ニュージーランドには日本のような義理ギフトの文化はない

お中元、お歳暮、入学や卒業のお祝い、
七五三や成人式、出産のお祝い、
旅行へ行った時のお土産、お年玉等々、
日本にはギフトをあげる機会が多い。
大好きな人や、お世話になった人に
自らプレゼントしたいのなら問題ないが、
自分の気持ちとは裏腹に、
義理でしなければならないギフトはツライ。

私は日本の「義理ギフト」の文化が嫌いだ。
私は実の両親と仲が悪くて、
実家で暮らしていた頃には、
しょっちゅう両親と揉め事を起こしていた。
義理ギフトも私たちの揉め事の原因の一つだった。
いつも母から言われるのは
「あんたは常識に欠けているから」ということ。
義理ギフトに消極的な私を
母は厳しく非難してきた。

若いころ、日本で少し働いたことがある。
海外へ行くための資金を貯めたくて、
私は極力、節約生活をしていた。
それなのに、母は不機嫌そうな顔で私に聞く。
「K叔母ちゃんのところに、
もうお歳暮は贈ったのよね?」と。
私がまだ贈っていないことを知っていて、
母は催促するようなトーンで言ってくる。
私が嫌そうな声で「まだだよ」と答えれば、
「本当にあんたは人間ができてないんだから…」
とグチグチ文句が始まって、
そのうちに、お歳暮とは全く関係のない
私の至らない点に対する不満が
母の口から次から次へと出てきた。

留学中に一時帰国した時には、
私がニュージーランドから買ってきた物が
母にとって面白くなかったらしく、文句を言った。
「こんなお土産しか買って来れないの!
もっときちんとしたお土産が欲しかったのよね」
と母の不満が爆発した。
母自身が欲しいと言うよりも、親戚や
両親が仲良くする人たちに配りたいので、
もっとマシな物が欲しかったということだ。

自分がプレゼントしたいと思わない相手に、
義理でギフトを送ることに、私は疑問を感じていた。
ギフトの点では、母親から「常識知らず」と
非難されることが多かったので、
「義理ギフト」のことを考えるだけで、
私の中に嫌な感情が湧いてきた。

私の両親はギフトを送ることに対して、
きちんとする人間だった。
それはそれで悪くはないが、
私に自分たちと同じようにやれ
と強制することが、
私にとっては気に食わなかった。

両親はギフトを交換することで
良好な人間関係が築かれて行くものだ
と信じている。「ギフトを受け取って
悪い気持ちになる人はいないんだから」と言う。

でも、私はそうは思わない。
自分が欲しくもないものを
誰かからプレゼントされても
その人の気持ちは有難くても、
正直、有難迷惑に感じる方が大きい。
また、何かを受け取れば、「お返ししなければ」
という気持ちが出てきて、負担になることもある。

良好な人間関係を築くには、
約束したことをきちんと守ることや、
お互いのコミュニケーションに気遣いした方が、
効果があると私は考えている。
ギフトの交換で表面的には仲良くなっても、
本当の意味での信頼関係は築けない
というのが私の意見だ。

ニュージーランドで生活を始めて、
「義理ギフト」の習慣から解放されて、
私はかなりほっとしている。

ニュージーランドでもギフト交換はある。
でも、日本のように義理ですることは
ほとんどないと言ってよい。
ニュージーランドでギフトを送るのは
クリスマス、誕生日、ウェディング、
赤ちゃん誕生の時などだ。
自分がギフトを送りたいからするのであって、
「しなければいけない」という義務感で
する人はあまりいないように感じる。

クリスマスが近くなれば、
スーパーマーケットや小売店で、
クリスマスギフト用の商品が
お店の中に綺麗に陳列される。
でも、それ以外の時に、ギフト用の商品を
お店で見ることはあまりない。
1年中買えるギフトといったら、「ギフトカード」。
日本の「商品券」のようなもので、
色々なお店がギフトカードを出していて、
スーパーマーケットに行けば、
様々なギフトカードを購入できる。

ニュージーランドでは買い物をした時に、
基本的にはラッピングをしてくれない。
ラッピングペーパーを購入して、
自分でギフトを包むのが一般的だ。
クリスマス時期になると、
ショッピングモール内で
ギフトラッピングの専用ブースも見られる。
モール内のお店で買ったものならば、
無料でギフトを包んでくれるサービスだ。
私もギフトラッピングの専門ブースで
包んで貰ったことがある。
でも、あまり綺麗に包んでくれなかったので、
家に帰ってから、自分でラッピングしなおした。

折り紙文化がある日本では
ギフトを包むのにも、
アートのように綺麗に包める人が多いが、
ニュージーランドでは
上手にラッピングできる人は少ない気がする。

クリスマスのギフトは
クリスマス前にあげるのが一般的。
クリスマスギフトを受け取ったら、
直ぐに開けてはいけなくて、
自宅の居間に飾られたクリスマスツリーの下に、
置いておくのが普通だ。
クリスマスの日に、クリスマスディナー(昼食)
を頂いた後に、家族が一斉に貰ったギフトを開けて
お互いに見せ合って楽しむ習慣がある。

誰かの家を訪問した時、
日本ではその家に着いたら
直ぐにギフトを差し上げることが普通だ。
でも、ニュージーランドではその逆。
帰る間際にギフトをあげる場合が多い。
ホームステイの受け入れ家庭は
日本の訪問者が来たばかりのときに
お土産を手渡すので、かなり驚くようだ。
「今でなくて、帰る時に手渡すのが普通よ」
と言うホストもいた。

日本では「立派なギフトをあげなければ」
と思う人がいるようだが、
ニュージーランドでは、
ちょっとした小さなギフトをあげる人も多い。
「こんな小さなものでは恥ずかしい」
とギフトに関してプライドを感じる人も
少ないように思える。

最後にひとつ興味深いお話を。
日本では2月14日のバレンタインデーには、
女性から男性にチョコレートをプレゼントする
という習慣があるが、
ニュージーランドではちょっと違う。
私の旦那さんによれば、
女性から男性へプレゼントではなく、
男性から女性へプレゼントするらしい。
プレゼントの品物はチョコレートに限らず、
花束だったり、ジュエリー類だったり
その人の好みによって違うものを送るようだ。
もちろん、義理チョコのように
義理で皆に配るようなことはない。
大切な人に気持ちを込めて
何かプレゼントをするといった感じだ。

ということで、今回は
ニュージーランドには「義理ギフト」の文化はない
というお話をしてみた。