英語圏の国に30年間住んだら、英語はペラペラになるのか?

「英語圏の国 ニュージーランドに
30年間住んでいる」と言えば、
「じゃあ、英語ペラペラでしょ?」
と聞かれることがある。
私自身も、この国に住む前には、
そんなに長い間、英語圏で生活すれば、
英語は上達するものだと信じていた。

でも、現実は厳しい。
悲しいことに、私は英語があまりできない。
日常生活に困らない程度には話せるが、
自分が期待したレベルには
全然到達していない。

英語が母国語の国に住めば、
日本にいる時よりも、
英語に曝されるのは確かだ。
でも、英語が上達するか否かは
その人の性格によって大分違うと思う。

私は内向的で、口数の少ない人間だ。
自分の心の内には
リッチな思考の世界があり、
自分の中で色々考えたり、空想したりして、
楽しむようなタイプだ。
そんなわけで、私は必要がなければ、
積極的に外に出て、人に会うことはない。

一方、外向的で社交好きな人は、
自らどんどん社交の場に出て行き、
色々な人と交流する。
お喋り好きで、たくさん英語を話す人は、
やはり、どんどん上達してゆく。
それは、まあ、当然だろう。

私がニュージーランドに来たのは
3年間の大学留学のためだった。
留学前には、私は英語の勉強に燃えていて、
アメリカ軍のラジオFENや
English Journalという英語学習雑誌、
NHKラジオの英語講座などを利用して、
毎日、一生懸命勉強していた。

英語の資格試験にも挑戦して、
英語圏の国で大学の講義も
理解できる程度のレベルにも合格して、
自分の英語力はなかなかイケている
とまで信じていた。

でも、実際にニュージーランドの大学で、
経済学の勉強をした時には、
最初のうちには、教授の話を
ほとんど理解できなかった。
語学力においては、どんなに頑張っても、
周りのネイティブには全く敵わない。
あんなに英語に自信があったのに、
「全然ダメじゃん」と落ち込んで、
留学1年目で英語に対する意欲も
薄れてしまった。

それでも、留学中の3年間は
毎日クラスに出席したり、
他の学生と共同プロジェクトをしたり、
また、色々な人たちと
交流する機会も沢山あったので、
卒業時点では、英語力も
大分上達したという実感があった。

でも、そこからが良くなかった。
卒業後、現地の日系組織に就職して、
数年間働いた後は、
育児に追われる日々を過ごした。
日系組織ではあまり英語を使わなかった。
また、子育て中は、引きこもりがちになり、
必要最低限しか外に出なくなったのだ。
こういう感じで生活していれば、
せっかく英語圏に住んでいても、
あまり英語を使わずに済んでしまう。
そして、徐々に英語力も衰えていくばかりだった。

ニュージーランドに住み始めて、
今年で30年になる。
私の夫も子供達もニュージーランド人なので、
私はこの国で骨を埋めようと思っている。
それなら、英語をもっと勉強して、
英語力を磨いた方が、
日々の生活が豊かになるはず。
でも、正直言って、
そのことを承知しながら、
英語を勉強する意欲がなぜか湧かない。

今までの人生で、私は色々目標を立て、
その目標に向かって、
日々、頑張ってきたと思う。
「~できると良い」と思えば、
それができるようになるために、
コツコツ努力もしてきた。

でも、最近感じることは、
良いとされることであっても、
自分が心底やりたいことでないと、
頑張っているつもりでも、
あまり効率よくできていないし、
上達もしないということ。

自分の時間やエネルギーは有限なので、
あれもこれもと沢山のことを
するのはムリだと感じている。
それなら、自分のやりたいことを優先させて、
気乗りしないことはやめたほうがよいのでは?
と考えるようになった。

今後もニュージーランドで暮らすのなら、
英語力を向上させた方が良いのは確か。
でも、今は英語の勉強に意欲が湧かないし、
日常生活で大きな支障もないので、
現時点では、英語の勉強をする気はない。

最後に、英語や英語の勉強について
自分が感じていることを
2つほどお話してみたい。

一つは英語圏に留学を考えている人に
アドバイスしたいことがある。
語学力向上が目的ならば、
語学学校へ行くよりも
大学や専門学校へ行って
英語以外の学習をした方がよいと思う。

その理由は、
語学学校へ行けば、周りの学生も
英語ができない人達ばかりだから。
英語ができない人たちとつるんでも、
英語上達の点では非効率だと思う。
それよりも、ネイティブが沢山いる
コースに入り、ネイティブと一緒に
他の科目を学んだ方が、
正しい英語に触れる機会も多くなるからだ。

言いたいことのもう一つは、
「日本人は謙虚すぎ!」ということ。
日本人は文法でも、発音でも
パーフェクトな英語でなければダメだ
と思い込んでいる人が多い。
パーフェクトに話せないから
話さないという人もいる。

私の周辺には多くの移民が住んでいるが、
彼らの英語も大分変だ。
でも、文法や発音の点でも、
あまり気にせずにバンバンと話している。
文法が間違っていても、発音が多少オカシクても、
相手に言いたいことが伝われば、それでよい、
と考えるようで、全く恥じらう様子は見られない。

パーフェクトを目指すと、
話せなくなってしまう。
話さなければ、当然、上達もない。
逆に、間違っていてもいいから、
とにかく話してみようと思えば、
話すことができる。
一発で通じなくても、
何とか言いたいことを伝えようとすれば、
相手も一生懸命分かってくれようと
助けてくれるものだ。
試しているうちに、そのうちに、
自分でも驚くほど話せるようになった
なんてことはよくある話だ。

ということで、今回は、
私自身の英語力についての話と、
私が英語について感じたことを
お話してみた。