人間関係における健全な依存と病的な依存:その違いは?

今回は、
人間関係における「依存」に
焦点を当てた話です。

人間関係の依存には、
望ましいものと、
そうではないものがあります。

望ましい依存は
「相互依存」と称され、
互いに幸せをもたらす関係性で、
私たちが目指すべき目標
と言えるでしょう。

一方で、望ましくない依存は、
「共依存」と呼ばれる関係で、
これに陥ると、健全でなく
生きづらい人生を歩むことも
少なくありません。

この記事では、
これら2つの依存関係を
詳しく掘り下げ、
その違いに注目してお伝えします。

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相互依存と共依存の違いは何?

相互依存は、心理的に
自立している人々の間で形成される、
健全で成熟した関係です。

それぞれが
自分自身の感情や行動に責任を持ち、
同時に相手を尊重し、
必要なときにはサポートし合います。

双方が適度に甘え合いつつ、
個々の自立も
しっかり保っています。

お互いに、
相手が自分とは異なる
独立した人間であり、
考え方、感じ方、価値観が
異なることを理解しています。

自己の課題と相手の課題を
明確に区別し、
適切な境界線を
引くことができています。

自分の感情や欲求を
大事にするとともに、
相手のそれも重んじ、
平等な関係性を維持しています。

このタイプの関係性では、
お互いを束縛せず、
バランスが取れており、
個人の成長や自己実現を
促すことも可能になります。

パートナーが互いを支え合いつつ、
自分の趣味や友人関係も
大切にすることができます。

対照的に、共依存は
互いに過度に依存する
不健全な関係です。

この関係では、
精神的な自立が欠け、
相手の感情や行動に対して
過剰に関わり、
コントロールしようとする
傾向があります。

共依存の典型的なパターンとして、
一方のパートナーが
他方を「救う」必要性を感じ、
過剰に保護的になることがあります。

相手に尽くすことで
自己の価値を見出し、
結果として、尽くす側も
相手に心理的に
依存することになります。

相手を救うために、
相手の問題に介入し、
相手の境界内に過度に踏み込み、
過保護になることで、
自分と他者の境界が
曖昧になるのが特徴です。

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共依存の例: アルコール依存症の夫を持つ妻の献身

共依存の例としては、
アルコール依存症の夫を持つ
妻の献身が挙げられます。

たとえば、夫が飲み過ぎて
翌朝起きられない場合、
妻は夫に代わって会社に電話し、
夫が体調不良であると
(虚偽を伝えることになる)伝えます。

妻は、夫が会社での信用を
失うことを懸念して、
夫に代わって
このような対応をするのです。

一見、思いやりのある行動に
見えますが、実際には
この妻の行為は
望ましいものではありません。

なぜなら、
妻が夫を過保護にすることで、
夫のアルコール依存症を
さらに助長する
恐れがあるからです。

夫は、妻が面倒を見てくれるため、
自分は何もしなくてもよいと思い、
妻に甘え続けるようになります。

その結果、夫はますます
子供返りすることになり、
現状を維持する傾向が強まり、
アルコール依存症からの脱却が
困難になるでしょう。

妻は、表面上は
献身的で立派に見えても、
実際には夫の自立を
妨げているのです。

妻が夫の代わりに行動することは、
二人の境界線が
曖昧である証拠であり、
健全ではない関係を示しています。

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妻は夫のアルコール依存症が治らないことを望んでいる!

このケースでは、妻は表面上は
夫のアルコール依存症が
早く治ることを願っています。

夫が二日酔いで
出勤できなくなる状況から脱却し、
健康的な生活を取り戻せれば
と思っています。

しかし、
実際には妻の心の奥深くでは、
夫が依存症のままでいてほしい
という望みがあります。

この心底の望みに妻自身が
気づいていない場合もありますが、
実は夫が現在の状態を続けることを
無意識に望んでいるのです。

意識していることと、無意識が
真逆の状態になっていますが、
なぜ、そうなのでしょうか?

それは、妻自身が夫の現在の状態に
依存しているからです。

夫の世話をすることによって、
妻は自分自身の
存在価値を見出せるのです。

妻は夫が
過保護を必要とする状況において、
「この人は私がいなければダメなんだ」
と心の中で考えているでしょう。

妻は夫に尽くすことで、
自己の価値を
感じることができるわけです。

夫に尽くすことがなくなれば、
自分自身の価値を
見出せなくなるのでしょう。

この問題の根底には、
妻自身の自己肯定感の低さが
潜んでいます。

そのままの自分自身では
価値のない存在だ
と思い込んでおり、
夫の面倒を見ることで
はじめて自分に価値が
生まれるのです。

結局、妻は
自分の価値を感じるために、
夫に心理的に依存している
と言えます。

この場合、妻は自身の
自己肯定感の低さから
夫に対して過剰な献身を
無意識にしてしまうわけなのです。

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共依存はアルコール依存症の人たちだけではない

共依存という概念は、もともと
アルコール依存症を持つ人々の家族や
パートナーに関する研究から
生まれたものです。

依存症のパートナーが、
依存症の相手の問題に過度に関わり、
問題解決を通して
自己価値を見出し、
依存症の人を救うために
自分のニーズや健康を
犠牲にするパターンがこれに当たります。

