確かな未来は、足元から始まる!

向上心を持ち、
よりよい自分を目指して
努力する姿勢は素晴らしいものです。

でも、地に足のつかないまま
突き進んでしまうと、
頑張っているのに
結果が伴わないことも
少なくありません。

だからこそ大切なのは、
まず自分の足元を
しっかりと固めること。

そして、地に根を張るような感覚を
意識しながら、
少しずつ外の世界へと
歩み進めていくことです。

この記事では、地に足のついた
生き方の本質に触れながら、
心豊かに生きるためのヒントを
探っていきます。

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心の根を大地に張る:グラウンディングとは何か?

グラウンディングとは、
現実とつながり、自分自身と
しっかり結びついている状態
を指します。

この状態にある人は、
情報の渦の中にいても
振り回されることなく、
人生で起きるさまざまな出来事や
他者の言動に
巻き込まれにくくなります。

具体的には、業績が好調で
周囲から賞賛や絶賛を受けても
舞い上がったり傲慢になったりせず、
謙虚な姿勢で
自分のペースを保ちながら
進んでいけること。

また、逆に
失敗や困難に直面したときにも、
卑屈になったり
自暴自棄になったりせず、
今の自分にできることを
一つひとつ積み重ねていけることです。

別の言い方をすれば、
他人の評価や環境の変化に
左右されない、
安定した精神状態である
とも言えるでしょう。

こうしたグラウンディング状態に
至るためには、
自らが拠って立つ大地に
しっかりと根を張ることが
欠かせません。

そうすることで、
私たちは人間としての根幹に
「ブレない軸」を
確立することができるのです。

では、
この「自らが拠って立つ大地」とは、
一体何なのでしょうか?

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『青い鳥』が教える普遍的な真理:幸せは足元にある

この問いを考えるうえで、
世界中で愛され続けている
メーテルリンクの名作『青い鳥』
を取り上げてみましょう。

この物語は、私たちの人生に通じる
深い真理を教えてくれるものです。

兄妹のチルチルとミチルは、
「幸せの青い鳥」を求めて、
さまざまな国へ旅に出かけます。

しかし、どこまで行っても
青い鳥は見つかりません。

やっと捕まえたと思っても、
すぐに色が変わってしまい、
青い鳥ではなくなってしまうのです。

そして家に帰ってきて
眠りから醒めてみると、なんと、
もともと家で飼っていた
ハト(キジバト)こそが、
その「青い鳥」だったのです。

外に出かけて探しても
見つからなかった「幸せ」が、
最初から自分の家にあった――
つまり、答えは足元にあったわけです。

この物語が世界中の人の心を
とらえ続けているのは、
そこに誰の人生にも通じる
「普遍的な真理」が
表現されているからでしょう。

幸せな人生を実現する鍵を
外に探し求めても、
それはそこにはありません。

たとえ見つけたと思っても、
まもなく色あせてしまいます。

本当の鍵は、「自分の家の中」に、
「自らの足元」に、
「自らが拠って立つ大地」にこそ
あるのです。

しかし、多くの人は
その答えを外に求めがちです。

「灯台下暗し」
ということわざが示すように、
私たちは自分の足元にあるものに
気づかず、遠くばかりに
目を向けてしまいがちです。

まずはこのことに気づくことが、
幸せな人生への大きな一歩
となるのではないでしょうか?

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身近なことから始める大切さ:「まずは足元から」の哲学

高い志を持つことは
素晴らしいことですが、
それ以前に
もっと大切なことがあります。

それは、自分の足元が
しっかりしているかどうか、
ということです。

たとえば、自分の生活が
経済的にも時間的にも
余裕のない状況で、
「人助けのためにNPOを立ち上げたい」
と語る人がいます。

もちろん、その志は立派です。

しかし、まずは
自分自身が安心して暮らせる
生活基盤を築くことが
先ではないでしょうか?

自分が疲弊していては、
誰かを支えることはできません。

また、日々の仕事でミスが続き、
上司や同僚との信頼関係が
崩れかけているのに、
「いつか独立して会社を起こしたい」
と夢を口にする人もいます。

将来のビジョンを持つのは
素晴らしいことですが、
足元の仕事を
丁寧にこなせていなければ、
しっかりとした土台がないため、
より大きなことに挑戦するのは
現実的ではないでしょう。

部屋が片づかず、
日々の生活が乱れている状態で、
「もっと大きなプロジェクトに
関わりたい」
「世界に通用する仕事がしたい」
と言う人もいます。

高い目標を持つのはよいことですが、
身の回りの環境を
整えられていないままでは、
効率よく活動することも
できないでしょう。

まずは、今いる場所を
心地よく整えることを
優先したほうがよいでしょう。

自分の感情が日々揺れ動き、
人に対しても不安定な反応を
してしまうような状態で、
「人間関係を教える講師になりたい」
と願う人もいます。

けれども、
自分自身の内面と向き合い、
感情の波を
穏やかにできるようになることが、
何よりも先に求められるはずです。

ここで大切なのは、
高い志を持ってはいけない
ということではなく、
その前に取り組むべきことがある、
ということです。

外の世界に飛び出す前に、
自分の基盤を整えることが
欠かせません。

まずは
自分の足元を固めること。
そして、自らが拠って立つ大地に
しっかりと根を張ること。

それができてから、少しずつ
外の世界に向けて
活動を広げていくのが
望ましいのでしょう。

これこそが、
「地に足のついた生き方」
なのです。

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進化の本質を理解する:「含んで超える」という概念

アメリカの哲学者
ケン・ウィルバーが提唱した
進化論における「含んで超える」
という概念は、
グラウンディングの重要性を理解するうえで
大いに役立ちます。

進化とは、
伝統的に受け継がれてきた
考え方やパラダイムと
まったく別のところから
突然生まれるものではなく、
それらを土台にしながら、
新たな要素を統合していくことで
生じるものです。

