ホームステイはお勧め? 英語は上達するの?

今回は、ホームステイについて、
私の経験をもとにお話してみたい。
なぜ、この話題を取り上げたかと言えば、
日本の方から質問されたからだ。
質問内容は、「コロナが終息したら、
英語圏でホームステイを考えています。
ホームステイに関して、良いこと、悪いこと
色々耳にしますが、実際、どうですか?
英語は上達しますか?」というものだ。

3年間の大学留学中にしたホームステイは
もともと知り合いの家庭だったので、
今回の話からは外すことにした。
語学学校やホームステイ斡旋業者に
アレンジして貰った短期のホームステイ
について語ってみようと思う。

私が初めてホームステイをしたのは
15歳の時、アメリカ、サンフランシスコ郊外の
アメリカ人宅に1カ月ほど滞在した時。
日本からの語学学習ツアーに参加して、
午前中は英語のクラス、午後は自由で、
ステイ先ファミリーと時間を一緒に過ごす、
といったプログラムだった。

英語のクラスといっても、
同じツアーの参加者が能力別に分かれて、
一緒に勉強するものだったので、
クラス全員が日本人で、
先生だけがアメリカ人だった。
ホームステイ先でも、
2人一緒に受け入れて貰い、
もう一人の日本人と同室だった。
そのため、英語の勉強という点では
あまり良い環境ではなかったと思う。

アメリカ人のファミリーは
以前、日本に2年ほど住んだことがあり、
日本に興味のある人たちなので、
日本から学生を受け入れようと思ったそうだ。
参加中に知ったことだが、
ホストファミリーは食事やその他の費用において、
すべてボランティアでやってくれたらしい。

そのことをツアー引率のリーダーから聞き、
私は驚くと同時に、不満を感じた。
この語学学習ツアーは、その当時、
かなり高額の参加費用だった。
当然、ホスト宅にお金が支払われると信じていた。
でも、ツアーを運営する会社からは、
そんなことは一言も聞いていない。
ということは、その会社が
高額の参加料の多くを利益として
受け取ったことになる。
そう考えたら、非良心的な感じがして、
嫌な気持ちになった。

ボランティアでも受け入れたい
と思うような家庭なので、
当然、私たち学生にも、すごく優しくて、
私はとても楽しい1カ月を過ごした。
アメリカでのホストファミリーとの時間が
素晴らしいものだったので、
その後、私はアルバイトをしてお金を貯めて
再びホームステイに行くことに決めた。

結局その後、私はオーストラリアのシドニー、
アメリカのシアトル、イギリスのワージング、
ニュージーランドのオークランドとファンガレイ
という都市で、ホームステイを経験した。

ホームステイの利点は、異文化体験ができること。
また、普段学習している語学を
ネイティブスピーカーを相手に試せることだ。
自分が学ぶ外国語を母国語とする人たちが、
どんな家に住んで、どんな食事をして、
どんな生活をして、どんな文化や生活習慣があるのか、
実際に自分の目で見て、肌で感じることができる。

また、語学と文化、生活とは
密接に結びついていると思うので、
現地の家庭で生活体験をすることにより、
語学学習に役立つこともある。
例えば、ある単語を習っても、
日本にはないようなものならば、
それがどんなものだかピンとこない。
でも、そのものを目の前で見れば、
「ああ、このことなんだ」と直ぐに分かる。

今ではインターネットが普及しているので、
その気になれば、英語学習の教材は
日本に居てでも簡単に入手できる。
だから、わざわざ外国へ行く必要もない
と考える人もいるようだ。

でも、実際に自分がその場所に行かなければ、
分からないようなことだってある。
その国の匂い、空気、食べ物の味、音など
五感で感じる物は、インターネットの情報だけでは
得ることができない。

ホームステイ先でハッピーな時を過ごし、
楽しい経験をする人もいれば、
ホストファミリーと人間関係が上手く行かずに、
辛くて、不愉快な経験をする人もいる。
質問者が仰る通り、ホームステイは良かったり、
悪かったりするのは事実だ。
相手の家族も人間なので、
自分と相性が合うかどうかも重要だろう。