しかし、このパターンは
アルコール依存症に限らず、
現在ではさまざまな状況において
共依存の概念が
適用されるようになりました。

たとえば、
過保護な親子関係も
共依存の一形態と言えます。

過保護な親は、子どもが失敗したり、
傷ついたり、嫌な経験をしないように、
親が先手を打って
子どものすべきことを行ったり、
子どもの課題を取り上げてしまうことが
よくあります。

子どもに苦労をさせたくない
という強い願望が原因で、
このような行動に出るわけですが、
過保護にされた子どもは
自立の機会を奪われ、
精神的成熟が難しくなります。

また、親は「この子は
自分がいなければ生きていけない」
と考えることで、親としての
自己価値を感じているのです。

これは親の精神的な未熟さの
表れであり、親自身の
自己肯定感の低さを示しています。

このような親子関係は
不健全であり、
長期的に見て、双方にとって
マイナスの影響を
及ぼすことも多いです。

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健全で望ましい相互依存関係

共依存とは異なり、
健全な相互依存関係にある人々は、
自尊心も高く、
心理的に自立している傾向にあります。

自分と相手の間には
適切な境界線が引けており、
自分は自分の課題に集中し、
相手の課題に無用な干渉はしません。

もちろん、人間である以上
完璧な自立は不可能でしょう。

人には自分の得意なこと、
苦手なことがあり、
できること、できないことが
あるからです。

自分ができないことは
他者の助けを
借りることが必要です。

そして、自分は相手ができない部分で
サポートを提供して、互いに
助け合うのが人間の実情でしょう。

相互依存関係は一方的ではなく、
双方が対等に甘え合える
関係性であり、
「持ちつ持たれつ」の関係
と言えるでしょう。

相互依存関係にある人々は、
相手が自分の
思い通りにならないこと、
相手と自分の感じ方、考え方、
価値観、好みが異なることを理解し、
受け入れています。

そのため、
相手をコントロールしようとはせず、
相手が自分の期待通りにならなくても
相手を責めることはありません。

自分が望むことを
相手から断られた場合にも
がっかりはするものの、
それが原因で相手との関係性が
壊れることもありません。

自分が嫌なことを
相手から依頼された場合は
きちんと「ノー」と言うことができ、
自分の気持ちを大切にすることも
できます。

自分の気持ちや欲求を
大事にすると同時に、
相手の気持ちや欲求をも
尊重できているのです。

親密な関係性においては、
双方が幸せで
長続きする関係性を保つには、
相互依存関係になることが
重要なのです。

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目指すは相互依存関係!

私たちが人間関係において
目指すべきは、
相互依存関係です。

これは精神的に成熟した
健全な関係性であり、
お互いが幸せになり、
持続可能なものだからです。

では、共依存に陥りやすい人が
相互依存関係を築くためには
どうすればよいのでしょうか?

その答えは「自己肯定感」を
高めることです。

自己肯定感が増すにつれ、
他者との相互依存関係が
築きやすくなるからです。

自己肯定感を高める方法は、
「自己受容」に徹することです。

自己受容とは、
ありのままの自分を受け入れること、
具体的には、自分の感情を
そのまま受け入れることです。

私たちはさまざまな感情を持ちます。
それには喜び、感謝、安らぎ、
興味、希望、誇り、楽しさなどの
ポジティブなものもあれば、
怒り、悲しみ、不安、焦り、憂鬱、
苛立ちなどのネガティブなものも
含まれます。

たとえネガティブな感情が
生じたとしても、
それをそのまま受け入れ、
感じることが大切です。

どんな感情も、良いか悪いかを
判断せずに感じて味わうのです。

悲しいときには
「悲しいね、悲しんでもいいんだよ」
と自分にささやきかけて、
その感情を味わい、
受け入れることが自己受容と言えます。

同時に、自分の課題に集中し、
他人の課題には不必要に
干渉しないことが不可欠です。

自分の権利を守るために、
嫌なときははっきりと「ノー」と言い、
自分と他者との間に
適切な境界線を引くことが重要です。

また、相手が相手の権利を守るために
「ノー」と言った場合、その拒否を
快く受け入れることも大切です。

自己受容が進むほど、
自分と他者との間に
適切な境界線が引きやすくなるでしょう。

共依存に陥っているかもしれない?
と自覚することがあれば、
自分の感情をありのままに
受け入れる練習をするとよいでしょう。

これを意識して続けることで、
自己受容が進み、
他者を本当の意味で受容し、
尊重できるようになります。

自己受容を意識し、
相互依存関係を築くことを
目指しましょう!