自分が複雑性PTSDで苦しんでいると分かって以来、私は薬の服用を始めた。現在私が飲んでいる薬はアミトリプチリン。三環系抗うつ薬の一種だ。子供の頃、私のメンタル状態が一番酷かったとき、私は様々な身体の不快な症状に苦しんだ。あれから40年ほど経った今では、その当時私を苦しめた症状のほとんどがなくなった。しかし、あのときから今でもずっと続いているものもある。その一つが「不眠」だ。不眠対策のため、私はアミトリプチリンを処方された。
薬のお陰でよく眠れるようになったかと言えば、微妙である。ただ、以前のように頭の中で雑念がグルグル回ることは少なくなった。そのため、「今ここ」に意識を向けるマインドフルネスの実践がラクにできるようになった。おそらく、この薬は間接的に睡眠に少しだけ良い影響を与えているかもしれない。でも、睡眠の改善に関しては、自分自身が試行錯誤で見つけた様々な快眠法の方が、私にとってはよっぽど役立っていると感じている。
子供時代からずっと引きずっている症状は他にもある。膀胱に尿が少量しか溜まっていないのに、強い尿意をもよおし、頻繁にトイレに行くことだ。
学生の頃は、この症状に捉われて、かなり悩んでいた時期もあった。しかし、大人になってから、「もういいよ。トイレに行きたくなったら行けばよい」と開き直った。すると不思議なことに、その症状は軽くなっていった。頻尿に意識を向ければ向けるほど、トイレに行く回数が増える。でも、「まあいいか」と諦めて、他の作業に没頭して、そのことを忘れてしまえば、あまり尿意をもよおさないのだ。
長距離バスに乗るときなど、トイレに頻繁に行けなくなる状況下では、今でもかなり緊張するが、それ以外のときには、あまり考えないようにしている。「行きたくなったら行けばいい」と軽く考えていれば、この悩みに捉われることなく、普通に生活できるようになった。
もう一つの不快な症状は、空気をたくさん飲み過ぎて、お腹の中にガスが溜まり腹痛を起こすことだ。これは、私が高校生のときから始まったことで、最初はあまりの激痛で病院へ駆け込むほどだった。緊張して身体がコチコチになるときに、この症状は出やすい。アミトリプチリンを服用し始めてから、この問題はかなり改善された。未だにガスのためにお腹が痛いと感じることはあっても、以前のような激痛はすっかりなくなった。
余談だが、お腹のガスで腹痛を起こす人は少なくないらしい。そのため、薬局へ行けば「ガス抜きの錠剤」を購入できる。錠剤は薬品というより、「ミント」などの自然の素材から作られたもので、副作用などを心配することなく使用できる。ハーブ茶(カフェインなし)のペパーミントティーもガス抜き効果があるということだ。もし、お腹のガスで苦しんでいる人がいれば、これらの商品を試してみる価値もあると思う。
子供の頃に頻繁に発作があったパニック症に関しては、すっかり落ち着いた。ただ、時々、パニック発作に襲われる前段階のような身体の感覚を感じることがある。私の場合は、お腹がすき過ぎたときにそうなるようだ。つまり、血糖値が低くなったときに起こるのだろう。そのため、私は自分のバックの中に小さなスナックの袋を入れておき、必要があれば食べるようにしている。このような工夫をするだけで、パニック発作とは10年以上も無縁である。
対人関係については、私にはまだまだ多くの課題が残っていると思う。それでも、以前のように、自分が変だからといって、劣等感や罪悪感を持つことは少なくなった。「私は病気だから仕方ない」と自分の病気を受け入れて、それ以上は、あまり考えないことにしている。変な自分を許してあげて、自分を責めることは止めた。軽い気持ちで「まあ、いいか」と病気に捉われることを止めたのだ。
自分が強度の色眼鏡で世界を見て、歪んだ現実を作り出していたことも理解できたので、何か対人関係で問題が起きた時には、意識的に自分を客観視するように努めている。時には、自分一人で解決できない問題に遭遇するときもあるが、その場合は、躊躇うことなく、カウンセリングサービスにヘルプを求めることにしている。
こんな感じで、以前よりはずっと質の高い生活を送れるようになったと思う。
同じ精神科の病名がついても、人によって何に困っているのかは違うだろう。日常生活にあまり支障がないのなら、そのことに捉われないのが一番だと思う。もし、日常生活に困るほど強い症状が出たり、悩むことがあれば、医師やカウンセラーに相談して、その対処方法を考えるようにすればよいだろう。
PTSDがあるからと言って、365日24時間、PTSDの症状で苦しんでいるわけではない。むしろ、健常者と同じように、自分が大切なことや、日々の活動に専念しているときの方が多い。時々、ちょっとしたことでフラッシュバックが起きたり、体調が悪くなることもある。でも、そのときは「仕方ないよ」とあまり深く考えることなく、その状態を受け入れてしまっている。
病気をそのまま受け入れて、それに捉われないようにすることが、私にとっては心身両面において、一番良い状態になる方法だと確信している。