではない。
樺沢先生はこう語る。
「メンタル疾患の患者さんは
物事を「0」か「100」かで
見る傾向にある」と。
つまり、完璧に病気が治った状態を
「100」として、
それ以外は「0」になってしまう
ということだ。
この間の「20」とか「30」
という数字は全く存在しない
ことになる。
半年前は「0」だったとしても、
今は「30」まで改善した、
と医者が感じることがあっても、
患者さんは「いや、治ってません」
と言い張るそうだ。
「0か100の思考」でいれば、
ちょっとした改善があっても
満足できないのだ。
「症状が大分治まってきた
という状態を喜んで、
良しとする姿勢がなければ、
病気はいつまでたっても
治ることはない」
というのが樺沢先生の
トーク内容の重要なポイントだ。
ここからは、私自身の体験談
を紹介する。
私自身も自分の病気の症状を
忌み嫌って、自分の中から
病気を取り除こうと
頑張った時期があった。
でも、病気を追い出そうと
すればするほど、
私の症状は悪化していった。
当時の私は、
「自分の精神が弱いから
このようになる」と思い込み、
自分自身を情けなく思い、
罪悪感や無力感で
いっぱいだった。
自分の病気の症状が
悪くなったり、少し良くなったりを
繰り返すうちに、
私はあることに気ついた。
それは、「病気に対する
とらわれが私を病ませる」
ということだ。
病気を治そうと頑張る時、
私は病気に対して
大きなとらわれをしている
ことに気づいた。
そうなれば、病気に
フォーカスが当り
病気のことしか頭になく
他のことが見えなくなる。
結果的には、症状も強化されて
より苦しくなるのだ。
逆に「もういいか」
と諦めてしまった時、
病気へのとらわれは
消えてゆき、
病気以外のことに
目を向けることが可能になる。
そうなれば、症状も薄れてゆき
ラクになれるのだ。
もちろん、病気が自分の中に
あることは分かっている。
でも、とらわれが無い分、
病気だけにフォーカスが
行かなくなり、
症状に対する感じ方が
違ってくるのだ。
元の状態には
絶対にならないと
分かり切っている場合、
不可能なものを、
可能にしようと頑張っても、
上手く行くはずがなく、
それが原因でフラストレーションが
溜まり、病んでしまうこともある。
基本的には「できること」と
「できないこと」を正しく理解して、
「できること」は努力をするが、
「できないこと」は諦めてしまった方が
人生ラクに生きられる
と分かった。
長い年月を経て、
私は自分の病気を
受け入れられるようになった。
症状がある時には
「自分は病気なんだから
仕方ないか」と受け入れる。
病気を治す努力はしないので、
病気にとらわれることもない。
病気を自分の隅っこに
置いてはおくが、
自分自身は生活において
大切なこと、やるべきことに
集中するようにしている。
このやり方で、
けっこう、病気と
上手く付き合えるようになった
と思っている。
最後に誤解を避けるため、
ちょっと一言。
「病気を治すのはやめなさい」
という時、
薬を止めてもよいとか、
通院しなくてもよいと
言っているわけではない。
そうではなく、
処方された薬はきちんと服用して
食事や運動や睡眠など
生活習慣に気をつける点では
努力は必要だ。
病気になる前の状態
を目指す完璧主義は止めて
ちょっとでも改善することに
満足を得ること。
また、病気にとらわれることなく
病気は自分の隅に置いておき、
自分にとって大切なことに
集中する姿勢が
重要だと思った。
とらわれがなくなれば、
病気は自分のほんの一部で
それ以外に自分には
別の面がたくさんある
ことに気づく。
そういう他の面に
フォーカスを当てて
生きた方が
豊かな人生を送れると
信じている。
樺沢先生、素晴らしいトークを
有難うございました。
参考動画:「病気を治すのはやめなさい」
(ユーチューブ 精神科医・樺沢紫苑先生)