「自分に素直に生きれば
自己実現できる! だから
本当の自分を知りましょう」
といったフレーズが、
今や多くの人々に
語られるようになりました。
その影響で、「自分探し」に
取り組む人が増えているようです。
この記事では、「本当の自分」を
見つけるためにできる
具体的な方法と、
「自分探し」において
陥りがちな落とし穴について
お話しします。
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「本当の自分」とは、
どんな自分のことでしょうか?
今の自分は
本当の自分では
ないのでしょうか?
「自分探し」を試みる人々の中には、
「今の自分とは別に
本当の自分がいるはずだ。
今の自分は偽物だ」
と考える人も少なくありません。
そして、「本当の自分」を
発見した際には、
今までの自分を捨てて
新たな自分になろう
とすることがあります。
そうすることで、
自己実現ができると
信じているからです。
しかし、これでは
的外れな「自分探し」に
終わってしまうことも
少なくありません。
本当の自分を
見つけるためには、
自分について
今まで気づかなかったことを
発見する必要があるでしょう。
これは確かなことだ
と思います。
しかし、その発見をした後、
今までの自分を「偽物」だ
と捨ててしまうと、
「本当の自分」に到達することは
難しくなるでしょう。
なぜなら、「本当の自分」とは、
今までの自分と
新たに発見した自分の
両方を含むものだからです。
本当の自分とは、
自分の中にある
さまざまな側面や性質、価値観を
すべて包括するものです。
つまり、自分の多様な側面を探求し、
価値観や好みを
深く理解することが
「本当の自分探し」と言えます。
新たな自分を発見したとき、
その新たな側面を
自分の一部として
受け入れることが重要です。
そして、今まで知っていた自分も
否定せずに
大切にすることが必要なのです。
過去の自分も
新たに発見した自分も含めて、
多面性を持つ自分を
受け入れることが、
自己実現の鍵となるでしょう。
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普段の自分は
よく理解していると思いますが、
自覚できない部分の自分を
どう見つければよいでしょうか?
そのためには、心の奥底に
抑圧されたものの存在に
気づくことが役立ちます。
ここでは、
そのための方法を
一つご紹介しましょう。
あなたには
特定の相手に対して
無性に腹立たしく感じたり、
イライラする経験はありませんか?
その相手はどんな特徴を
持つ人でしょうか?
そして、
その人のどんな部分が
あなたをイラっと
させるのでしょうか?
じっくり考えてみてください。
次に、その特徴があなた自身にも
あるかどうかを考えてみましょう。
もしかすると、あなたはその特徴とは
無縁だと思うかもしれません。
しかし、実はその特徴が
あなたの心の奥底に
隠れている可能性があります。
これは、あなたがその特徴を
良くないことだと信じているため、
無意識のうちに
それを抑圧しているのです。
たとえば、優柔不断な人を見ると
イライラするとしましょう。
あなた自身は即断即決で
テキパキと決めるタイプで、
優柔不断とは正反対です。
そんなあなたが、
決断に時間がかかる人を見ると
「早く決めてよ!
なぜそんなに迷うの?」
とイラっとすることでしょう。
しかし、この場合、
あなたの心の奥底には
「優柔不断でありたい」という欲求が
隠れている可能性があります。
それを悪いことだと信じているため、
自分でも気づかないうちに
抑圧しているのです。
もし優柔不断なことを
悪いことと思わなければ、
優柔不断な人がいても
イラっとすることはないでしょう。
このように、あなたが他人に対して
強く反応する場合、
自分の心の奥底に隠れた欲求や感情が
隠されている可能性があります。
自分の内面に向き合い、
その気持ちに
気づいてあげることで、
本当の自分を発見する
手助けとなるでしょう。
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自分の中にある
抑圧された感情や欲求に気づくことが、
「本当の自分」に近づくための
第一歩です。
しかし、
「優柔不断でありたい気持ちが
抑圧されている」と言われても、
しっくりこないかもしれません。
そこで、
優柔不断な性質の背後にある
自分の感情や欲求を
探ってみるとよいでしょう。
たとえば、「私も
間違った決定をするのが
怖いときもあるのかな?
あとで後悔することにならないか
不安なときもあるのかな?
