子供たちを守る国 ― ニュージーランド

ニュージーランドに長年住んで感じることは
この国は社会的弱者に優しいということ。
小さな子供は、ある意味、社会的弱者だ。
親に身の周りの世話をしてもらい、
衣食住をサポートしてもらえなければ
生きていくのは困難だからだ。
ニュージーランド政府は、
子供たちが健全に成長できるよう
積極的に貢献している。

この国にはParents as First Teachers(PAFT)
という育児支援プログラムがある。
サービス内容は、幼児教育専門家が
家庭訪問をして、子供の発育をチェックしたり
親に育児の方法を教えることだ。
子供が3歳の誕生日を迎えるまで
月1回、または、2週に1回の頻度で
専門家の先生がマンツーマンで指導してくれる。

このサービスは政府出資のため無料。
ただ、誰でもサービスが受けられるわけではない。
何らかの事情で育児が難しい家庭を対象にしている。
また、移民のお母さんが初めて出産した場合など
この国で育児に戸惑いを感じる人たちも対象内になる。
私は、こんなサービスがあることを知らなかったが、
私の第一子が誕生した頃、義理の弟家族がPAFTを利用していた。
弟夫婦が気を利かせて、私達家族もこのプログラムに
参加できるよう、手続きを取ってくれたのだ。

PAFTの先生からどんなことを教わったか?
離乳食が始まる頃には
どんな食品を、どのように調理して
食べさせればよいかのヒントを頂けた。
また、子供の年齢に応じて、遊びの方法や、
生活習慣を良くするために工夫すること、
子供が言うことを聞かない場合の対処方法など、
色々なことを具体的に教わることができた。

PAFTの先生からのアドバイスで、
今でも鮮明に覚えていることがある。
それは、子供を積極的にジャンプさせれば
空間的なセンスが養われるということ。
男の子が女の子よりも、空間認識能力に
優れる理由は、小さな頃から、
親も積極的に子供をジャンプさせる
傾向にあるからだとのこと。
それを聞いた私の夫は、居間のソファーで
娘がたくさんジャンプできるよう奨励していた。
そのお陰なのだろうか、私たちの娘は
空間認識能力に長けている。

月1回の家庭訪問時には、
夫も仕事から抜け出して
必ず参加してくれた。
ニュージーランドの企業では
父親も育児に参加できるよう
可能であれば、こういう機会には
ちょっと職場から抜け出ることを
普通に許可している。
その分、別の時に多めに働けばよい
とかなり寛容な姿勢だ。

ニュージーランドでは、
子供に暴力を振るったらいけない
という法律がある。
しつけのためであっても、
子供を引っ叩いたりすれば、法律違反。
下手すれば、親は罰せられてしまう。

また、14歳未満の子供を
自宅内に一人で留守番させることも
許されていない。
5~10分くらいだから、
ちょとだけ子供を家に一人で置いてしまった、
なんてことをした場合、
見つかったら、処罰を受ける
こともあるので、十分注意が必要だ。

お店の真ん前に停めた車の中に
子供を置いたまま、ちょっとだけ買い物
というのもダメ。
特に、夏場は車内の温度が極度に上がり
小さな子供は短期間で脱水症状を
起こしてしまうから、非常に危険だ。
そのためか、店の外に停めた車などを
チェックしている警察官の姿も見られる。
こういう厳しい法律があれば、
親の立場では、けっこう大変な面もあるが、
子供にとっては安全なので、良いことだ。

PAFTの先生のお陰で、
私も育児がラクにできたと思う。
何か心配事があった時でも、
家庭訪問時に質問して教えて貰うことができた。
そのため、私は育児書を読むことはなかった。
私の育児サポートをしてくれた
ニュージーランド政府にはとても感謝している。

お断り:PAFTのサービスについては、私の娘が小さかった頃(2000ー2003年)の情報です。