高校卒業後にはギャップイヤーを取って、人生をより豊かにする

ギャップイヤーは最近、
ニュージーランドの学生に
人気のある進路オプションだ。
高校卒業後、大学に進学するまでに
1年間のブレイクを取り、
勉学以外の有意義な活動に従事することだ。

やる活動は人それぞれ違うが、
長期旅行だったり、ボランティア活動、
海外生活体験、インターンシップ、アルバイト等々、
やりたいことなら何でもよい。
自分なりに1年間、色々なことに挑戦して、
大学では得られないような
有意義な体験をするのが狙いだ。

大学側もギャップイヤーが取りやすいように、
手続きや規則の面で
色々な配慮をしてくれている。
大学入学資格を得た後、
進学先の大学からスカラシップを
受けることが決まった場合でも、
スカラシップの受け取りを
1年間先に伸ばして貰うことも可能だ。

ギャップイヤーの良い点は、
大学では経験できないような
様々な貴重な体験ができること。
また、この期間にアルバイトをすれば、
職歴にもなるし、将来ために学費稼ぎもできる。

良くない点は、場合によっては
経済的負担が大きいことだ。
海外生活体験や長期旅行をする場合には、
かなりのお金が必要になる。
また、ギャップイヤーの活動内容は
本人が決めることなので、
計画倒れをして、モチベーションが下がり、
貴重な時間をダラダラと無意味に
使ってしまう危険もある。

最近の研究によれば、
ギャップイヤーを取った学生は
取らなかった学生に比べて、大学進学後も、
学業成績面で優秀な傾向があるとのことだ。

イギリスではギャップイヤーは
大分前から一般的だったらしい。
でも、ニュージーランドでは、
私の夫(50代)が学生の頃には、
ギャップイヤーはなかった。
最近になって、ギャップイヤーを考える
高校生が年々増えつつあるようだ。

私のイギリス人の知人も
20年前にギャップイヤーを経験した。
最初は本屋さんでアルバイトをして、
お金を貯めたそうだ。
十分な旅行資金ができた時、
数カ月間、様々な国を訪問して、
異文化や非日常の生活に触れてみて、
とても有意義な1年を過ごせたと言う。

その人のお兄さんも同じように
ギャップイヤーを取ったそうだ。
でも、あいにく、やり始めたことが上手く行かず、
そのうちに、諦めモードに入ってしまった。
1日中、家の中でゴロゴロと過ごし、
貴重な時間をムダにしてしまったようだ。
彼の場合は、下手にギャップイヤーを
取らなかったほうがよかった、
と後悔している。

実は、私の娘・ジャッキーも
高校最終学年になって
ギャップイヤーを取りたいと言い出した。
その当時、私はギャップイヤーがあることを
なんとなくは知っていたが、
あまりピンとこない部分も多く、
娘の希望を快く受け入れられなかった。

高校最終学年の時のジャッキーは
夜遅くまで起きていて、
朝は昼近くまで寝ている状態。
高校の授業もさぼり気味で、
私は彼女の生活習慣の乱れが
大分気になっていた。
そんな状態だったので、
このままギャップイヤーを取っても、
1年間ダラダラと過ごすだけだろう、
と予想していたのだ。

そんなわけで、私はジャッキーの
ギャップイヤーには反対をした。
また、夫も高校卒業後に直ぐに
大学に進学して欲しいと願っていた。
でも、「18歳にもなる娘を
親のいいなりにさせるのは間違っている」
という考えが夫の中に強くあり、
結局は彼女の意向に従うことにした。

私の予想は大外れで、ジャッキーは
1年間のギャップイヤー期間を
有意義な活動に使うことができた。
最初の3カ月間は老人ホームで
介護職のアルバイトをして、
その後、9カ月間は
彼女の母校の小学校で
教師アシスタントとして働いた。

ギャップイヤー前のジャッキーは
消極的で、物怖じするタイプだった。
人前ではっきりと意見が言えず、
自分に自信が持てなかった。
でも、1年間のアルバイト生活の後は
ハキハキと物を言うようになり、
自信もかなりついたようだ。
ギャップイヤー前には、
ジャッキーは親元を離れて別の都市で
大学生活を始めることに恐怖を感じていた。
でも、ギャップイヤーのお陰で、
「私はできる!」という自信がつき、
翌年からの大学生活も問題なく
とてもスムーズにいっている。

ジャッキーは1年分のアルバイト料を
ほとんど貯金に回したので、
現在は学費や生活費の面でも、
他の学生に比べればかなり余裕があるようだ。

ジャッキーがギャップイヤーをしたい
と言い出した時には、
私はかなり否定的だった。
私が彼女のプランに大反対したので、
一時期は、私と娘の人間関係が
悪化してしまったこともあった。
でも、今になれば、私も
彼女がギャップイヤーを取って、
本当に良かったと思う。
ジャッキーにはお詫びをすることになった。

ギャップイヤーの時期についてだが、
高校卒業後、大学進学前に1年間取ることが
一般的ではあるが、取る時期や
その期間はかなりフレキシブルなようだ。
人によっては、大学卒業後、就職前に
半年、一年間の大きなブレイクを取り、
勉強や仕事以外の活動に専念する人もいる。

私が日本に住んでいた頃には、
新卒で一斉に就職をしなければいけない
というような社会風潮があった。
今では日本社会も変わりつつあるようだが、
それでも、昔の名残は今でも残っているだろう。

ニュージーランドの良いところは、
ギャップイヤーが簡単に取りやすい
社会システムになっていることだ。
決まった時期に学生として勉強して、
決まった時期に就職しなければならない
というような厳格な決まりはない。
自分にとって適齢の時期に
勉強したり、就職することが
普通にできる社会なので、
非常に良いことだと感心している。