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「親は子供に無償の愛を注げる」というのは理想的ではあるが…

親は子供に無償の愛情を注ぐとか、
目に入れても痛くないとか、
自分が犠牲になっても
子供のために全てを捧げるとか、

こんな言葉をよく耳にするけれど、
実際のところは、
これは単なる理想にすぎない。

現実的には
「~できれば愛せるけれど、
~できなければ、愛せない」
という条件付きの愛だったり、

血のつながりはあっても、
全然子供が可愛くない
という人もいる。

毒親問題で苦しむ人に対して、
「自分の子供がかわいくない親は
どこを探してもいない」
なんていう言葉はNGだ。

親子関係でシンドイ人に
こういう発言をするのは
絶対にやめたほうがよい。

これが、
今回私が伝えたいこと。

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なぜそうなのか?

それは、この世の中には
親から虐待を受けたり、
愛情を受け取れないで
育ってきた人もいるから。

毎日、毎日、
親から酷い暴力を
振るわれ続けてきた人に対して、

「それは、あなたのことを思って。
あなたに良くなって欲しいから、
体罰として躾としてやった」
なんていう言葉をかけたら、
絶対によくない。

その言葉により、
その人を傷つけてしまう
ことになるからだ。

身体の大きい大人が
力も弱い小さな子供に
暴力をもって
躾けようとするやり方は正しくない。

暴力は子供に
恐怖感と不信感を植え付けるだけ。

子供を委縮させてしまい、
後々の子供のメンタルに
悪影響を及ぼすこともしばしばだ。

暴力を振るう親は
暴力以外の正しいやり方で
子供に教えることができない未熟者。

時には、子供は全然悪くないのに、
親が自分の欲求不満を晴らすため、
立場の弱い子供を利用して、
フラストレーションのはけ口に
子供を使うこともある。

そんな状況で
親から「体罰」という名の
暴力を振るわれてきた人たちは、

「あなたのためを思って…」
なんていう発言をされれば、
心が酷く傷ついてしまう。

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なぜ、子供を愛せない親が
いるのだろうか?

その理由は様々であり、
人それぞれ違う。

生まれてくる子供のすべてが
望まれて
生まれてきたわけではない。

夫婦やカップルが
お互いを愛し合い、
真の愛から性行為をして
望まれて生まれてくる子もいる。

その一方で、
性欲を満たすだけの性行為により、
間違って妊娠してしまうケースも
しばしば起きる。

中絶するには、
もう時期が遅いから、
生むしかないという
選択肢しかなかったのだろう。

片親は子供が欲しくても、
もう片方の親が
子供を望んでいない場合もある。

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生物学的に見れば、自然と
子供は母親に懐きやすい。

母親は妊娠した瞬間から、
自分のお腹の中で
赤ちゃんを育てている。

つわりがあってツライ時期、
妊娠により体調が優れなくても、
お腹の中の赤ちゃんが
動くのを感じた時には、

「大変だけれど、頑張ろう」
という気になれる。

出産時に経験するあの痛み。

妊婦さんによっては
命がけで出産する人もいる。

ツラかったけれど、
大変だったけれど、
やっと生まれてきてくれた
我が子。

愛おしくて、たまらない。

生まれてからも、
母乳をあげたり、
身の回りの世話をしたりするのは
母親の場合がほとんどだ。

夜泣きが酷い赤ちゃんなら、
母親は毎晩、寝不足のこともある。

赤ちゃんは母親との時間が
父親と過ごす時間よりも
遥かに多いので、当然、母親に懐く。

自分の子供なのに、
自分に懐いてくれないと嘆く父親が
子供をかわいいとは感じない
と本気で思ってしまうことも
珍しくはない。

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愛がないわけではなくても、
なんらかの事情により
子供に愛情を注げない親もいる。