受け入れ側はどういう人を受け入れたいのか、
受け入れて貰う側は、どういう家庭に行きたいのか、
それぞれ、予め希望を言うようになっている。
例えば、子供がいる家とか、いない家とか、
いるとしたら、どのくらいの年齢か、
男の子か、女の子かなど、
また、ペットを飼っている家かどうか、
どんな趣味を持つ人々なのか等々、
自分がどのようなファミリーでステイしたいのか
事前に申し出ることになっている。
でも、必ずしもそれが叶う保証はない。
また、自分の希望に沿って貰えても、
相手の家族と馬が合うとは限らない。

ホストファミリーがどんな動機で受け入れをしたのか?
これはとても重要だ。
異文化に興味を持ち、国際交流をしたいので
受け入れる家庭もある一方、
単に受け入れることで、お金稼ぎをしたい
という家庭もある。
また、その両方を目的とする人たちもいる。
お金を稼ぐためにビジネスでやっている家庭では
受け入れられる側は、
あまりハッピーな時を過ごせない場合も多い。

私自身も色々な場所でステイした時、
様々なホストと出会うことができた。
私の場合は、国際交流が好きな家族や、
日本に興味のあるファミリーに
受け入れられた時もあったし、
また、必ずしもそうではない時もあった。

オーストラリアのホストファミリーは
国際交流が主な目的で受け入れてくれたので、
私もホストと一緒に過ごす時間が長く、
楽しいことが沢山あった。
ホストマザーはパートで働いていて、
午後はフリーだったので、
ほとんど毎日、私と一緒に時を過ごしてくれた。
彼女が友人宅を訪問する時でも、
買い物に行く時でも、
どこへ行くのにも、私を連れて行ってくれた。
一緒に夕食作りをしたり、
夕方から夜にかけては、ホストファーザーや
子供達とのだんらんの時間も多くて、
私が自分の英語力を試すのにも最高の環境だった。

このファミリーとは、私は未だに
連絡を取り合っている。
実は、ホームステイが終了したあとにも、
2回ほど、彼らを尋ねて遊びに行ったこともある。

アメリカ、シアトルでのホームステイは
ちょっと変わった家庭環境だった。
ホストファーザーはボーイング社に勤める仕事人で、
私の滞在中、書斎にこもって夜もずっと仕事をしていた。
だから、彼と話をする機会はほとんどなかった。
ホストマザーは、留学生をお世話する仕事をしていて、
30人くらいの留学生を担当していた。
多忙なために、私をお世話してくれる時間がなく、
夕食作りも「材料は揃っているから、
悪いけど、食べたいものを勝手に作って食べて」
という感じだった。
キッチンの大型パントリーには、
インスタントヌードルやジュース缶の大箱が
山積みになっていて、
「あまり健康的でないな」と思ってしまった。
ホスト宅の居間は、ホストマザーがお世話する
留学生たちのたまり場になっていて、
常に誰かしら留学生たちがいた。
ホストマザーもファーザーも不在が多くて、
ファミリーとの交流を期待していた私は、
かなりがっかりした記憶がある。

でも、意外にも楽しいこともあった。
メキシコ、スウェーデン、ノルウェー、
ドイツ、イタリアなどの国籍の学生たちと
居間で会って、お喋りできたので、
そういう意味では、よい国際交流の機会だった。

イギリスでのホームステイは
明らかにビジネスで学生を受け入れている様子だった。
その家はオランダ人女性が一人暮らししており、
2ベットルームという小さな家だった。
マスターベットルームはホストマザーが、
もう一つのベットルームは
語学学校からの留学生2人がシェアしていて、
私の部屋は庭の中にあるガレージのような場所だった。
ガレージをちょっとリノベーションして、
小奇麗にしたところにベットと机を置いた
という感じのところだ。

きちんとした食事の提供はあったが、
私がオーストラリアやサンフランシスコで
経験したホームステイとはかなり違う雰囲気だった。
3人学生をステイさせることで、
生計を立てるホストマザーだったので、
ビジネスでやっている感は多少あった。
ただ、ホストマザーは感じの悪い人でもなく、
時々、一緒にお喋りも楽しめたので、
英語を試す点ではそんなに不満はなかった。

