50歳を過ぎてから、私はニュージーランドでカウンセリングを受けた。最初のうちは週2回、少し慣れたら週1回、そのうち2週か3週に一回の頻度でセッションに通った。1年半の期間、合計60回前後セッションを受けた。私はカウンセリングから予想以上の恩恵を得られたと思っている。カウンセリングは私にとって、良い自己投資だったと満足している。
なぜ、私にとってカウンセリングが役に立ったか? その理由は次の通りだ。
上記3点を詳しく説明しよう。そのあと、カウンセリングを受けるときの注意点も併せてお話したい。
1)自分がなぜ苦しんでいたか明確になった
私がカウンセリングを受けようと思ったのは、長年、自分自身にシックリこない部分があったからだ。自分は何かが欠けていると感じていた。でも、具体的に何が欠けているのかは分からなかった。また、他人と自分とを比べて、自分は変な存在であり、何かがおかしいと感じていた。
カウンセリングを受けてから、自分が複雑性PTSDで苦しんでいることを知らされた。それ以前に自分自身が変に感じていたことが、複雑性PTSDの症状の一つであることを知った。
フラッシュバックがそのうちの一つだ。私は時々、誰かと話をしているとき、突然、気分が急降下するときがある。自分の気分の落ち込みを感じて、近くにいる人々と上手く接することができなくなる。話を始めたときには大丈夫でも、突然、その現象は起こり、自分が普通に機能しなくなる。周りの人たちは、そんな私を「変な人」だと思っていただろう。私自身も、なぜそのようになるのか分からず、自分のことを情けなく、劣った人間だと思っていた。そのため、自分のことを責めてきた。
私のカウンセラーによれば、私は「人間関係のトラウマ」があるらしい。おそらく、私は他人のちょっとした表情や言動で、過去に虐めに遭った時のことを思い出し、フラッシュバックが起きるのだろう。今ではそのように理解している。
そのことを知らなかったときには、私は自分のことを責めて、劣等感、罪悪感まで抱いていた。「どうして、自分はこうなんだ?」と嘆いていたのだ。
カウンセリングのお陰で、こういう現象は複雑性PTSDに苦しむ人の典型的な症状であると知り、私の気持ちもラクになった。自分の奇妙な現象を「まあ、仕方ないんだ」と受け入れられるようになった。
2)今まで気づかなかったことを、気づく機会になった
私は内向型人間で、他人と話をするよりも、自分の心の内で会話を楽しむことが多い。身の回りに起こることを色々考えて、自分の中で様々な思考が飛び交っている。自分自身について考えることもしばしばだ。
カウンセリングを受けて分かったことがある。今まで一人で色々考えてきたが、同じ角度で自分のことを見つめ、ある意味、堂々巡りをしていたかもしれないと気づいたのだ。
自分にとって一番近い人間関係にあるのが自分自身。そんな自分のことを客観視するのは容易でない。分かったつもりでいても、自分自身について知らないことはたくさんある。
カウンセラーは、今まで私とは全く人間関係のない赤の他人だ。そういう第三者の立場の人から、私のことを客観的に観て貰うことができたと思う。
カウンセリングを始めたばかりのとき、私はカウンセラーから自分の言葉使いをたくさん直された。私が普段普通に使っていた言葉は、カウンセラーにとっては、かなりネガティブで好ましくない言い方だったらしい。何度かセッションを受けるうち、どのような表現をすれば、カウンセラーから言葉の注意を受けるか予想がつくようになった。このとき、私は自分の言葉遣いの癖に初めて気がついた。もし、カウンセリングを受けていなければ、私はこのことに気づくことはなかっただろう。
今では、私も昔の自分の話し方の癖が良くなかったと理解できた。カウンセラーから、自分では観ることができない自分自身の癖を教えて貰うことができた。
3)混乱していた頭の中が整理された
セッションではカウンセラーが私に色々な質問をしてきた。内容は様々で、その日に自分が何をしたとか、家族との生活のこととか、日本の実家のこととか。私は実の両親との関係が良くなかったので、両親との人間関係についてもたくさん話した。
カウンセラーと話すことで、今まで自分の頭の中で混乱していたことも、整理できたと思う。私にとって特に役立ったのは、今後の両親との向き合い方について決心がついたことだ。
それまで、私は両親の気持ちや行動を自分の都合の良いようにコントロールしようとしていた。でも、カウンセリングを受けるまで、私はそのことに気づいていなかった。このことが分かってからは、両親は自分がコントロールできる範囲外であると理解して、自分の心の内で両親と和解しようと決断できた。
これはカウンセラーから「そうしなさい」と言われたのではなく、カウンセラーとお話するうちに、「自分の内で和解することが最善なオプションだ」と思えた。
以上がカウンセリングを受けて良かったことだ。
時々、信頼できる親しい友人に心の問題を相談する人の話を聞く。まあ、それもありかもしれないが、私自身は、友人に相談するよりも、カウンセラーに相談した方が良いと思っている。その理由は、カウンセラーはクライアントの問題解決をお手伝いすることにコミットしているからだ。
友人との会話であれば、今まで自分の問題点を話していても、ふとしたことで話題が別に反れてしまうこともある。そして、本来の目的とは違った方向に会話が進んでしまうのだ。
親しい友人であれば、私に遠慮して本当のことを言えない場合もある。人間関係が親密であれば、私と友人との間に利害関係がある場合も少なくない。
そのため、適切な問題解決にならない場合も多いだろう。
次に、カウンセリングを受けるときの注意点をしてみたい。
まずは、カウンセラーとの相性について。カウンセラーはその道で専門的なトレーニングを積んでいる人だ。でも、カウンセラー自身も人間なので、クライアントと合う合わないがあるだろう。もし、カウンセリングを始めてみて、最初の2~3回セッションを受けたあと、あまりシックリこなかったり、イマイチだと感じた場合は、別のカウンセラーに変えて貰った方がよい。
カウンセラーとクライアントとの間に信頼関係が結ばれなければ、カウンセリングセッションから良い結果を期待するのも難しい。
私はカウンセリングを受けてから、自分自身の認知のゆがみを知らされた。それまでは気がつかなかったが、私はかなり度の強い色眼鏡をかけて世界を見ていたと思う。
カウンセラーは認知のゆがみがないのか? と考えるとき、その答えは「ノー」である。カウンセラーも人間である以上、認知のゆがみはあるはずだ。
そう考えれば、カウンセラーが言ったことだから「絶対正しい」と思わない方がよい。自分自身に役立つことなら受け入れれば良いし、そうでない場合は、一つの参考意見として聞くだけでもいいと思う。
今日は、私がカウンセリングを受けてみて、良かった点や、カウンセリングを受けるときの注意点などをお話してみた。もし、この話があなたのお役に立てれば幸いだ。