親自身が精神的に病んでいたり、
成熟しきっていない場合だ。

毒親と言われる人の多くは
身体は大人でも、
精神的には
小さな子供と同じくらい未熟だ。

子供のことは一応好きでも、
自分のことのほうが、もっと大事。

子供のニーズを満たす以前に、
親が自己中心的にしか考えられず
子供に必要なことを
してあげれない。

親自身に余裕がないため、
子供の気持ちを汲んであげたり、
子供にとって一番良いことを
提供してあげられない。

多くの毒親にとっては
体裁は一番重要なこと。

外の人には、
自分が立派な親である
と思われたいから、
無理してでも
外では素晴らしい親を演じる。

しかし、一旦自宅に帰れば、
見えないところで、
本当の姿に戻る。

立派な親どころか、
子供にダメ出しばかりして、
子供のことを平気で傷つける。

その言葉により、
子供に一生心の傷を負わせるような
とんでもないことを言っても、
全然へっちゃらだ。

自分がイライラしていれば、
その不満を子供にぶつけて、
憂さ晴らしをする。

ちょっとした
子供の落ち度を利用して、
躾の名でネチネチと
いつまでも説教する。

言葉の暴力のみならず、
子供をひっぱたいたり、
蹴っ飛ばしたりして、
自分はスカッと気持ちよい。

親という強い立場を利用して、
子供を虐めて、
自分の欲求不満を晴らす。

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~してくれれば、
自分は子供を愛せるけれど、
~してくれなければ、愛せない、
というような条件付きの愛も多い。

学校で良い成績を取る子供は
愛せるけれど、
勉強ができない子は嫌いだ。

親が望んだ会社に
子供が就職してくれれば、
子供のことを愛せるが、
そうでなければ、愛せない。

親が望んだ結婚相手と
一緒になってくれたなら、
我が子が大好きだけれど、
そうでなければ、大嫌い。

自分が叶えられなかった夢を
子供に叶えて貰おうとして、
子供の意向を完全無視して、
自分の思い通りに
子供を動かそうとする親もいる。

やりたかったけれど、
自分はできなかったことを
子供が叶えてくれれば、
子供を愛することができる。

しかし、
子供が自分の期待に
沿ってくれなければ、
子供を愛することができない…

子供は親の分身ではない。

一人の独立した人間で、
子供は子供の人格を持つ。

それなのに、子供を
親の所有物だと思い込んで、
自分の都合に合わさせる親もいる。

子供がそれに従ってくれれば、
子供との人間関係も円満で、
自分も子供も幸せであり、
素晴らしい家族だと自負する。

しかし、人生のある時点で、
子供は「なんだかしっくりこない。
何かがおかしい」
と気づくこともしばしば。

自分の人生を生きておらず、
親を喜ばせるために、
親の言いなりになっていた
と中年になってから
分かることもある。

条件付きの愛は、
親の望みに従って、
子供が動いてくれれば、
子供を愛せる。

しかし、そうではなければ、
子供のことを
かわいいとも思わない。

残念ながら、現実的には
条件付きの愛が原因となる
険悪な親子関係も
この世の中には多く存在する。

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親から愛情を十分受け取り、
健全に育ってこれた
ラッキーな人もいるのは確か。

そういう人には
毒親問題で苦しむ人の
気持ちは全く理解されない。

それは当然だろう。
人間は自分で経験してみなければ、
それがどんなことだか
本当の意味で分からないから。

でも、このことは知って欲しい。

自分は親から愛情を貰えても、
親からの愛を
受け取れなかった人もいる
ということを。

そして、そういう人に対して、
軽々と
「自分の子供がかわいくない親は
どこにもいないよ」
なんて言わないで欲しい。

なぜなら、言われた本人は
とても傷つくからだ。

そんなことを言われれば、
自分が否定された気持ちになる。

親からの愛情を
受け取れなかったのは、
自分が悪かったから、
自分に問題があったから
とまで考えてしまうからだ。

そして、そのため、
自分責めを始めて、
自己破滅的になる。

しかし、親からの愛情を
受け取れなかったのは、
子供が悪かったのではない。

すべてのケースで言えることは、
親の側に
何らかの問題があったからだ。

様々な事情により、
仕方なかったこともある。

その事情を聞けば、
親がそうなるのも
しょうがなかったんだ
と理解できることもある。

それでも、やはり、
子供は苦しんでいる。

親にどんな事情があれど、
子供は
大変シンドイ思いをしている。

悲しいこともたくさんある。

だから、
自分は親から愛情を受け取れても、
そうでない人もいることを知り、
何も余計なことは
言わないほうが賢明だ。

毒親問題で苦しむ人間の一人として、
そのことをお願いしたい。