この考え方は、
コンピューターのOSにたとえると
わかりやすいでしょう。

たとえば、Windows XPをベースに
Windows Vistaが生まれ、
Vistaをもとにして
Windows 7が登場したように、
OSの進化も
常に前のバージョンを受け継ぎつつ、
それを含みながら乗り越えていきます。

つまり、いつも一つ前のバージョンを
しっかりと受け継ぎながら、
その限界を超えるかたちで
前進しているのです。

すべてを否定して
一から作り直すのではなく、
積み重ねのうえに
新たなステージが築かれていくのです。

私たちが新しい時代の生き方や
価値観を見出すときにも、
先人たちが残してくれた
伝統的な叡智を土台にし、そのうえに
新しい価値観を統合していくという
「地に足のついたプロセス」
が求められるのです。

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ヒッピー文化が残した教訓:根のない思想の脆さ

自分の足元にあるものを否定し、
まったく別の要素だけを取り入れて
新しいことを進めていくやり方は、
「地に足のついたプロセス」を経ていないため、
一時的にはうまくいくことがあっても、
最終的にはその脆さゆえに
崩れてしまうことも少なくありません。

たとえば、1960年代後半に
アメリカの若者たちから始まった
ヒッピームーブメントは、その好例です。

ヒッピーたちは
「愛」と「自由」と「平和」を掲げ、
「Back to nature!(自然へ帰れ)」
をスローガンに、
仲間とともにコミューン(共同体)
を作り上げました。

これらのコンセプトは、
どれも魅力的で価値あるものでした。

しかし、やがて
ヒッピーたちのコミューンは崩壊し、
ヒッピー文化も衰退していきます。

その背景には、
地に足がついていなかったという点が
大きく関係していると考えられます。

「伝統的叡智や歴史を土台にする」
という視点が欠けていたため、
一見すると新しく魅力的な
思想や文化に見えても、
そこには深みがなく、結果として
極めて浅薄なものになってしまったのです。

具体的には、彼らは
キリスト教的価値観を全面的に否定し、
その反動として、禅やタオイズム、
チベット仏教といった
東洋思想に傾倒しました。

しかし本来であれば、
まず自らの拠って立つ大地である
キリスト教文化を軸にし、その上で
東洋思想を取り入れて
統合していくべきだったのです。

西洋人の精神的基盤には、
やはりキリスト教文化が
深く根づいているからです。

先人の「伝統的な叡智」から
分断された智恵は、切り花と同じで、
大地に根づいていないので
定着しません。

真の統合とは、もともとある文化に
敬意を払いながら、
そこに新たな価値を
重ねていくことなのです。

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外ばかりを見つめる文明の危険性

チリの作家
エンリケ・バリオスの小説
『アミ』シリーズの中で、
宇宙人アミは地球人の特徴について
興味深い指摘をしています。

「君たち地球人は、
地球という惑星の内部ではなく、
表面に住んでいる。それは、
君たちの魂のあり方を反映している。
君たちの文明では、大切にするのは表面で、
注意を払うのは外部だけ。
内部のことにはまったく無関心だ」

さらにアミはこう続けます。
「君たちは、もっと外へ、
もっと外へと進もうとする。
もし許されるなら、
地球から数兆キロ離れた場所まででも
ロケットを飛ばそうとする。
そのための努力は惜しまない。

ところが、自分たちの星の内部のこと、
すぐ足元のことなのに、
ほとんど理解していない。
そもそも興味すら持っていない」

確かに、人類は
外へ外へと興味を向けてきました。

足元には目もくれず、
ひたすら外を目指してきたのです。

そして、
その外側志向の行き着いた先が
「宇宙」でした。

そんな人類に対して、
「宇宙」からやって来た存在――宇宙人が、
「外(宇宙)ではなく、
内(地球)に目を向けよ」
と語りかけてくれているのです。

「外や宇宙ばかりに目を向けるのは、
魂のあり方が未成熟だからであり、
進んだ文明では
人々の意識は内側に向けられている」

このメッセージは、
現代を生きる私たちに
重要な示唆を与えてくれるものです。

内側に目を向けるという成熟こそが、
これからの時代を生き抜く
鍵なのではないでしょうか?

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おわりに

この記事では、
「地に足のついた生き方」
の大切さについて
お伝えしてきました。

向上心を持ち、
自分を高めようと努力する姿勢は
素晴らしいものです。

しかし、
その努力が空回りしないためには、
まず足元をしっかりと固めることが
何より重要です。

心に根をしっかりと張る
「グラウンディング」の感覚を持つこと。

そして、
『青い鳥』が教えてくれるように、
幸せは遠くにあるのではなく、
自分の足元にあるという視点を持つこと。

高い志を抱くことは尊いことですが、
それ以上にまず大切なのは、
自分の生活や感情、人間関係など、
身近な基盤を整えることです。

また、進化とは
過去を否定することではなく、
「含んで超えていく」ことだ
という考え方を、
自分の暮らしや行動にも
取り入れていくとよいでしょう。

今の自分が立っている場所を
大切にしながら、
一歩ずつ、着実に進んでいく。

そんな生き方を重ねていくことで、
やがて確かな未来が
開けていくはずです。

大きな夢や目標を持つことは
素晴らしいことですが、
まずは身近なものをしっかり整え、
足元を固めたうえで、
自分のペースで
外の世界へと歩み出していきましょう。

そして、
その足元を固めていくプロセスそのものも、
どうか楽しんでください。

それこそが、心も暮らしも、
より豊かなものへと
導いてくれるでしょう。