一番困ったのは、夜間のトイレだった。
庭の中にある私の部屋にはトイレがない。
メインの家の中に入らないと
トイレには行けないが、
ホストマザーは「夜間はメインの家に
入って来て欲しくない」と言って、
鍵をしめてしまった。
「トイレに行きたくなったらどうすればよい?」
と聞いたところ、洗面器を持って来て、
「この中でトイレしてね」と言うのだ。
正直、これには私も驚いて、
かなりショックを受けた。

語学学校からの紹介の家庭だったので、
語学学校のホームステイ担当者に
その旨説明して、他の家庭に行けないものか、
聞いてはみたが、3週間の短期の滞在なので、
別のファミリーを探す時間がないと
断られてしまった。

夜間のトイレに関しては
けっこうツライ思いをしたが、
それでも再び別の場所でホームステイをしたい
気持ちは変わらなかった。
次回のホームステイの希望を出した時には、
「夜間もトイレに自由に行ける家」
という希望をしっかり書いておいた。

その次のステイ先は
ニュージーランド北島北部の
小さな都市、ファンガレイだった。
ノースランドポリテクニックに
斡旋して貰った家庭だ。
このファミリーはスゴク金持ち。
小高い丘の上にある3階建ての豪邸に住んでいた。
こういう金持ちはどんな暮らしをしているのか
私は興味津々だったが、
意外にも、普通の生活をしていた。
食事面では、魚介類などちょっと高級な
食材を買うことはあっても、それ以外は
あまり普通の家と変わらない食生活だった。

このファミリーもすごく良い人たちだった。
ホストファーザーは毎日、150キロ離れた
オークランドまで出勤していたので、
朝は私が起きる前には自宅を出て、
夜も8―9時頃まで帰ってこなかった。
小学生の男の子2人とホストマザーは
私と一緒に時間を過ごしてくれて、
私はとても楽しい時を過ごせた。

私は子供達と一緒に遊ぶことが好きだった。
夜間、ホストマザーとファーザーが
子供達を家に残して外出したいと言うので、
「どうぞ、行ってきてください」と
ベビーシッターをオファーしたところ、
とても喜ばれて感謝された。
ニュージーランドでは14歳未満の子供を
自宅に一人で置くことは法律で禁止されている。
私がいなければ、他のベビーシッターを
雇わなければならないので、
「すごく有難いわ」と嬉しそうだった。

私にとっては子供と遊ぶことが楽しいので、
全然負担にならなかったし、
どちらかと言えば、子供達と遊べて
ラッキーだと思っていたくらいなので、
ベビーシッター代を受け取ろう
なんて考えもしなかった。
でも、ホストは「あなたにお礼したいから」
と言い張って「お金を受け取ってくれないのなら、
あなたを旅行に行かせてあげる」と言い、
私が近場の観光地を旅行できるよう、
観光ツアー代金や、宿泊費を支払ってくれて、
2回ほど、私をただで旅行に行かせてくれた。

英語圏の幾つかの場所で
全く事情の違うファミリーたちと
短期間でも一緒に生活してみて、
色々面白い経験ができたと満足している。
でも、「ホームステイをお勧めする?」
と質問されると、
その答えにちょっと困る時もある。

前述したように、実際に自分で行ってみて、
五感で感じることができる点では
絶対に行った方がよいと思う。
でも、自分に合ったステイ先に行けるか?の点では、
ホームステイ参加者がコントロール
できない部分も多くて、
ある意味、くじ引きのようなものなので、
何とも言えない部分もある。

「英語は上達しますか」の質問についてだが、
実際、1カ月くらい英語を話す人たちと
一緒に過ごしても、そんなに大きな上達はなかった。
ただ、その1カ月で、もっと英語を勉強したくなった、
と英語に対する意欲が上がることはあった。
そういう点では良かったと思う。

ということで、今回は、
ホームステイについて、
私自身が経験したことをもとに
お話してみた。