だから、十分に考えて
時間をかけて決めたいと
思う時もあるのかな?」というように、
「優柔不断」という性格を、
「怖い」「不安」という感情や、
「時間をかけて
十分に考えてから決めたい」という
欲求に翻訳してみるのです。
こうすることで、
その感情や欲求に
気づきやすくなるかもしれません。
もし、その感情や欲求に
気づけたならば、素直に
それを受容してあげましょう。
「ときにはテキパキと
決断するのが怖いよね。
不安になるときもあるよね。
でも、それでいいんだよ」
と受け入れてあげるのです。
自分の中に、
間違った決定を恐れる気持ちや、
ゆっくりじっくり考えてから
決めたいという欲求があったのに、
それらを抑圧して
一生懸命頑張ってきたのであれば、
自分をしっかりねぎらってあげましょう。
そして、「心の底には、
間違った決定をすることを
怖れる気持ちや、
ゆっくりじっくり考えてから
決めたいという欲求があったんだね。
それでもいいんだよ。人間なんだもの。
今後そんな気持ちや欲求に気づいたら、
大切にするね」と、自分自身に
ささやきかけてあげてください。
今までの優柔不断でない自分も
確かに自分の一部です。
それと同時に、
優柔不断でありたいと思う自分も、
自分の一部として
受け入れてあげましょう。
それらは両方とも自分なのです。
これらすべてをひっくるめて
自分自身を受け入れる姿勢が、
「本当の自分」を発見し、
「自己実現」をする上で大切です。
今まで自分の中で
「好ましくないもの」「悪いもの」
として抑えてきた感情や欲求に気づき、
それらを自分の一部として受け入れ、
その居場所を見つけてあげることが、
自己受容を深め、
自己実現を進める鍵となるでしょう。
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ここで多くの人が陥りがちな
「自分探し」の落とし穴
について考えてみましょう。
さきほどの例に戻れば、
「本当の自分は優柔不断だったんだ。
今までテキパキと
物事をこなしてきた自分は
偽物だったんだ」と考え、
偽物の自分を排除して
本当の自分に徹しようとすると、
落とし穴に落ち、
行き詰まることがあります。
「本当の自分」と「偽物の自分」を
二分して捉えること自体が
適切ではないからです。
「本当の自分」を見つけたとき、
今までの自分を「偽物の自分」として排除し
「本当の自分」だけで生きようとすると、
心の中で分裂が起こり、
生き方が一面的になってしまうでしょう。
その結果、生き方が浮ついてしまい、
地に足のついた生活から
遠のいてしまうのです。
本当の自分探しは、
自分の中に隠れている
多面的な要素を見つけ、
相反する面も統合して
両方を育んでいくことです。
いきなり今まで抑圧してきたものを
本当の自分とし、
今まで大事にしてきた考えや価値観を
偽物の自分と考えると、
どうなるでしょうか?
「ホンモノ 対 ニセモノ」という
二元論で割り切るのは
シンプルで楽に
思えるかもしれませんが、これでは
表面の自分と裏の自分を
単に逆転させただけで、
両方の統合にはつながりません。
実際には、
どちらの自分も自分自身であり、
すべてを含めたものが
「本当の自分」なのです。
「本当の自分」とは、
偽物との対比で考える
ホンモノの自分ではなく、
さまざまな側面を持つ多面的な自分です。
そのような多面的な自分を受け入れ、
自分らしく生きることが、
人生をより豊かにするためには
必要なのです。
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自分探しを進める中で、
新たな自分の側面を見つけたとき、
それは今までの自分と
矛盾して感じられることも多いです。
たとえば、
「前向きな自分」と「落ち込む自分」、
「頑張り屋の自分」と「怠け者の自分」、
「人に気遣いする自分」と
「自己本位の自分」などです。
これらの相反する側面を
うまく融合させることができれば、
より豊かな自分、
深み、厚みのある自分に
なれるでしょう。
矛盾する要素を
統合することこそが、
人を進化成長させるのです。
「前向きな自分」と
「落ち込む自分」が統合されると、
「悲しい時には悲しむことができ、
他者の悲しみにも深く共感し、
そのうえで前向きに
建設的に生きていける自分」へと
変われるかもしれません。
「頑張り屋の自分」と
「怠け者の自分」が統合されると、
「必要なときにはしっかり休んで充電し、
そのエネルギーで
行動するときには
優れた集中力を発揮する自分」へと
導かれるでしょう。
「人に気遣いする自分」と
「自己本位の自分」が統合されると、
「まずは自分を大切にして
自分自身の欲求を存分に満たし、
心に十分な余裕ができたときには、
自然と人に対して
優しく気遣いできる自分」へと
発展できるでしょう。
このように、
自分の中の矛盾する要素を
融合・統合していくことで、
人は、より厚み深みがある、
器の大きな人間へと
成熟していくことが可能なのです。
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この記事では、
「自分探し」に役立つ方法
についてお話ししました。
「本当の自分」とは、
多面性を持つ自分のことです。
私たちの中には
さまざまな側面が存在します。
自覚している側面だけでなく、
今まで気づけなかった
自分の側面にも気づき、
それらすべてを受け入れて
統合することで、
より自分らしく
生きることができるでしょう。
自覚できない側面に
気づくためのヒントとして、
自分をイライラさせる相手や
無性に腹立たしくさせる相手の中に、
今まで自分でも気づかなかった
自分の一面が
隠されている可能性があることを
紹介しました。
その相手を通じて、
自分自身の隠れた側面を発見する
手がかりにするとよいでしょう。
現代では、「今の自分とは
別のところに本当の自分がいるはずだ。
今の自分は偽物だ」と考え、
新たな自分を発見した後に
今までの自分を排除しようとする人も
少なくありません。
しかし、この姿勢では
自分探しの目的がずれてしまい、
行き詰まることが多いです。
なぜなら、新たに発見した自分も、
今まで自覚していた自分も、
どちらも自分にとって
大切な一部だからです。
新たに発見した自分の側面は、
今までの自分とは
相反することも多いでしょうが、
それらを両方とも受け入れ、
居場所を作ってあげることが重要です。
その時々の状況に応じて使い分けたり、
対極にある要素のバランスを取ることで、
自分の欲求を適切に満たし、
より自分らしく
豊かに生きることができるでしょう。
自分自身の多面性を受け入れ、
より自分らしく
幸せに生活していきましょう!